くも膜下出血の治療後に発症するかもしれない「水頭症」とは

2019/1/7

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

くも膜下出血の治療後にあらわれる可能性がある症状のひとつに「水頭症」があります。この記事では、水頭症を発症するとあらわれる症状や治療法、想定される合併症について解説します。

水頭症ってどんな病気?

水頭症は、くも膜下出血の手術後に現れる症状のひとつです。脳は脳脊髄液という無色透明の液体で満たされたところにありますが、この脳脊髄液の髄液循環もしくは吸収が障害されると、脳室という部分に脳脊髄液が貯まります。この脳室に脳脊髄液が過剰に溜まると脳室が拡大して、脳のほかの部分を圧迫します。その結果、脳の機能を低下させ、さまざまな症状を引き起こすのです。

くも膜下出血の後に見られる水頭症は、正常圧水頭症と呼ばれています。正常圧水頭症とは、髄液が存在する脳室の拡大がみられるものの、頭蓋内圧はほぼ正常に保たれている状態の水頭症のことをいいます。

正常圧水頭症でみられる症状は?

正常圧水頭症でみられる代表的な症状として、「歩行障害」、「認知機能の障害」、「尿失禁」の3つがあります。

最初にみられる症状は歩行障害で、正常圧水頭症を発症した人のうち、約90%にみられます。小刻みですり足で歩いたり、方向転換などで足踏みを繰り返したり、バランスを崩しやすくなったりするのが一般的にみられる状態で、さらに症状が進行すると立ったり座ったりする状態を維持するのが難しなります。

また、認知機能の障害も、歩行障害と同様によくみられる症状です。約80%の患者さんに、この症状があらわれます。主に自発性の低下や作業能力の低下といった前頭葉に関わる機能に影響が出ますが、症状が進行すると全体的に低下し、無関心、無言言動となります。

そして、尿失禁は正常圧水頭症の患者さんの約60%にみられます。最も遅れてあらわれる症状です。高齢者の場合、正常圧水頭症だけが尿失禁の原因となる場合が少ないので見落とされやすい症状でもあります。

正常圧水頭症になったらどんな治療をするの?

正常圧水頭症には現在有効な内科的治療はないとされており、外科的な治療が主流となります。外科的な治療はシャント術が最も有効な治療法とされています。

シャントとは日本語で「短絡」という意味で、余分な脳脊髄液が体内の別の場所に常時排出されるよう、チューブでつなぐ手術という意味です。特に正常圧水頭症は長期にわたって管理が必要となるため、このシャント術が有効であるとされています。

シャント術には脳室-腹腔シャント術(VPシャント術)と腰椎くも膜下腔-腹腔シャント術(LPシャント術)があります。

脳室-腹腔シャント術(VPシャント術)は最もよく行われるシャント術で、標準的な治療法ともいわれています。皮下からチューブを通して、脳室内と腹腔内をチューブでつなぎます。

また、腰椎くも膜下腔-腹腔シャント術(LPシャント術)とは、腰椎くも膜下腔と腹腔をチューブでつなぐ手術です。脳に対する侵襲が少ないという点で、最近行う施設が増えてきている手術方法です。

原則として、脳室内と腰部くも膜下腔の間に閉塞が無いことが適応の条件となりますが、脊椎管狭窄や腰痛を有する場合が多いため、この手術が行える人は限られてしまうのが現状です。

このほか、脳室心房シャント術(VAシャント術)という方法もありますが、大血管閉塞の可能性や敗血症の可能性があるので,腹腔が使用できない時に選択されます。

シャント術で起こりうる合併症とは

シャント術を行った際に起こりうる主な合併症として、シャント感染、シャント機能不全、脳脊髄液過剰排出があります。

シャント感染とは、シャント造設術の際に空気中や皮膚の細菌が定着したり、手術の傷口が感染することが原因で起こります。シャント感染を起こすと髄膜炎、脳室炎、腹膜炎などが起こり、場合によってはシャントをいったん抜いて、後日改めてシャント術を行うことが必要になります。

シャント機能不全とは、シャントの閉塞・断裂・逸脱によってシャントの効果がなくなることをいいます。水頭症の症状が再び悪化することで気づく人が多いです。

脳脊髄液過剰排出とは、シャント圧が適切でないことによって過剰に髄液が排出され、その結果低頭蓋内圧症候群となることです。低頭蓋内圧症候群となると、頭痛硬膜下水腫・血腫がみられることがあります。

おわりに:くも膜下出血の治療後は正常圧水頭症の症状にも注意を

正常圧水頭症とはくも膜下出血の治療後に見られる水頭症のことで、発症すると歩行障害、認知機能の障害、尿失禁がみられます。これらの症状は高齢者ではみられることも多いので、特にくも膜下出血の治療をした方にこの症状がみられたら、水頭症になっている可能性も検討したほうがよいでしょう。

治療は外科的治療、シャント術が中心となります。手術後の合併症がみられる可能性もあるため、担当医の説明をよく聞き、手術に臨むことをおすすめします。

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