腎臓のがんになったら血尿が出るの?ほかにも考えられる病気はある?

2018/12/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎臓は尿を作り、排出するための器官ですから、血尿が出ることもあると考えられます。では、腎臓で起こるがんのうち、症状として血尿が出るのはどんながんの場合なのでしょうか?また、他にも考えられる疾患はあるのでしょうか?

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血尿が出る病気にはどんなものがあるの?

血尿は、尿ができて排出までに通過する尿路のどこかで血液が交じることで起こります。尿路とは腎臓から輸尿管、膀胱、尿道の全てを指しますので、血尿が出る病気には、以下のようなものがあります。

腎結石・尿路結石
女性よりも男性に多く、結石が原因で痛みが出ることがある。
腎炎・膀胱炎・尿道炎
細菌が尿路を逆流してきて起こる疾患で、重篤化すると発熱することも。
腎細胞がん・膀胱がん・腎盂がん・尿管がん
尿路上皮や腎臓の細胞ががん化して起こる。頻尿や痛みを感じることも。

血尿は尿路のどこかに異常が現れることで起こります。腎結石尿路結石はもちろん、腎炎や膀胱炎・尿道炎などの細菌性の感染症でもはっきりと目に見える血尿が現れることがあります。また、腎細胞がん・膀胱がん・腎盂がん・尿管がんではほとんど全ての症例で血尿が見られることがわかっています。

この記事では、特に腎臓から尿管にできるがんである腎細胞がんと腎盂がん・尿管がんについて解説します。

腎臓にできるがんの種類

腎臓にできる腫瘍には良性は少なく、ほとんどが悪性腫瘍すなわち「がん」です。腎臓のがんには「腎細胞がん」と「腎盂・尿管がん」の2種類があります。これらはがんの発生する場所による違いで、腎細胞がんは腎実質という腎臓の主な働きを担う部分にできるがん、腎盂・尿管がんは腎実質に囲まれた隙間である腎盂と、尿が流れていく尿管を合わせたうちのどこかにできるがんのことをいいます。

腎盂と尿管は上部尿路と呼ばれ、下部尿路である膀胱までを合わせて一つの臓器のように考えられることが多く、腎盂がんと尿管がんでは治療法もほとんど同じであるため、わざわざ区別することはあまりありません

腎細胞がんってどんながん?

腎細胞がんは、腎臓の腎実質の部分にできるがんのことです。一般的に「腎がん」といえばこちらの「腎細胞がん」のことを指します。10万人に2人程度の頻度で発生し、40〜50歳に多く見られます。また、女性に比べて男性の発生率は2〜3倍と非常に高くなっています。

発生の原因ははっきりとはわかっていませんが、喫煙や脂質の過剰摂取、カドミウムという化学物質やホルモンと関係があるのではないかといわれています。また、血液透析を受けている人では、腎細胞がんになる確率が受けていない人に比べて高くなることがわかっています。

腎盂・尿管がんってどんながん?

腎盂から尿管、膀胱、尿道の一部へとつながる尿路の内側は尿路上皮(移行上皮)と呼ばれる粘膜でできています。この細胞から発生するがんを尿路上皮がんといい、腎盂・尿管がんのほとんどを占めています。腎盂・尿管がんは、治療法にもあまり違いはありません。腎盂は腎臓内にある腎臓の一部ですが、腎細胞がんとはがんができる細胞の種類が全く違うため、腎細胞がんと腎盂がんは区別されます。

尿路上皮にできるがんは、尿路全体に多発したり、再発を繰り返したりするという特徴があり、腎盂と尿管の両方に同時に発生することや、¥片方に発症して治療した後、もう片方にもがんが発生することもごくまれにあります。また、腎盂・尿管がんの治療後、約3〜5割の確率で膀胱にもがんが発生することがあります。逆に、膀胱がんを治療後に腎盂・尿管がんが発生することはそう多くありません。これは、尿路の流れが腎盂→尿管→膀胱という順であることが関係していると考えられます。

発症すると血尿が出る腎臓のがんは?

