慢性膵炎ってどんな病気?治療は長引くって本当?

2018/11/11

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

膵臓の炎症が長期間続く「慢性膵炎」とは、どのような病気でしょうか。症状や原因、治療にかかる期間など、詳しく解説していきます。

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慢性膵炎とは

膵臓(すいぞう)は、みぞおちの奥、胃の後ろ側に横たわる臓器で、消化酵素を含んだ膵液を分泌して消化を助け、インスリンなどのホルモンを分泌して血糖値をコントロールするといった2つの重要な機能を担っています。

「膵炎」は、膵液を出す分泌腺に炎症が起こる病気で、急激な炎症でみぞおちや背中に強い痛みを感じる「急性膵炎」と、膵臓の炎症が長期間続くことで本来食物を消化する膵液が膵臓自身を溶かしてしまい機能が低下していく「慢性膵炎」とに分けられます。

慢性膵炎では、正常な細胞が破壊されることから膵臓が繊維化して硬くなり、膵臓の中に石ができることもあります。原因は長期にわたる過剰な飲酒によるものがほとんどで、そのほか、胆石、ストレスなどでも発症することが知られ、原因不明の場合もあります。

慢性膵炎になると、どんな症状が出てくるの?

みぞおちや背中の鈍い痛みで始まり、この痛みが断続的に長期間にわたり続きます。初期には急性膵炎のような激しい痛みを数ヶ月ごとに繰り返すことも多くありますが、通常は7~8年経過すると腹痛は軽くなります。ただしこれは、膵臓の機能が完全に荒れてしまい炎症が軽くなることによるもので、良くなったわけではありません。

長期にわたる慢性膵炎では、食欲の低下、下痢、体重の減少など、膵臓の機能不全に伴うさまざまな症状があらわれます。特に下痢は、脂肪やタンパク質の消化酵素不足による消化吸収不良から、悪臭のある薄黄色のクリーム状で水に浮く脂肪便となります。また、インスリンの分泌障害も引き起こして血糖の調整ができなくなり、糖尿病を発症します。

慢性膵炎だとわかったら、どんな治療をするの?

慢性膵炎は、病気の進行過程によって、発作を繰り返す「代償期」、腹痛が治まり始める「移行期」、膵臓が機能不全となる「非代償期」の3つの時期に分けられ、治療はそれぞれの時期や症状、膵臓の状態に応じて行われます。

代償期の痛みには、鎮痛薬や痛みの原因である炎症を抑えるタンパク分解酵素阻害薬を内服します。飲酒が原因の場合には予後の改善も含め断酒も必要です。また高脂肪食後の腹痛には、一時的に食事脂肪制限を行うこともあります。これらが効かない場合には、内視鏡的治療や体外衝撃波結石破砕療法、外科的治療を行う場合もあります。

非代償期では、消化酵素薬や胃酸の量を減らす薬を内服するほか、病状や検査結果に応じて糖尿病治療のための薬も用いられます。断酒、禁煙、服薬、膵臓に負担をかけない食事などで日常生活をコントロールしながら、専門医療機関への通院、治療を続けていくことが重要です。

おわりに:炎症を繰り返して膵臓が硬くなりその機能が失われる病気。長期の通院治療が必要

慢性膵炎は、膵臓の炎症が長期間続くことで細胞が徐々に壊され繊維化して硬くなり、本来の消化酵素や血糖をコントロールするホルモンの分泌といった大切な機能が失われていく病気です。慢性膵炎では、断続的な痛みを繰り返すうちに、栄養状態を悪化させたり糖尿病を発症する危険があり、長期にわたる専門医療機関への通院・治療が必要となります。

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