記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
脳挫傷とは、交通事故などで外から脳に大きな衝撃が加わり、脳にダメージを受けてしまった状態です。脳挫傷によってどんな症状が出るのでしょうか?そして、脳挫傷の治療ではどのようなことをするのでしょうか?
脳挫傷とは脳にどんなダメージをきたした状態なのか、さらに脳挫傷に特徴的な症状や、その治療法についても解説します。
脳挫傷とは、外からの力によって脳が頭蓋骨に強く打ちつけられ、内部の組織が破壊されて浮腫(むくみ)が生じたものです。打ちつけた部位に脳挫傷が起こるのが一般的ですが、打ちつけた部位とは反対側に脳挫傷が起こることもあります。多くは時間とともに出血が増え、壊死した部位がくっついて大きくなり、二次的に脳内血腫が起こります。
また、傷の周囲にむくみ(脳浮腫)が形成され、24~48時間後には明らかなものとなり、これが脳挫傷をさらに悪化させてしまいます。意識障害・嘔吐・運動麻痺・けいれん発作などの症状が現れ、治療してもさまざまな後遺症が残ることもあります。最悪の場合、死に至ることもある危険な疾患です。
脳挫傷が起こるほど強い外からの衝撃は、一般的には交通事故が多いです。事故の衝撃でダッシュボードやハンドルに強く頭をぶつけることで、頭蓋骨の中で脳が強く揺さぶられるため、脳挫傷が起こります。脳の組織が破壊されることを脳挫傷、出血した場合を脳挫傷性血腫と呼びます。
脳震盪(のうしんとう)も同じように脳が外からの力によって揺さぶられることで生じますが、脳の組織に損傷が起こるものではありませんので、意識障害や記憶障害が起こっても一時的なもので元に戻ります。しかし、脳挫傷では脳の組織そのものがダメージを受け、さらに出血や腫れによって壊死してしまうこともありますので、損傷した部分が回復することはありません。
脳挫傷の範囲や程度が非常に小さい場合、脳へのダメージはごくわずかでおさまり、症状がほとんど現れないか、ごく軽症の症状で済みます。しかし、挫傷が大きい場合、または挫傷そのものは小さくても出血や腫れがひどい場合には、重症の症状が出ることがあります。主な症状は次のとおりです。
脳挫傷による症状は、事故が起こって数時間以上経ってから明らかになってくることもあります。特に、脳挫傷性血腫による二次的な障害は後から徐々に増えてくることが多いです。その場合、事故の直後は元気でも数時間経って目を覚まさなくなったり、運動機能が麻痺したりします。さらに、脳の内部で腫れが大きくなると、脳ヘルニアという状態になってしまうことがあります。
脳ヘルニアとは、脳が腫れることで本来おさまっているべき位置から飛び出してしまう状態のことをいいます。特に、脳の下方向は隙間が多いので、下に向かってずれて飛び出すことが多いです。下に向かってずれてしまうと、脳幹(生命維持の中枢がある部位)を損傷してしまい、最悪の場合死に至ることもあります。
脳挫傷の治療で、損傷した部位を元の状態に戻すことはできません。そのため、手術では損傷部位を摘出し、さらに出現してくる脳浮腫や脳出血に対して治療を行います。脳が腫れて大きくなりすぎている場合は、頭蓋骨を大きく外して外減圧術という手術を行うか、脳を一部切除して体積を減らす内減圧術が必要になることもあります。
脳挫傷後は、損傷部位の範囲や程度によっては後遺症が残る可能性もあります。運動麻痺や失語症などが起こった場合、リハビリテーションが必要になることもあります。外傷性てんかんが生じた場合には、抗てんかん薬の服用が必要になることもあります。
脳挫傷の後遺症は損傷部位によっても範囲や程度によってもさまざまであり、ダメージを受けた部位は回復することができません。そのため、そもそも脳挫傷が起こらないよう、頭に強いダメージを受けないように予防することが大切です。
脳挫傷は、交通事故などで脳に大きな力が加わり、脳の組織が頭蓋骨に打ちつけられて起こります。出血やむくみが起こるとさらに、脳内血腫が発生してしまい、脳に重篤なダメージをきたすことがあります。
脳の組織はダメージを受けてしまうと、治療によっても回復することができません。そのため、手術によっても後遺症が残る可能性があります。脳挫傷は、起こる前に防ぐことが大切です。
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