記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
全国で45万人超の患者がいると推定される「アトピー性皮膚炎」。このアトピー性皮膚炎は、空気が乾燥する季節に悪化しやすくなるため、特に冬場は「保湿」をして皮膚症状を緩和することが重要になっていきます。そこで今回は、その保湿のポイントをお伝えしていきます。
顔や首、肘や膝の裏など、全身に発疹や強いかゆみが現れるアトピー性皮膚炎。なぜこのアトピー性皮膚炎で保湿が必要なのか、皮膚の状態から理由を解説していきます。
まず、アトピー性皮膚炎の人の肌はバリア機能が弱まっており、水分が蒸発しているために乾燥している状態です。そのため外部からアレルゲンなどの刺激物質が侵入しやすく、その刺激を受けることでかゆみを感じます。そこでかいてしまうことで皮膚の状態が悪化し、さらなるかゆみを感じてかきこわす…という悪循環に陥ります。
つまり空気が乾燥し湿度も低下する冬は、アトピー性皮膚炎の乾燥肌がさらに乾燥状態になるために、いっそうの保湿ケアが重要なのです。
「保湿剤を使うと肌本来の保湿機能が弱まる」という理由で保湿に積極的でない患者さんもいるようですが、保湿剤を使わないと皮膚の乾燥状態がますます悪化し、かきこわした部位から細菌感染を起こすリスクが高まります。
アトピー性皮膚炎の人の肌は先ほどお伝えしたとおり、肌のバリア機能が低下している―肌の潤いを保持する、天然保湿因子(NMF)や角質細胞間脂質の機能が衰えている状態です。ただ、これらの保湿機能を元通り向上させる治療法は、現在のところ確立されていません。そのため対症療法ではありますが、外から保湿剤を塗ることで、症状の悪化を食い止めることが大切なのです。
さきほどお伝えしたとおり、アトピー性皮膚炎のスキンケアでは保湿が重要ですが、ただ保湿剤を塗ればいいというわけではありません。保湿剤を塗るタイミングや塗り方、保湿剤の種類の使い分けなどにもそれぞれポイントがあります。
アトピー性皮膚炎の人は、入浴後10分以内に保湿剤を塗るのが重要です。入浴中は皮膚が潤っているように感じても、皮脂は洗い流されているので、保湿をしないと入浴前よりも皮膚は乾燥してしまいます。しかし、入浴後すぐであれば皮膚が水分を吸収している状態のため、保湿剤で皮膚に蓋をすることで潤いを閉じ込めることができます。
なお、10分を過ぎてしまうと、ワセリンなどの油性の保湿剤を塗ろうとしても、皮膚がすでに乾いてしまっているので水分を補給する効果があまり期待できませんえ。この場合は、化粧水を入れた霧吹きで肌をほどよく湿らせてから、保湿剤を塗るようにしてください。
病院で処方されるアトピー性皮膚炎の保湿剤にはさまざまな種類があり、それぞれで少しずつ特徴が異なります。具体的には以下のとおりです。
いずれも基本的に安全な塗り薬ではありますが、種類によっては刺激を感じたり、ベタベタしてかゆくなってしまったり、あまり乾燥が改善しなかったりと、使用感には個人差があります。アトピー性皮膚炎の場合、保湿ケアは年間を通じて必要なものではあるので、毎日継続できるよう、医師と相談しつつご自身の肌に合ったものを使用するようにしましょう。また、夏はさらっと使えるローションタイプ、冬は保湿力の高いミルクタイプなど、季節ごとにテクスチャーを変える工夫も大切です。
アトピー性皮膚炎の患者さんはすでに肌が乾燥している状態なので、空気の乾燥する冬はいっそうの保湿ケアを行い、かきこわしや細菌感染を防ぐことが重要です。保湿剤の塗布はなにより継続することが大切なので、自分に合った保湿剤を見つけ、入浴後など効果的なタイミングにボディケアを行いましょう。
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