貧乏ゆすりは健康にいい!? エコノミークラス症候群の予防効果も

2018/12/21

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「行儀が悪いよ」と指摘され、貧乏ゆすりを直した経験はありませんか? このマナー違反とされる貧乏ゆすり、実はエコノミークラス症候群予防などの健康効果が見込める、という見解が広まってきているのです。詳しくは以降で解説します。

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貧乏ゆすりはなぜ起こる?

ずっと椅子に座っていると、無意識のうちについつい貧乏ゆすりのクセが出てしまうこと、ありませんか?なぜ貧乏ゆすりをしてしまうのか、明確なメカニズムはわかっていません。ただ、専門家の中ではいくつかの説が挙げられています。

そのひとつが、「ストレスや不安を感じたり何かに集中しているときに、足の動きを止めている大脳の作用が抑制されたことで貧乏ゆすりが起こる」というものです。またほかの説としては、「座りっぱなしによって身体的なストレスが溜まった結果、それを発散するために貧乏ゆすりが起こる」というのもあります。

貧乏ゆすりは健康にいい!?

マナー違反とされる貧乏ゆすりですが、意外にも「貧乏ゆすりは健康にいい」ということがイギリスの調査によって明らかになっています。

この調査によれば、「デスクワークなどで1日7時間以上座る人は、座る時間が5時間以下の人に比べて死亡リスクが高いが、1日7時間以上座っていても、頻繁に貧乏ゆすりをしている人の死亡リスクは高くなっておらず、さらに座っている時間が1日5時間以上6時間未満の人も、貧乏ゆすりを頻繁に行えば死亡リスクが低下する」ことが判明したそうです。

エコノミークラス症候群の予防効果も

上記のイギリスの調査に関しては、貧乏ゆすりによるふくらはぎの筋肉の収縮、そして血流の改善効果が関係していると考えられます。そしてこのことからいえば、長時間の座りっぱなしによる足の血流悪化が原因で起こる「エコノミークラス症候群(医学的には「深部静脈血栓症」と呼ばれています)」も、貧乏ゆすりによって血流が改善すれば、未然に防げる可能性があります。

食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)が血管の中を流れ、肺に詰まって肺塞栓などを誘発する恐れがあります。

ただし、実際に機内で貧乏ゆすりをすると、周囲の人が不快な思いをする可能性はあります。隣の人が眠ったときに行うなど、くれぐれも配慮しましょう。

また、貧乏ゆすりはあくまで座りながらの行為であって、歩行や運動の代わりになるわけではありません。ときどき椅子から立ち上がったり、ひざの曲げ伸ばしをしたりして、足に血液を停滞させないようにすることが大切です。

貧乏ゆすり、その他の健康効果は?

死亡リスクの低下やエコノミークラス症候群の予防効果以外にも、貧乏ゆすりには以下の健康効果が期待されています。

むくみの解消

貧乏ゆすりをすると、ふくらはぎの筋肉が伸縮して血流が改善するため、足のむくみの解消効果が期待できます。

変形性股関節症の痛みの緩和

変形性股関節症とは、加齢や運動不足、肥満などによって股関節に隙間が生じ、軟骨がすり減った結果、痛みや機能障害が起こるようになる病気です。一部の病院では、貧乏ゆすりがこの変形性股関節症の治療に用いられており(医療的には「ジグリング」と呼ばれる治療法です)、貧乏ゆすりによって痛みが緩和したという患者さんも少なくありません。

ただし、医学的にはエビデンスが不十分ということから、変形性股関節症の治療ガイドライン(2016年)では、治療として推奨されていません。自己判断での実施はやめ、必ず医師に確認をとるようにしてください。

おわりに:貧乏ゆすりには健康効果がたくさん!?

エコノミークラス症候群の予防、死亡率の低下、むくみの改善など、貧乏ゆすりにはさまざまな健康効果が期待されています。厳密には椅子から立ち上がって歩くほうが良いですが、なかなか立ち上がれない状態のときは、周囲の状況をうかがいつつ、こっそり実践してみてもいいかもしれません。

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