記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
電池の消耗が激しいスマートフォン。ほとんどの方は就寝時、スマホを充電して枕元に置いておき、スマホのアラームで目覚める…という生活を送っているのではないでしょうか。ただ、そんな生活を続けていると、いつか低温やけどをする恐れが。
「低温やけどを招くアイテム」といえば、何を思い浮かべますか?きっと多くの方は、カイロや湯たんぽ、電気毛布などと答えることでしょう。しかし、暖房器具ではないスマートフォンによっても、低温やけどが起こることはあります。
そもそも低温やけどとは、体温より少し高いくらい~60℃以下の熱源に触れ続けたことで起こるやけどです。ちょうど「触れていて気持ちいい」くらいの温度なので、ついつい長時間皮膚に当ててしまいがちですが、その間に表皮だけでなく皮下組織にまでじっくりやけどが及んでしまうことも多いです。その点、熱湯や火などの高温のやけどと比べて重症化しやすい、厄介なやけどともいえます。
国民生活センターによれば、低温やけどは以下の温度と時間で発生するとされます。
しかし、本来スマホはやけどが起こる可能性のない温度に設計されています。動画やゲームなどの複数のアプリを開くと、内部回路のCPUへの負荷が増大するため内部温度は上昇しますが、同時にスマホの本体の表面から放熱が行われるため、やけどを負うほど熱を持つことはありません。
ただ、本体の表面を布などで覆ってしまったり、高温の環境下で操作し続けたりすると、スマホの表面の放熱がうまくいかず、高温になってしまうことがあります。またスマホの機種によっては、特に使用環境に問題はなくとも、ゲームやテレビ電話などのアプリの使用によって、本体の背面が58℃まで上昇していたことも、国民生活センターの実験によって明らかになっています。
スマホによる低温やけどは、操作中だけに起こる現象ではありません。「スマホの充電中に低温やけどを負った」という報告も、国民生活センターに何件も寄せられています。その具体的な事例が、「就寝中に本体に触れ続けてしまい、低温やけどを負った」というものです。
実は寝ている間は、スマホが長時間体に当たり続けていても気づきにくいため、低温やけどのリスクが高い状況です。ただでさえ充電中はスマホやバッテリーが発熱しやすく、さらに布団の中は熱がこもりやすい環境。動画やゲームアプリを開いたまま寝落ち…というのはくれぐれも避けるようにしましょう。
スマホによる低温やけど対策としては、突然の寝落ちを防ぐために、「布団でスマホをいじるときは充電器をささない」ことを徹底しましょう。もし充電器を指すことがあっても、睡眠中体に接触しないよう、スマホは布団や枕の上には乗せないようにしてください。
また、実現は難しいかもしれませんが、できるだけ起きているうちにスマホの充電を済ませておく、充電が完了した段階ですぐにスマホを抜き、過充電を防ぐ、といった対策も有効です。
充電器をさしながら、お気に入りの動画やゲームアプリを楽しんでいたら、いつの間にか寝てしまっていた…というのは日常茶飯事かもしれませんが、寝ていて気づかないうちに顔や体にスマホが当たり続けると、重度のやけどを負ってしまう恐れがあります。スマホ本体と充電の端子が異常発熱し、火事になりかけた事例も報告されているので、命を守るためにも、「布団の上での寝ながら充電」習慣は早々にやめましょう。