記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
国の指定難病のひとつ「血栓性血小板減少性紫斑病」という病気をご存知ですか。以降ではこの血栓性血小板減少性紫斑病とはどんな病気なのか、代表的な症状や発症の原因などを解説していきます。
血栓性血小板減少性紫斑病(Thrombotic Thrombocytopenic Purpura : TTP)とは、止血に必要な血小板が塊をつくって血栓になり、全身の細い動脈(脳や腎臓、冠状動脈など)を塞いで各臓器に血液が行き渡らなくなることで機能障害を引き起こす病気です。国の難病にも指定されています。
血栓性血小板減少性紫斑病になると、血栓が形成されて血管が塞がることで、各臓器に機能障害が現れます。また、血栓形成のために血小板が過度に消費され、血小板の数が減ってしまうことで出血傾向もみられます。
具体的には、まず倦怠感や筋肉痛、吐き気などが現れ、その後38℃前後の発熱(40℃を超える場合もあります)や貧血症状、手足の青あざ、口腔粘膜からの出血が見られるようになります。また、短時間に見られる意識障害や錯乱、失語、けいれんといった精神神経症状や、血尿、たんぱく尿などの腎障害が突然起こる場合もあります。
これらの症状は重篤な場合が多いですが、軽度で済む場合もあるので注意が必要です。なお、古典的には「発熱」「動揺性精神神経障害」「腎障害」「溶血性貧血」「血小板減少(出血による青あざ)」の5つの特徴をもつといわれてきましたが、近年ではこれらがすべて揃っていなくても、血小板減少と溶血性貧血が認められれば、血栓性血小板減少性紫斑病を念頭に診断・治療を行うべきと考えられるようになってきています。
血栓性血小板減少性紫斑病は、血小板血栓が詰まることで起こる病気ですが、この血小板血栓ができる原因には「ADAMTS13」という肝臓でつくられる酵素が関係しています。
ADAMTS13とは、フォンビルブランド因子(Von Willebrand Factor:VWF。血小板同士をくっつける糊のようなもの)を切断する酵素です。血栓性血小板減少性紫斑病は、このADAMTS13の活性が減少あるいは欠損しているために巨大なVWF重合体が血液中にできてしまい、血小板血栓が形成されやすくなっているものと考えられます。
血栓性血小板減少性紫斑病には先天性と後天性のものに分けられ、先天性の場合は上記・ADAMTS13自体の異常が原因です。一方後天性の場合は、ADAMTS13に対する自己抗体の産生や重篤な肝機能障害といった基礎疾患、特定の薬剤(チクロピジン、クロピドグレルなどのチエノピリジン系薬剤)が原因で起こることもあれば、原因不明のこともあります。発症年齢は乳幼児~老人までとかなり幅が広いです。
なお、先天性のケースは非常にまれで、後天性が全体の95%以上を占めます。
血栓性血小板減少性紫斑病は、ADAMTS13という酵素の活性に問題があることで、血小板の塊ができやすくなり、形成された血栓が血流を阻害することで引き起こされる病気です。後天的に発症するケースが多いので、倦怠感や青あざ、意識障害などの気になる症状が見られたらすぐに医療機関を受診しましょう。
【 難病情報センター の情報をもとに編集して作成 】