記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓病の治療法の一種「冠動脈インターベンション」とはどんな治療法でしょうか。具体的な内容や合併症のリスクなどを解説していきます。
冠動脈インターベンションとは、狭くなった冠動脈を血管の内側から拡げるために行う低侵襲的な治療法です。時代や医療施設によって名称が異なり、経皮的冠動脈形成術、経皮経管冠動脈形成術、風船治療などというような呼び方がされています。
冠動脈インターベンションの歴史は、1977年、スイスの医師グルンチッヒが初めてバルーンで血管を膨らませたことに始まりました。しかしバルーンの拡張のみでは、冠動脈が拡張後短時間で閉塞をしてしまう急性冠閉塞や、バルーン拡張しても弾性によりすぐ再狭窄を起こしてしまうといった問題点がありました。その後欧米において、研究と患者への適応が積極的に行われ、1980年代になっ冠動脈ステント術が始まりました。これにより急性冠閉塞の危機を回避し、再狭窄率は2割程度にまで減少しました。日本では1980年代より積極的に取り入れられるようになりました。
冠動脈インターベンションには、バルーンを挿入して行うバルーン血管形成術、ステントを留置して行うカテーテル治療(冠動脈内ステント留置術)に加えてロータブレーダー、冠動脈粥腫切除術(DCA)、血栓吸引療法やレーザーによる治療などがあります。
冠動脈インターベンションはその方法によって手技が異なります。
まず、バルーン血管形成術では局所麻酔を行った後で、脚の付け根からカテーテルを出し入れするために、血管に入れる管であるシースを血管に挿入します。そしてカテーテルを冠動脈の入り口まで挿入し、細いワイヤーで狭窄部位や閉塞部位を通過させてワイヤーに沿ってバルーンを進め、バルーンを膨らませて血管を拡張します。バルーンはパクリタキセルという薬剤をコーティングしたバルーンを使用することもあります。
ステント留置術の場合は、バルーンではなくステントという拡張可能な小さいメッシュ状の金属の筒を血管に留置します。バルーン治療と組み合わせて行うこともあります。
ロータブレーダーとは先端にダイヤモンドチップを有したものを挿入し、高速回転して石灰化したプラークを削り取る治療法です。透析をしている人や糖尿病の方においては高度石灰化病変が認められ、留置後のステントの拡張が不十分になりやすく、再狭窄率が高いことに加えてステントそのものの通過が困難な症例もあるため、この方法がとられます。
冠動脈粥腫切除術とは、冠動脈のプラークを鉋のように削り取るデバイスを使用し、プラークを減らすという目的で行われます。
冠動脈インターベンションを受けた後に起こりうる合併症は、日本国内で報告されているものは急性心筋梗塞が約1.5%、急性および亜急性冠閉塞が約3~7%、冠動脈穿孔が0.2%未満、側枝閉塞、大動脈解離、穿刺部出血が約0.49%となっています。
冠動脈インターベンションは、それぞれの手技によってみられる合併症は異なり、その確率も異なります。冠動脈穿孔はDCA、ロータブレーダーなどでは1.3~1.8%ほどに見られます。また、約0.6%で院内での死亡例もあり、約1.4%に緊急でバイパス手術を行ったという症例もあります。
その他にも脳血管障害、その他の塞栓症や造影剤による腎機能障害、感染症や神経障害、薬のアレルギーが起こることもあります。
さらに、持病によっても合併症が異なり、呼吸器疾患を有している場合には肺炎を罹患する可能性、腎不全ではもともとの腎不全が悪化する可能性もあります。
バルーンやステント、薬剤の使用などさまざまな治療法がある冠動脈インターベンション。治療に伴い合併症を起こすこともあるので、主治医とよく相談してから、治療を行いましょう。
この記事の続きはこちら