腎臓にできるがんのうち、発症すると血尿が出るのは主に腎盂・尿管がんの方です。腎盂・尿管がんの人では、膀胱がんと同様約80%の割合で血尿が発生します。この血尿は尿に血が混じるという程度ではなく、尿の全部が赤くなるのが特徴です。また、尿管が血液で詰まったり、がんが周囲に広がった場合、腰や背中・脇腹に痛みが起こることがあります。

これらの痛みは尿管結石と似ていて、強い痛みが断続的に起こります。また、排尿痛や頻尿が起こることもあります。さらに、がんで尿管が塞がると腎臓に尿が溜まってしまう水腎症という状態になります。これが長く続くと腎臓が機能しなくなってしまうことがありますが、腎臓は左右に一対ある器官ですから、もう片方の腎臓が機能を補うため腎不全のように尿量が減る、体がむくむなどの症状はほとんど出ることはありません。

最近では、エコー検査が広く行われるようになったため、特別な症状が出る前でも健診などで発見できる腎盂・尿管がんが増えています。このため、水腎症の発生によって精密検査を行った結果、腎盂・尿管がんが見つかるということも少なくありません。

腎細胞がんではどんな症状が出るの?

腎細胞がんは、初期の状態では自覚症状がほとんどありません。そのため、腎細胞がんが初期の状態で発見される場合、他の疾患のための検査などで偶然発見されるのがほとんどです。また、肺や脳・骨などに転移したがんが転移先で先に見つかり、腎細胞がんが大元の原因だったと見つかることもあります。

重篤化すると背中や腰の痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、吐き気や腹痛などが現れます。また、腎細胞がんでも重症化すると血尿が出ることもあります。しかしいずれもこの疾患に特異的な症状ではないため、不調を感じたら病院を受診し、医師の診察を受けましょう。

突然、血尿が出たらどんな検査を受けるの?

血尿が出た場合、腎臓がんなのか腎盂・尿管がんなのかによって治療法が異なるため、確定診断を行うための検査を行います。重篤化した腎臓がんの場合、腎臓肥大や肥大した腫瘤の痛みを感じることや、貧血・体重減少・発熱などが見られるため、問診で発見できることもあります。また、腎臓がんは骨や肺・肝臓・脳などに転移しやすいため、転移先の症状から逆算的に発見されることもあります。

確定診断を行うための検査には、以下の5つの項目があります。

CT検査
腫瘍の広がりだけでなく、リンパ節や他臓器への転移も検索できる
MRI検査
CT検査だけで診断が確定しない場合や、ヨードアレルギーなどで造影剤が使用できず、詳細な情報が得られない場合など
膀胱鏡
腎盂・尿管がんの半数で膀胱がん同時発症または膀胱内再発が見られるため、膀胱内の検査を行う
逆行性腎盂造影
経尿道的に内視鏡を挿入し、膀胱内から尿管へとカテーテルを挿入して直接腎盂・尿管を観察する
尿細胞診
尿中にがん細胞が排出されているかどうかを調べる

CT検査では、造影剤を注射すればより詳細な情報を得ることもできます。微量の放射線被爆がありますが、検査の範囲で被爆の影響を心配する必要はありません。CTだけでは情報量が足りない場合や造影剤に対してアレルギーがある場合などは、MRI検査を併用することがあります。MRI検査では放射線を使わないため、被爆の心配はありません。

腎盂・尿管がんでは尿路上皮ががん化することから、膀胱がんを高確率で併発していると考えられます。そこで、膀胱内についても検査する必要があり、患者さんへの負担の少ない柔らかい膀胱鏡を使用して膀胱内を観察します。

逆行性腎盂造影では、カテーテルを直接尿道内に挿入するため、同時に分腎尿という片側の腎臓でだけ作られている尿を採取することができます。この分腎尿に尿細胞診を行い、検査結果が陽性であれば確定診断ができます。

尿細胞診は1〜5の5段階で表され、1〜2であれば悪性所見はないとされます。3は悪性の疑いのある疑陽性という段階で、4〜5ではがんの存在が強く疑われる陽性と診断されます。この尿細胞診によって腎盂・尿管がんの35〜80%を検出できるといわれており、悪性腫瘍の進行度が高くなるほど検出率も上がります。自然排尿によっても検査可能な場合もありますが、信頼性が低いため、多くは逆行性腎盂造影などによる片側の腎臓からだけの採尿が必要となります

おわりに:真っ赤な血尿が出た場合、腎盂・尿管がんの疑いが強い

血尿と言っても、尿全体が真っ赤に染まるような非常に鮮やかな血尿は特に腎盂・尿管がんの疑いが強いと考えられます。腎細胞がんの場合、初めから強い痛みの出やすい腎盂・尿管がんと違い、初期の多くは自覚症状がなく、重篤化してから背中や腰の痛みが現れます。

腎盂・尿管がん、腎細胞がんのいずれの場合も、早めに病院を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

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