記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/9 記事改定日: 2020/8/24
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食道を通る血管の病気「食道静脈瘤」は、食道の静脈に瘤ができる病気です。瘤が破裂した場合は命に関わりますので注意が必要です。この記事では、食道静脈瘤の原因や破裂の予兆、硬化療法、破裂予防を目的とした治療法などを紹介します。
口から入った食べ物は食道を経て胃に届けられます。しかし何らかの原因で食道の粘膜に通る静脈が通常より太くなり、瘤状になった状態を「食道静脈瘤」と呼びます。瘤ができた静脈は、腫れたり曲がりくねったかたちに変わります。すると体内を循環するはずの血液が正常に流れず、滞ってしまいます。
胃腸などの消化管と肝臓をつなぐ「肝門脈」では主に食べ物に含まれる栄養素が運ばれています。ところが肝門脈にかかる圧が上昇すると「門脈圧亢進症」という病気を発症し、食道静脈瘤などの症状を引き起こします。
つまり、消化管と肝臓は肝門脈によってつなげられているため、肝臓の不調が食道静脈瘤発生の原因をもたらすことがあるのです。
食道静脈瘤の大きな原因として考えられるのが「肝硬変」です。肝臓を通る血管には「肝動脈・肝静脈・門脈」の三種類があります。それぞれの血管が正常に働き、栄養素などを肝臓に運んでいます。
健康な状態の肝臓は柔らかくて弾力がありますが、肝硬変に罹った人の肝臓は小さく硬くなっているため、肝臓の機能が低下し、血液の循環にも悪影響をもたらします。また、肝臓を通る門脈に負荷がかかると、滞った血液が食道の静脈へと流れ出ます。
食道の静脈は門脈より細く、受け入れられる血液量は同じではありません。結果、食道の静脈が受け入れられる血液量のキャパシティーを越えてしまい、血管が正常な状態を保てずに瘤状になる食道静脈瘤が発生するのです。
肝機能の悪化は門脈の圧力を急上昇させるため、食道静脈瘤の破裂を引き起こしかねません。破裂した場合、大量の吐血やショック状態などの激しい症状があらわれます。
肝硬変などの病気を原因として発生する食道静脈瘤は、自覚症状がほとんどありません。しかし食道静脈瘤が破裂すると命に関わることもありますので要注意です。食道は食べ物が毎日通過しますから、放置すると悪化する可能性が高いといえます。
破裂の前に、すでに発生した食道静脈瘤から軽度の出血が起きていることがあります。特に、肝硬変は食道静脈瘤の悪化を招きますので、気をつけたい症状を併せて紹介します。下記に挙げる症状がみられたら早めに医療機関を受診してください。
食道静脈瘤が破裂すると、出血多量になります。多量の出血は命に関わりますので、治療ではまず出血の部位の特定を急ぎます。内視鏡検査で診断し、速やかに止血を行うのが一般的です。出血量が多い場合、輸血が検討されるケースもあります。
患者さんの健康状態や食道静脈瘤の数、肝機能などを総合的に判断し、EVLとEISから適切な治療方法を選択することが多いでしょう。
破裂前に食道静脈瘤が発見されると、破裂予防の治療を行います。肝臓に病気がみとめられたら定期的に内視鏡検査を受診し、瘤ができていないかを調べることをおすすめします。
食道静脈瘤の形成や破裂を予防するには、上述した通り肝硬変など肝臓の機能が著しく低下する病気の発症・悪化を予防することが大切です。
そのためには、肝臓にダメージを与えるアルコールや脂質の多い食事の過剰摂取を避ける必要があります。また、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどへの感染も肝硬変の原因になります。悪化するまで自覚症状はありませんので、一度は肝炎ウイルス検査を受けて陽性の場合は適切な治療を受けましょう。
また、肝機能の低下は自己免疫性肝炎や肝臓がんなどの病気によって引き起こされることもあります。一年に一度は健康診断を受けて肝機能の状態をチェックすることも大切です。
さらに、食道静脈瘤と診断されている人は、医師の指示に従って治療を進め、飲酒や過度な運動を控えるなど日常生活を整えるようにして破裂を予防しましょう。
食道静脈瘤は、肝臓からの影響を強く受けて発生します。瘤ができたからといって自覚症状はありませんが、瘤の破裂による出血の危険性が潜んでいます。破裂の前兆を見逃さないことはとても大切で、さらに破裂前に瘤を発見するようにしましょう。肝臓に不安がある人は定期検査を受けるなど、食道静脈瘤の破裂予防をしっかり行ってくださいね。
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