記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
くも膜下出血を発症してしまった場合、その治療はどのように、どんな流れで行われるのでしょうか?また、くも膜下出血の手術・治療が終わった後でも完全に安心はできないとよくいわれていますが、それはなぜなのでしょうか?
くも膜下出血を発症したら、まず出血部位を特定するための診断や、脳動脈瘤などの病変を調べます。脳動脈瘤が疑われる場合は、出血源に処置を行い、再出血を防止します。再出血防止のための処置にはクリッピング術またはコイル塞栓術という治療法が行われます。
クリッピング術は頭蓋を開くため侵襲性の高い治療法ですが、代わりに脳動脈瘤への血流の流れ込みをより確実にせき止められます。逆に、コイル塞栓術は侵襲性が低い代わりにクリッピング術よりも血流の再びの流れ込みがやや起こりやすいことがわかっています。これらのどちらを選択するかは患者さんの状態や脳動脈瘤の位置によります。
また、出血によって脳の部位が多かれ少なかれ損傷することになります。出血による損傷はその後腫れとなり、二次的に損傷が進行する場合があります。この場合は薬剤などによる治療を行うため、再出血予防の術式と並行して行われます。
くも膜下出血で手術を行う第一の目的は再出血の予防です。来院時には一旦、出血が自然に止まっていますが、再出血すると脳のダメージが増え、生命に関わる状態に陥ります。万が一、再々出血が起こった場合はほとんど救命不可能な状態にまで脳の障害が進行してしまいます。このため、再出血を起こさないことが何よりも大切なのです。
動脈瘤に対して処置を行わずそのままにしていた場合、約20%が2週間以内に、そして約50%が半年以内に再出血を起こすことがわかっています。早急に出血部位を特定し、再出血を予防するための手術治療を行うことが重要です。
くも膜下出血の手術を行った後は、「脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)」という状態に注意する必要があります。
脳血管攣縮とは、くも膜下出血を発症して3日程度経過したころに起こる症状で、脳の血管が細くなる現象です。そのままにしておくと約2週間程度で脳に血流が届かなくなり、麻痺などのさまざまな脳障害による症状を引き起こし、生命に関わる状態になることも少なくありません。
脳血管攣縮はくも膜下出血を引き起こした患者さんの約30〜70%に起こり、無症状であることもあれば大きな脳梗塞へと発展し、予後が大きく悪化したり、最悪の場合は死に至ることもあります。50〜60年前から研究が続けられていますが、未だに決定的な病態の解明や根本的な予防、治療などの手段が確立されていない病状です。
また、脳で生じる髄液という液体がくも膜下出血の影響で吸収されなくなった場合、水頭症という症状を引き起こすこともあります。水頭症によって脳室が膨らむと、大脳半球が頭蓋骨に押しつけられるような状態になり、脳にさまざまなダメージを与え、足が上がらない・小刻みで不安定な歩行・物忘れや無気力・尿失禁などの症状が起こります。
髄液が溜まってしまうこの水頭症を「交通性水頭症」と呼び、くも膜下出血の発症後すぐに起こる場合と1〜2ヶ月程度経過してから起こる場合があります。水頭症が起こってすぐの急性期には脳室に細いシリコン製の管を通し、髄液を排出して圧を下げる治療法が有効です。また、この治療が長期にわたって必要な場合は脳室から腹腔内へ管を通すシャント術が行われる場合もあります。
これらのことから、くも膜下出血の手術が無事に成功したとしても油断は禁物です。しばらくは急な症状の変化に注意し、異変を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。
くも膜下出血の手術を含めた治療の目的は、あくまでも再出血の予防です。また、再出血以外にも「脳血管攣縮」「水頭症」などの症状が数日〜約2ヶ月程度の間に現れる場合があります。くも膜下出血の治療後に何らかの異常を感じた場合は絶対に放置せず、すぐに医療機関を受診しましょう。
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