記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
髄膜炎菌Bワクチンとは、日本では未承認のワクチンですが、イギリスなどでは乳児への定期予防接種として導入されています。この記事では、髄膜炎菌の危険性や髄膜炎菌Bワクチンとは何か、イギリスでどのように使われているかなどをみていきます。
B群髄膜炎菌は世界中で、髄膜炎及び敗血症といった致死率の高い感染症の要因となっています。髄膜炎菌群として12個のものが知られており、イギリスの髄膜炎菌感染の約90%はこのうちのB群髄膜炎菌によって引き起こされています。
B群髄膜炎菌によって引き起こされる髄膜炎および敗血症は、あらゆる年齢の人に影響を及ぼす可能性がありますが、乳児および幼児の間で特によく見られます。
イギリスでは、過去20年間、毎年500人から1,700人(主に乳幼児)がB群髄膜炎菌感染に苦しんでおり、約10人に1人が感染により死亡しています。生存者の多くは、切断、脳損傷、癲癇(てんかん)等の重い恒久的障害に苦しんでいるといわれています。
B群髄膜炎菌は、世界中に何百という異なる型のものが存在しています。髄膜炎菌Bワクチンを接種すれば、イギリスで流布しているものうち約90%を予防できるという予測をしている調査研究もあります。しかしながら、この予測は予防された症例の数とどのような関係にあるのかは明らかにされていません。
イギリスでは、髄膜炎菌Bワクチンは、生後8週間、16週間、および1歳の乳児の接種が推奨されています。髄膜炎菌Bワクチンは、B群髄膜炎菌による感染から乳児を保護します。幼児の髄膜炎菌感染の90%以上はこのB群髄膜炎菌によって引き起こされます。髄膜炎菌感染は非常に深刻で、髄膜炎および敗血症を引き起こし、重度の脳損傷、切断手術、場合によっては死にも繋がります。使用される髄膜炎菌Bワクチンは “Bexsero” と呼ばれています。
ワクチンは、乳児の大腿部への単回投与で与えられます。
髄膜炎菌Bワクチンはその他の定期予防接種と併用されています。接種時期は以下のとおりです。
乳児にほかの定期予防接種と共に髄膜炎菌Bワクチンも受けさせるよう、診療所から保護者のもとへ指示が自動的に送られます。
髄膜炎菌Bワクチンは、ほとんどの髄膜炎菌の表面に検出される3つの主要なタンパク質と特定の型の髄膜炎菌Bの外膜組織とが組み合わせられてできています。共にこれらの成分は免疫システムを刺激し、将来髄膜炎菌が体内に侵入した場合に防御できるようになります。
ほかのワクチンと同様、髄膜炎菌Bワクチンは副作用を引き起こす可能性がありますが、研究結果が示すところによると、概ねこれらは軽度なもので、長く続きません。
生後8週間および16週間に、髄膜炎菌Bワクチンを投与された乳児は、ワクチン接種から24時間以内に発熱する可能性が高いです。
ほかによく見られる副作用には、注射部位での過敏症、発赤、圧痛等があります。
髄膜炎の一般的な型に対応した、日本で承認がおりているワクチンは以下の二つです。
髄膜炎菌には幾つかの型があり、その中でも人に感染して髄膜炎を引き起こすものに対するワクチンとして使用されるのがA、C、Y、W群に対するものです。
このワクチンは多糖体ワクチンと呼ばれており、二歳以上の小児に接種されます。一般的には一回の接種でよいとされていますが、小児は抗体ができづらいため特に感染リスクが高いと考えられる場合には3~5年後に追加接種することがすすめられています。
また、全ての小児に接種が必要なわけではなく、旅行や引っ越しなどで流行地を訪れる場合に接種することとされています。アメリカでは学校へ入学する際にワクチン接種を義務化される場合もあるので、接種の必要が予想される場合は、接種可能な医療機関をあらかじめ調べておきましょう。
また、副反応は比較的軽度であり、接種部分の発赤や痛みなど一般的なものが多いです。
小児の細菌性髄膜炎で最も多いのは、ヒブ(ヘモフィリス・インフルエンザ菌b型)によるもので、約60%を占めていました。しかし、日本では2013年からヒブワクチンは定期接種とされており、発症者も大きく減少したといわれています。
ヒブワクチンは、生後2か月以降に接種を開始し、4~8週間隔で3回の接種を行います。その後、3回目の接種から7か月以上を開けた一歳前後に4回目を追加接種します。
日本ではあまり発生しない髄膜炎菌ですが、感染すると重篤な症状があらわれます。日本では未承認の髄膜炎菌Bワクチンですが、髄膜炎菌感染の予防のための知識として是非知っておきましょう。