誤嚥性肺炎の死亡率は高いって本当?どうすれば予防できるの?

2018/12/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

発熱や咳、膿のような痰が肺炎の特徴です。
しかし、これらの症状に当てはまることがなく、何となく元気がなかったり食欲がなかったり、のどがゴロゴロしたりすると、それは誤嚥性肺炎かもしれません。
こちらでは、誤嚥性肺炎とはどのような病気なのか詳しく説明していきます。

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誤嚥性肺炎ってどんな病気?

日本人の死亡原因の第一位は男女ともに悪性腫瘍(がん)といわれており、全体の3割を占める割合です。次いで、心疾患、肺炎と続きますが、肺炎は病原菌の違いや発症の仕方により、以下の種類に分類されます。

市中(しちゅう)肺炎

特に入院をせず日常生活を送っている方に発症する肺炎です。原因菌によって細菌性肺炎と非定型肺炎に分類されます。

細菌性肺炎の病原菌の多くは、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などによるものです。
非定型肺炎はマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ菌などの少し特殊な微生物によって引き起こされる肺炎です。

誤嚥性(ごえんせい)肺炎

肺炎による死亡者の95%以上が65歳以上の高齢者で、その多くが誤嚥(ごえん)性肺炎とされています。

飲み込む力が弱くなっている高齢者、脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患がある方、寝たきりの方に多く見られ、食べ物や唾液が誤って気管に入ったときに引き起こされます
詳しい発症の原因については下記でご紹介していきます。

誤嚥性肺炎が発症する原因は?

誤嚥性肺炎の発症の原因は大きく分けて3つあります。

誤嚥により細菌が肺に入り込む

高齢者になると物を飲み込む力が弱くなり、通常であれば食道から胃へ送られる食べ物が、誤って気管に入り込んでしまうことがあります。これを誤嚥と呼び、口腔内の環境が清潔に保たれていないと、増殖した細菌が唾液や胃液と一緒に肺へ入り込み、肺炎を起こします。

誤嚥性肺炎の原因菌の約80%は口腔内の細菌といわれており、口腔内を清潔に保つことがいかに大切かがわかります。

眠っている間の誤嚥

起きているうちの誤嚥は周囲の人が気づいてくれますが、気づかないうちに誤嚥が起きてしまう不顕(ふけん)性誤嚥は注意が必要です。

食事のときなどは問題なく飲み込めていても、眠っているときなど知らない間に鼻やのど、口腔内の分泌物の誤嚥を繰り返している可能性があるからです。

不顕性誤嚥は、加齢とともに異物に対する咳やくしゃみなどの反射が弱まったり、睡眠薬や鎮痛剤、向精神薬などの使用で飲み込む力が低下したことで起きます。
介護状態で寝たきりの人はもちろん十分な注意が必要ですが、健康で問題ないと思っている人にも起こりうる誤嚥の一つです。

免疫機能の低下

加齢とともに免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなります。また、高齢だと肺炎を繰り返すことも多く、症状も重症化しやすい傾向にあります。
若いころは簡単に治っていた病気も、歳をとると治りづらくなったり、薬を服用しても効きづらかったりするのは、免疫機能の低下が起こっていることが関係しています。

どうすれば誤嚥性肺炎を予防できるの?

誤嚥性肺炎を予防するために、まずは口腔内の清潔を心がけましょう。
食べかすが口の中に残っていたり、入れ歯などに汚れがついたままだったりすると、口の中で細菌が増殖して、誤嚥が起こった際に肺炎になりやすいからです。

歯磨きは歯を磨くだけでなく、頬粘膜や舌も合わせてブラッシングすると良いでしょう。
入れ歯は毎食後外して磨き、夜間などは洗浄剤にきちんとつけておきましょう。

また、食事中は誤嚥を起こしにくい姿勢を意識するのも大切です。食後や食事中は顎を引き気味にし、背は90°の姿勢を保ちましょう。また、睡眠時は頭を少し上げようにすると、唾液などを飲み込みやすくなります。

食事内容に関しては、誤嚥を起こしにくいように小さく切ったり柔らかくしたり、調理の工夫がおすすめです。

そして日ごろから飲み込む力をトレーニングするのも効果的です。特に誤嚥は食べ始めのひとくち目に起こりやすいので、食べる前に顔や首周りの筋肉の緊張を解いたり、鍛えたりすると良いです。
その他、ワクチンの接種も肺炎の予防に繋がります。

おわりに:生活習慣の中に誤嚥性肺炎の予防を取り入れて

ご紹介した誤嚥性肺炎の予防方法のうち、口腔内ケアをする人としない人とでは、発症率が約半分違う研究結果があります。食後の口腔内ケアは十分に行いましょう。
ただ、不顕性誤嚥では、健康状態に問題のない人でもいつ起こるかわからないので、特に高齢者では注意してください。

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