記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2019/2/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓弁膜症は、心臓の中にある弁がうまく機能しなくなることで発症する病気です。自覚症状がないため気づきにくいのですが、症状が進むと息切れや胸の痛み、足のむくみといった症状がみられます。この記事では、心臓弁膜症を発症する原因とともに、弁膜症かどうかはどうやって判断されるのかを紹介します。
心臓は、右心房・右心室、左心房・左心室という4つの部屋と、各心室の出入口にある4つの弁で構成されています。「心臓弁膜症」とは、血液の逆流を防止する役割を持つこれらの弁がうまく機能しなくなることで起こる病気です。
心臓では、全身に酸素を送った血液が右心房、右心室に戻り、ポンプ作用で肺へ送られ再び酸素をたっぷり含んだ血液が、左心房、左心室を経て、強力なポンプ作用で大動脈から全身に送られます。
弁膜症には大きく分けて「逆流」(閉鎖不全)と「狭窄」があります。逆流は弁の組織などが分厚くなったり破壊されるなどして、きちんと閉じることができず血液が逆流してしまう現象、狭窄は、しなやかな開放ができなくなり、血液の通り口が狭くなって正常方向の血流が妨げられる現象です。
ひと昔前は、原因のほとんどはリウマチ熱(溶血性連鎖球菌による感染症)の後遺症でしたが、現在では体質的な弱さや形状の異常から圧力に耐え切れず逆流が起こったり、動脈硬化や加齢に伴う弁の硬化、一時的に血液中に混入した細菌による弁の破壊、心筋梗塞による機能低下や大動脈壁の病気などが原因となる場合があります。また、原因がわからない場合も多いです。
弁膜症によって血流に異常が発生すると、心臓はそれに順応するために上流側の心房や心室が肥大して収縮力や心拍数を増やし、不都合な症状がでないようにします。進行しても弁の変化はゆっくりと進むため、体が慣れて気づかないこともありますが、限界に達すると息切れや胸の痛み、呼吸困難、顔面や下肢のむくみ、腹部膨満感、全身の倦怠感や疲労感などの自覚症状があらわれ、不整脈や心不全、血栓による脳梗塞などを引き起こすことがあります。
一般的に検査は循環器科で行われ、まず問診で自覚症状を確認したあと、視診・触診で心臓のサイズや血流異常を確認し、聴診で心臓の音を聞きます。さらに心エコー図検査で異常のある弁を特定し、動きや狭窄、逆流の状態を測定して総合的に判断します。
弁膜症と診断された場合、治療方針の決定に向けてさらに詳しい検査を行います。心臓の大きさや形を胸部X腺検査で、不整脈や心臓肥大の状態を心電図検査で、弁やそのまわりの石灰化や血流の状態を心臓CT検査で、心臓やその周りの血管の形状や血液循環の状態を心血管造影法で、心筋の血流状態や動きを心核医学検査(アイソトープ検査)で調べ、心機能全体の状態や他の臓器への影響、合併症の有無なども調べます。
初期には自覚症状がほとんどない場合が多いので、疑いがあれば早目に病院で検査を受けましょう。
心臓弁膜症は、心室の出入口で血液の逆流を防いでいる弁がなんらかの原因でうまく機能しなくなることで起こる病気です。ゆっくりと進行する気づきにくい病気ですが、狭窄や逆流によりやがて息切れや呼吸困難、不整脈、心不全、脳梗塞など深刻な事態を引き起こします。原因は、現在では体質や加齢によるものなどが増え、原因不明の場合も多くあります。
気になる症状があるときは早めに病院を受診するようにしましょう。また、定期的な検査も怠らないようにしてください。
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