記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
妊娠中、性器にイボのようなものができて・・・おそるおそるお医者さんへ行くと「性器疣贅(せいきゆうぜい)」との診断。性感染症と聞いて驚き、妊娠になにか悪影響を及ぼしたり、赤ちゃんに危険が及んだりしないのか心配になります。ここでは、妊娠と性器疣贅について解説します。
性器疣贅(せいきゆうぜい)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)による性感染症(STI)の一種です。ほとんどのHPVは症状があらわれないため感染していることに気づきません。より悪性のHPVでは子宮頸がんや、肛門、外陰部、腟(ちつ)、陰茎、咽喉のがんの原因となることもあります。
性器疣贅のイボは、小さな肌色や白っぽい突起が点や塊(かたまり)となって性器のあらゆる部分に出現します。ほとんどの場合、症状は自然と治まります。
妊娠中の性器疣贅は、少しだけ複雑になることがあります。
妊娠ホルモンの急増や免疫系などの抑制によってイボが大きくなって排尿しづらくなり、イボから出血することもあります。しかし、いずれの場合でも赤ちゃんに影響はあまりありません。HPVが赤ちゃんに感染する可能性は0.5%と、ごくわずかです。
まれですが腟壁の内側にあるイボは、産道を妨げるほど大きく成長し、その弾力性を失わせることがあります。この場合は帝王切開が必要になるかもしれません。
イボを取り除くには、以下のような方法があります。
・寒冷療法(液体窒素凍結法)
・炭酸ガスレーザー
・LEEP(Loop Electrosurgical Excision Procedure)のよる電気焼却法
またイボを除去するための市販薬は、生殖器に使用すると性器の皮膚が非常に痛くなりますので絶対に使用しないようにしましょう。
ほとんどのSTIは妊娠に影響を与えます。しかし、妊娠中であってもほとんどのSTIは簡単に診断され、安全に治療することができます。HPVは、ウイルスなので抗生物質は効きません。またHPVを予防するためのワクチンは、妊娠中の使用は推奨されていません。
性器疣贅の場合、妊娠によってイボが大量にあらわれることがあります。イボが大量にあらわれて自然に治らないときは、イボを除去することができますが、出産が無事完了するまで治療を猶予するかもしれません。イボが経腟分娩に影響を与えることはめったにありません。
普通なら自然に治る性器疣贅も、妊娠中にはいろいろな障害があります。最初の妊婦検診で血液検査や尿検査とともに受けるパップテストは、「転ばぬ先の杖」です。たとえ陽性という結果がでても、未診断で未治療のSTIにかかっている状態で出産した赤ちゃんは、眼感染症や肺炎などの危険性があるでしょう。
性器疣贅の原因となるHPVの型は子宮頸がんを起こす種類とは異なります。もし異なる型のHPVに感染していたときは、産後にも定期的にパップテストを受けたほうがより安全かもしれません。パップテストは妊娠中と出産に際して、赤ちゃんには何のリスクないので安心です。