記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
何だか育てにくいなあ、赤ちゃんのときから、顔を見ても目を合わせてくれない。公園で見るほかの子とどこか違う気がする……。もしかしたら、テレビや新聞に最近出てくる「自閉症」じゃないかしら。そんな不安な気持ちのある人はいませんか?
今回の記事では、赤ちゃんを育てながら、そんな思いを抱いている方のために気になる自閉症について解説しましょう。
自閉症とは、正常な社会的およびコミュニケーション能力の発達に影響を及ぼす障害です。自閉症の人は、早い時期からほかの人とコミュニケーションをとるのに支障が出ることがあります。
自閉症の徴候は、人によって異なります。また徴候の程度も人によって様々です。 症状の重さやIQ(知能)テストの結果に応じて「低機能自閉症」または「高機能自閉症」があるとされます。 高機能自閉症は、症状がより軽度の自閉症を示し、低機能自閉症は、症状がより重度の自閉症を示します。
自閉症を持つ多くの子供たちには精神遅滞(知的障害)もありますが、全ての自閉症の子供がそうだというわけではありません。
自閉症児に検査を行うことは難しいかもしれません。なぜなら、コミュニケーション能力に障害があるため、他の子供と同じように質問に反応してくれないからです。このため、自閉症の専門家は、子供の状態についてより詳しくわかる特別な検査を子供に行うことがあります。
以前と比較して、より多くの数の子供が自閉症と診断されています。 しかし、実際に以前と比べてより多くの子供が自閉症になっているかどうかは不明です。それは、保護者、教師、および医師が自閉症の徴候を見つける能力が高くなったからなのかも知れません。
自閉症児を兄弟姉妹に持つ子供が自閉症を発症する確率は約5%です。また、自閉症児の兄弟姉妹は、学習障害などの別の障害のリスクも高い(10%~40%)ようです。 お子さんが自閉症と診断されて、2人目がほしいと考えている場合は、医師に相談しましょう。
自閉症の一般的な症状は次のとおりです。
・寄り添ったり、アイコンタクトを避ける
・音や他の音に反応しない
・名前に反応しない
・話さない、または適切に言語を使用していない
・前後に揺れる、頭を振り回す、または頭をぶつける
・おもちゃの車の車輪のような物体の一部分を見つめる
・手のジェスチャーやボディランゲージを理解していない
・何かのふりをしたり、ごっこ遊びをしない
・順序、ルーチン(決められた動作)、または儀式に非常に関心があり、ルーチンが妨げられたり変更されたりすると混乱する
・無表情であるか、または単調な声を出す
・自分自身を傷つける、または危険を恐れない
コミュニケーションに障害があるのが大きな特徴なので、赤ちゃんのうちは、わかりにくいかもしれません。でも、人に興味をあまり示さない、睡眠が浅い、言葉が出るのが遅いなどでわかることがあります。気になったときには、まずは、小児科の医師に相談しましょう。
インフルエンザ予防接種(その他のワクチン全般)に関して、自閉症の発症のリスクに不安を抱えている方へ、良いニュースがあります。これらのワクチンが自閉症の引き金となる可能性は、限りなく低いということがわかりました。
インフルエンザ予防接種をはじめとするワクチンは、自閉症発症のリスクとほとんど関係がないことが、数多くの研究によって証明されています。
テレビや新聞で話題になっている自閉症ですが、診断できる医師はあまり多くありません。でも、不安な気持ちで子育てしていると、赤ちゃんの心の発達にも影響することがあります。まずは、近くの小児科の医師に相談し、もし可能性が高いようでしたら、専門の医師(小児神経科医や児童精神科医)に相談することをお勧めします。