記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
突然死を招く恐ろしい病気の一つ・「脳梗塞」。この脳梗塞から一命を取り留めても、何らかの後遺症が残ってしまう方は少なくありません。今回の記事では、脳梗塞の後遺症として代表的なものについてご紹介していきます。
まず脳梗塞とは、血栓などによって脳の血管が詰まった状態のことです。この状態が続いて血液と酸素が行き届かなくなると、脳細胞が壊死し、その規模の大きさや脳細胞が死んだ箇所によってさまざまな後遺症が現れます。
脳梗塞の後遺症の中で代表的なものが、脳性麻痺です。脳性麻痺の種類としては、以下のようなものがあります。
脳からの指令が伝達されなくなることで、片側の手足や顔などに力が入らなくなったり、少ししか動かせなくなったりした状態です。
細かい動作ができなくなったり、手足の動きのコントロールができなくなります。
脳に温度や感触、痛みなどの情報が伝わらず、ものの熱さや痛みに鈍くなります。
脳梗塞により視床や脳幹などの感覚の経路が障害されると、手足や顔などの痛覚が鈍くなるだけでなく、痺れも感じることがあります。痺れは時間の経過とともに強い疼痛へ変わり、治療の妨げにもなります。これを「脳卒中後疼痛」とも言い、半身にビリビリと痺れるような感覚が走ったり、風が触れただけで痛みを感じたりするのが特徴です。
脳梗塞の後遺症の中で非常に深刻なものに、言語障害があります。言語障害は、大きく「失語症」と「構音障害」の2つに分けられます。
下記のような症状が失語症の特徴です。「話す」ことに関する障害、「聞く」ことに関する障害、「文字を書く・読む」ことに関する障害などが現れます。
・言葉が出てこない
・意味不明な言葉を話す
・言い間違いが多い
・知っているはずのものの名前がわからない
・人の話の内容が理解できない
・文字が読めない
・文字が書けない
・文字の内容が理解できない
唇や舌、声帯などの器官がうまく動かせなくなることで、舌がもつれたり、ろれつが回らなかったり、特定の音が出せなくなったりなど、会話が困難になります。
ものの名前が思い出せない、人の顔やものの使い方がわからなくなる、家までの道のりがわからず迷子になる、といった認知症のような症状が現れます。
痺れや頭痛などが見られる場合は、まず痛み止めや神経に作用する薬などの内服治療から始めます。ただし、これらの薬は脳に作用するため、めまいやふらつきなどの副作用が生じる恐れがあります。徐々に時間をかけて薬を増量させていくことが大切です。
なお、内服治療でも改善が見込めない後遺症の場合は、頚部交感神経節ブロック注射などの治療を行います。この治療法は、脳の血流量を増やし、壊死した脳細胞へ血液が行き届くようにするものです。効果には個人差がありますが、週に1回の注射によってろれつが良くなったり、麻痺が軽減したりといった例もあります。
脳梗塞は発症日から時間が経てば経つほど、治療が困難になり、後遺症が残るリスクが上がります。そのため、脳梗塞を発症したらすぐにリハビリを行うことが大切です。一般的に、発症から3ヶ月までの間が最も回復しやすく、半年以降になると回復がほとんど見込めなくなると言われています。
麻痺によって手足がうまく動かせなくなったり、言葉が喋れなくなったり、認知症のような症状が出たりなど、脳梗塞の後遺症はいずれも重いものばかりです。脳梗塞を起こしたら早期治療とリハビリが肝心なので、急にろれつが回らなくなるなどの異変が見られたらすぐに病院を受診しましょう。