気管支拡張症になるとどんな症状が出てくる?どうすれば治るの?

2018/12/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

私たちが鼻や口から吸いこんだ空気を肺まで届け、吐き出す通路となる気管支。
呼吸のために欠かせないこの器官の病気の1つに、気管支拡張症というものがあります。
今回は気管支拡張症について、代表的な症状や特徴、治療法などを解説していきます。

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気管支拡張症ってどんな病気?

感染症や先天性・後天性の気道閉鎖、免疫異常などが原因で気管支が拡張してしまい、もとの状態に戻らないまま、気管支の炎症を繰り返してしまう病気です。

特に、気管支や気管支とつながる肺胞の成長期にあたる乳幼児期に気道感染症にかかる、または先天性の気道粘膜の異常(原発性線毛機能不全)で発症しやすいといわれています。

気管支拡張症によって一旦拡張した気管支が元に戻ることなく、拡張した部分に細菌やカビが侵入・繁殖して炎症を起こすようになります。すると、炎症に伴って拡張した気管支の周辺には血管が増えていき、以下のように肺の機能に影響を与えるようになります。

気管支拡張症による肺への影響

  • カビや細菌による感染と炎症の度に、気管支の拡張が進行していく
  • 繰り返し起こる炎症により、気管支と周囲の肺組織が少しずつ破壊されていく
  • 血痰(けったん)や、咳で血を吐き出す喀血(かっけつ)を起こす
  • 気管支と肺の破壊に伴い、少しずつ肺の機能が低下していく

気管支拡張症の症状の特徴は?

気管支拡張症は、細菌やカビへの感染を繰り返し、炎症を起こすたびに気管支と肺を少しずつ破壊し、肺の機能低下を起こす重大な病気です。
ここからは、気管支拡張症によって引き起こされる代表的な症状について、以下でもう少し具体的にご説明していきます。

気管支拡張症の代表的な症状

  • 黄色や緑色など、色のついた痰や血の混じった痰が出ることが多くなる
  • 頻繁に咳や呼吸困難、発熱を伴う感染症にかかるようになる
  • 風邪のような感染症から、肺炎を起こすことが多くなる
  • 咳と一緒に少量、または大量の血を吐き出してしまう(喀血)

咳を伴う風邪のような症状や肺炎に頻繁に見舞われるようになり、回数を重ねるごとに色のついた痰や血痰、喀血も現れるのが気管支拡張症の特徴といえるでしょう。

どうやって気管支拡張症を治療するの?

気管支拡張症の治療では、まず感染症が起こりにくいよう気道・気管支から痰を除去し、清潔に保つことが大切です。
痰を溜めないために、痰が出やすくなる薬を内服したり、痰が出やすくなる・切れやすくなる体位や咳の出し方、水分補給のポイントなどを患者さん本人が学んでいきましょう。

また、気管支以下の下気道への感染・炎症を起こしてしまった場合には、発熱や痰の増加を抑えるための対症療法として、抗生物質の内服・注射による摂取を行います。症状がかなり進行していて、血痰や喀血が続くようであれば、抗生物質に加えて止血剤を注射して、肺や気管支からの出血を抑えるための治療も行われます。

なお、患者の症状によっては血痰・喀血を止めるために喉から気管支鏡を挿入して止血剤を幹部に直接投与したり、出血している血管をふさぐという治療法もとられています。それでも出血や症状が止まらず、拡張した気管支やその周囲の損傷がひどいと判断される場合は、手術で切除せざるを得なくなる可能性もあります。

気管支拡張症は、何もしないと炎症を繰り返してどんどん症状が進行していきます。症状の抑制と緩和には早め、そして継続的な治療が必要です。

おわりに:繰り返す感染症や咳・血痰は、気管支拡張症のサインかも!

先天性の異常や、後天的な感染症などによって発症する気管支拡張症になると、拡張した気管支がもとの大きさに戻らず、カビや細菌への感染を繰り返すようになります。感染の度に炎症を起こした気管支とその周辺組織には血管が増えていき、血痰や喀血を引き起こし、少しずつ組織を破壊して肺の機能を低下させていくのです。
治療には痰の除去や、感染症への適切な対症療法が必要ですので、疑わしい症状があればすぐに病院に行ってください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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