脳の血管が詰まる病気、脳梗塞とは?症状・対処法・予防法を解説!

2019/1/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

日本国内の死因で多いもののひとつが脳血管疾患です。なかでも「脳梗塞」は突然死を招くおそれがあります。有名人が脳梗塞を発症したニュースに驚かされることは多いでしょうが、「自分はきっと大丈夫」と思う方も改めて脳梗塞について理解を深めてみましょう。

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脳梗塞ってどんな病気?

「脳梗塞」とは脳の血管が詰まり、脳の細胞に障害が起きる病気です。脳内の血管は、太い血管から細い血管へと枝分かれしています。これらの血管が正常な状態よりも細くなったり、血栓(血の塊)が血管を詰まらせたりすると脳梗塞を発症します。発症した血管によって3種類に分けられます。

ラクナ梗塞
脳の細い血管が詰まる「小梗塞」です。日本人が発症する脳梗塞では最も多いタイプです。主な原因は高血圧による血管壁への負担にあると考えられています。
アテローム血栓性脳梗塞
脳の太い血管が詰まる「中梗塞」です。動脈硬化(アテローム硬化)を起こした血管が分厚く硬くなり、血栓が詰まりやすくなります。原因は動脈硬化を引き起こす高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病です。
心原性脳塞栓症
最も重症度が高いタイプで、脳の太い血管が詰まる「大梗塞」です。心臓で発生した血栓が血液の流れにのって脳まで辿り着き、血管を詰まらせます。主な原因は心房細動ですが、良性腫瘍の左心房心臓粘液腫も考えられます(ただし稀です)。

脳梗塞には前兆があるって本当?

重度の脳梗塞は命に関わりますので、早期発見・早期治療が望ましい対応です。前兆として下記で紹介する症状があらわれることがあります。

体の異変

  • めまいや耳鳴り
  • 手足のしびれ、震え
  • 顔面、唇のしびれ
  • 心当たりのない頭痛や肩こり

日常生活における異変

  • 簡単な計算ができなくなる
  • 字が上手く書けない、意図せず筆跡が変わる
  • 物忘れが増えた
  • 声が思うように出てこない
  • ろれつが回らない
  • 飲食物を飲み込みづらい
  • 階段や段差でよくつまづく

一過性脳虚血発作

脳梗塞の前兆によくみられる発作です。脳卒中の症状が5~15分程度続きます。長くても24時間以内には症状が治まります。症状が一時的ですぐに治まるため「問題ないだろう」と思うかもしれませんが、放置すると高い確率で脳梗塞に進行します。下記に挙げた一過性脳虚血発作の症状をチェックしましょう。

  • 顔の左右どちらかがしびれる
  • 左右どちらかの腕や足に力が入らない
  • 言葉がでてこない
  • 人の話をよく理解できない
  • めまい、ふらつき
  • 視野の一部または半分が欠ける
  • 物が二重に見える

一過性脳虚血発作とくも膜下出血の違い

混同されることもあるふたつの病気ですが、くも膜下出血では非常に激しい頭痛に襲われ、意識障害が発生します。手足の麻痺(しびれなど)はみられません。

脳梗塞が起きたときの対処法は?

脳梗塞は発症してから治療を開始するまでの時間が重要です。時間が短いほど治療が効果的であり、迅速な対応が不可欠です。症状の程度を問わず、すぐに119番に電話をかけて救急車を呼びます。病院に向かう間にも症状が悪化する可能性がありますので、徒歩や自家用車での移動はおすすめできません。患者さん本人が運転して病院に向かうのは、意識障害による交通事故のおそれがありますので絶対に避けてください。

救急車が到着するまでの注意点

  • 立ち上がらずに、横になる
  • 気道がふさがらない体勢をとる(仰向きにはならない)
  • 歩いたりせず安静にする
  • 周囲の人に助けを求め、ひとりにならない

発症後の経過時間と治療の関係

脳梗塞の治療法はいくつかありますが、発症後の経過時間によって治療方法の選択肢が制限されます。症状や患者さんの状態にもよりますが、脳梗塞における発症時間はとても重要です。

  • 発症後4.5時間以内であれば「t-PA治療(点滴による薬剤投与)」
  • 発症後8時間以内であれば「血管内治療法(カテーテルによる血栓除去)」

周囲の人がわかる、脳梗塞の兆候「FAST」とは

一刻を争う脳梗塞の治療ですが、症状が幅広く、一般の人が危険度を判断するのは困難ともいえます。近年、脳梗塞への迅速な対応を呼びかける「FAST」というスローガンがつくられました。「FAST」とは、脳卒中や脳梗塞で特に注意すべき4つのポイント(Face、Arm、Speech、Time)の頭文字です。
発症した本人だけでなく、家族や友人、同僚なども「FAST」を理解していれば、脳梗塞発症後の的確な対応が見込めます。

FAST

Face(顔の麻痺)
顔の片側が下がっている、ゆがみがある、いつもと比べて笑顔に左右の差異が目立つ
Arm(腕の麻痺)
左右のどちらかの腕が上がらない、両腕を同じように使えなくなった
Speech(言葉の障害)
ろれつがまわらない、簡単な文章を言いたくてもなかなか言葉が出てこない
Time(発症時刻)
治療方法の決定に大きな影響を与えるため、脳梗塞の疑いの強い症状がみられたら時計をチェックし、すぐに119番!

脳梗塞を予防するにはどんなことに気をつければいい?

脳梗塞は高血圧など血管にかかるストレスが主な原因です。血圧管理を予防法として取り入れることをおすすめします。動脈硬化や糖尿病、高脂血症の影響も考えられますが、いずれも生活習慣の改善は予防として効果が期待されます。

血圧を正常に保つために

  • 食生活はバランスよく
  • 食事で塩分は摂り過ぎない
  • 十分な睡眠をとる
  • 適度な運動を習慣化させる
  • 喫煙、飲酒はほどほどに

水分補給で血栓予防

血管を詰まらせる血栓の予防も大切です。正常な血液はいわゆらサラサラの状態で、水分が十分に含まれています。しかし血液中の水分量が減ると血液がドロドロの状態になり、血栓ができやすくなります。
夏は汗をかきますので体内の水分量が減り、血栓の発生が起きやすい季節です。夏や運動量が多い日は、一日に必要な水分量を意識して摂取してください。

  • 一日に必要な水分量の目安は、2.4L(食べ物から約1L、飲み物から1~2.5Lを補給するのが理想的)
  • 睡眠中も汗をかくため、就寝前の水分補給もおすすめ

おわりに:脳梗塞は「FAST」を覚えて迅速・適切な対応を!

脳梗塞は、生活習慣改善を基本とした予防、疑わしい前兆への気づき、発症後の迅速な対応がポイントになります。まずは「FAST」を覚え、あなたや大切な人が脳梗塞を発症したときにすべき対応を理解しておきましょう。

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