気管支肺炎って風邪とは違うの?なりやすい人がいるって本当?

2018/12/21

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肺炎は、日本人の死因第3位を占めるほど、私たちにとって身近な病気です。
高齢者がなりやすい病気のひとつとして認識されていますが、乳幼児や若者が発症することも珍しくありません。そんな誰にでも起こりうる肺炎について、理解を深めていきましょう。

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気管支肺炎とは

肺炎とは、空気の通り道である気管支の末端や、肺でガス交換の役割を担う肺胞に、細菌やウイルスが感染して炎症を起こしている状態を指します。発熱や咳、痰などが主な症状で、風邪だと思っていたら肺炎だというケースも多くあります。
肺炎には様々な分類法がありますが、肺炎を起こす場所による分類の中には「大葉性肺炎」と「気管支肺炎」があります。

肺は、左肺が2つ(上肺葉・下肺葉)に、右肺では3つ(上肺葉・中肺葉・下肺葉)に分かれており、大葉性肺炎は1つの肺葉全体が侵されている状態です。咳や痰の症状がなく、突然の高熱や胸痛をきたし、高齢者では意識障害や歩行困難などの症状を起こすことも多いです。

一方、気管支肺炎は、肺に入った気管支が枝分かれを繰り返し、内径が1mm以下になった部分から先の細気管支(さいきかんし)を中心に起こる炎症で、炎症が肺胞にまで及んだ状態を指します。気管支の炎症をともなうことから、発症初期から咳や痰の症状があらわれ、発熱が加わる傾向が多くあります。

病原体の種類によって、大葉性肺炎を引き起こしやすい病原体と、気管支肺炎を引き起こしやすい病原体がありますが、気管支肺炎を引き起こしやすい病原体は、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ肺炎の原因)と、様々なウイルス(ウイルス性肺炎の原因)があげられます。

きっかけは、風邪やインフルエンザに感染した後、普段の社会生活の中で発症(市中肺炎)することが多いです。また、何らかの病気で入院中に、微生物が肺の中に侵入して発症する肺炎(院内肺炎)もあります。

風邪との違いは?

肺炎と風邪は症状が似ているため間違えられやすく、風邪をこじらせて肺炎になることもありますが、それぞれの特徴は以下の通りです。

風邪
80~90%はウイルスが原因で引き起こされ、鼻やのどの部分にあたる上気道がウイルスに感染して炎症を起こします。
37℃台の微熱、くしゃみ、鼻水、せき、痰、咽頭痛などの症状があらわれますが、数日から1週間くらいで治まります。
肺炎
風邪の症状よりも重く、38℃を超える熱が数日続きます。肺の奥の方で感染し、細菌やウイルスが増殖して引き起こされます。
悪寒、全身倦怠感、呼吸困難感、息切れ、色のついた痰などの症状があらわれ、期間も長く続きます。
高齢者の場合、高熱が出ないケースもありますので、気づかないうちに悪化していることもあります。食欲低下、活動性の低下、歩行困難、意識障害などの症状にも注意が必要です。

風邪も肺炎も、免疫機能が働きやすくなるために発熱をしていますが、肺炎の方がより強い免疫力で闘おうとするため、高熱が続くといえます。なかなか症状が治まらない場合には、医療機関を受診しましょう。

気管支肺炎になりやすいのはどんな人?

タバコを吸っている人は、気管支肺炎になりやすいと考えられています。これは、喫煙によって肺の働きが低下するほか、免疫細胞や免疫抗体の働きも低下するため、病原体が増殖しやすくなるからです。タバコから出る副流煙は、周囲の人にも影響を与えますので、環境にも注意が必要です。

また、糖尿病などの生活習慣病のある人や、心不全、腎不全、肝硬変などの持病を持っている人も、肺炎のリスクが高まります。

糖尿病で血糖値の高い状態が続いていると、細菌やウイルスの侵入を防ぐ働きが低下し、免疫機能全体もうまく機能しなくなります。こうなると肺炎をはじめとした感染症にかかりやすくなるだけでなく、感染症にかかると血糖値が高くなりやすくなるため、悪循環に陥りやすいともいえます。

また、肺炎による死亡者の95%が65歳以上の高齢者です。加齢とともに免疫力や抵抗力が低下し、細菌やウイルスに感染しやすくなります。

気管支肺炎を治すには?

風邪とは違い、気管支肺炎の治療には抗生物質の投与が必要です。若く健康で軽症の人であれば通院し、内服薬や場合によって点滴をして治療を行いますが、肺炎は基本的に入院治療です。脱水や低栄養を改善しながら、原因となる病原体に有効な抗生物質を投与していきます。

誤嚥が関係している肺炎の場合は絶食・絶飲し、糖尿病や心不全などは肺炎によって持病が悪化することもありますので、持病の治療も必要です。

気管支肺炎を予防するために、どんなことができる?

気管支肺炎にならないためには、普段の生活の中で以下に注意しましょう。

手洗い・うがい

私たちが生活する環境の中には、多くの細菌やウイルスが存在します。それらは鼻や喉などの粘膜から侵入し、体内で炎症を起こす原因となります。
細菌やウイルスを侵入させないために、手洗い・うがいをこまめに行いましょう。手洗いは石鹸を泡立てた後、15~20秒くらいかけて流水で流すようにします。アルコール含有の手指消毒薬を使用するのもおすすめです。

栄養と睡眠

栄養状態が悪くなると、免疫力が落ちて肺炎にかかりやすくなります。1日3食バランスよく食べるように心がけ、持病を持っている人は医師の指導に従った食生活を送ってください。

また、睡眠不足も免疫力が落ちます。抵抗力を高めるために、1日6~8時間の十分な睡眠とりましょう。

ワクチンの接種

インフルエンザにかかると、肺炎のリスクが高まります。インフルエンザワクチンは毎年接種するように心がけましょう。

肺炎の原因菌としてもっとも多い肺炎球菌にも、ワクチンがあります。とくに65歳以上の高齢者では、発症を予防するだけでなく重症化を防ぐために大変効果的です。

定期的な健康診断や生活習慣の見直し、持病のある方は医師による適切な指導を受けて、肺炎を予防しましょう。

おわりに:風邪と間違えないように注意しましょう

気管支肺炎は風邪と症状が似ていますが、風邪よりも熱が高かったり症状が長引いたりします。
重症化すると、高齢者や小さな子供では命に関わる危険性もあるため、少しでも違和感があったらすぐに医療機関を受診して、適切な治療を行いましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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