記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
しもやけを引き起こすと、いたがゆくなったり、ひどくなると出血したりします。近年では家屋の高気密化や暖房器具の発展によって、寒い地方だけの病気ではなくなってきました。
今回は、そんなしもやけの原因や、しもやけができやすい体質のお話を中心に解説していきます。
まず、体が長時間寒さにさらされると、心臓から血液を送り出す動脈と、心臓に血液を送り返す静脈が収縮して、皮膚表面から体温が逃げないように調節されます。
一方、体が温まるとそれぞれの血管は拡張され、皮膚表面から熱を放出するように働きますが、動脈よりも静脈の方が血管の拡張が遅いので、動脈から流れ込む血液がうまく静脈に入れません。
そして手足などの体の末端部分は毛細血管と呼ばれる細い血管が集まっており、毛細血管も同様に寒さによって縮んで血行が悪くなります。末端部分は他の部分に比べて血流がうっ滞しやすく、血流が滞ると炎症を起こして赤く腫れ、末端の細胞まで栄養や酸素が運ばれにくくなります。
このような状態で急に体が温まると、温度差によって血流に障害が起き、痛みやむずがゆさを伴います。これがしもやけの仕組みです。
温度差によって引き起こされやすいため、11~3月のような春先にかけて発症者は増加傾向にあります。
また、住宅の高気密化や暖房器具の利用によって建物の中と外の温度差が大きくなって、出入りのたびに血管の収縮拡張の回数が増え、血流障害が起こりやすくなります。
しもやけの原因は、気温と皮膚表面の温度差です。
手足のような末端部分は大きな血管がなく、血流が滞りやすい場所です。真冬の気温が5℃以下のときや、1日の温度差が10℃以上あるような、季節の変わり目などに発症しやすくなります。
また、手足の血行不良に加え、汗をかいたあとや手を洗ったあとなど、皮膚表面に水分が残ったままの状態で放っておくと、水分が蒸発する際に皮膚表面の体温が奪われ、しもやけにつながります。
水仕事をする機会の多い人は、終わった後に手の水分をきちんと拭き取り、ハンドクリームなどでマッサージをして血行を良くしましょう。
真冬でも汗をかくため、靴下やストッキングを履いた足は注意が必要です。手のしもやけと同様、濡れたままの状態で放っておくと、水分の蒸発とともに熱が奪われて、気づかぬうちにしもやけになっている可能性があります。足に汗をかいたら指の間の水分をしっかりと拭いて、必要に応じて履き替えたりしましょう。外から建物の中に入って急に温まることもしもやけにつながりますのでゆっくり温めるようにしましょう。
また、先が細い靴や高いヒールなどの締めつけの強い靴も、しもやけの原因になります。末端はただでさえ血流の悪いところですので、血流を妨げる服装は避け、蒸れや血行不良に気を付けましょう。
ただし、しもやけの症状であるかゆみは、足に起こると水虫と勘違いされやすいです。放置したままにしていたり、間違ったケアを行ったりすると重症化してしまいます。どちらかわからないときは、早めに皮膚科を受診しましょう。
以上のように、しもやけの原因のほとんどは温度差によるものですが、同じ環境でも、しもやけになりやすい人とそうでない人がいます
これは体質的に血行が悪かったり、冷え性だったり、汗をかきやすかったりする人が当てはまります。
ほかには水分やビタミン不足なども複合的に影響し、末梢の循環が悪くなりやすい傾向のある人はしもやけになりやすいです。
また、両親のどちらかがしもやけになりやすい人は、遺伝して自身もしもやけになりやすいといえるでしょう。なお、静脈の循環障害や凝固、血栓形成などは遺伝しやすく、しもやけも50%の確率で遺伝すると考えられています。
とはいえ、しもやけ体質を改善する方法や予防法もあります。以下を参考に対策をしてみてください。
温浴法といって、40℃のお湯と5℃くらいの冷水に、患部を交互につけて血流を良くする方法があります。
必ず冷水よりもお湯につける時間を長くして、つける順番はお湯から始めてお湯で終わるようにしましょう。こうすることで自律神経の調節力が鍛えられ、長期間継続すれば、冷えにくい体質につながります。
バランスの取れた食事を心がけ、ビタミン不足にならないようにしましょう。
ビタミンEは毛細血管を広げて血流を良くする働きがあります。ただし、落花生、アーモンド、ひまわり油などに豊富に含まれていますが、摂り過ぎは生活習慣病の原因となるので注意が必要です。
なお、ビタミンCはビタミンEの吸収を助ける働きがあるので、一緒に摂ると効果的です。ブロッコリーやピーマン、イチゴやオレンジ、じゃがいもなどを積極的に摂りましょう。
胡椒やトウガラシなどのスパイスも、血行を促す効果があり、体を温めてくれます。
その他、睡眠不足は血流を悪くするので、十分に質の良い睡眠をとり、適度な運動を習慣づけて血行を良くしましょう。
寒いところへ外出するときや家の中でも冷えるときなど、温かい靴下、手袋、帽子などでしっかり防寒しましょう。
ただ、長時間の着用によって、蒸れたり汗をかいたりしたまま放置してはいけません。かえって体が冷える原因にもなりますので、湿りを感じたら着替えましょう。ウールや綿などの天然素材は、温かさを保ちながら湿気を逃がしてくれるのでおすすめです。
また、締め付けは血行不良に繋がりますので、ゆったりとしたものを選びましょう。
しもやけの症状は幅広く、軽いものから重いものまでありますが、ひどい場合だと熟れた柿のように腫れあがり、水疱を作ることもあります。かゆみや痛みによって日常生活に影響を与えてしまうこともあるので、寒さが近づいてきたら、しっかりとしもやけ対策を行っていきましょう。
この記事の続きはこちら