胎児スクリーニング検査で陽性がでたとき

2017/4/10

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

妊娠初期に行うスクリーニング検査(超音波検査、血液検査)で陽性反応がでて自分を責めているかもしれません。しかし事前にリスクがわかったことで、対処の道がひらけたと考えるべきかもしれません。陽性がでたことについて少し考えてみます。

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羊水情報を知ればより安心できる

ほとんどの場合、出生前診断によって赤ちゃんがほぼ確実に正常に発達していることを知ることができます。それによって得られる安心感はすばらしいものです。

出生前診断で陽性の結果が出ても、赤ちゃんが何らかの症状を抱えていることが決定づけられるわけではないということを覚えておいてください(出生前診断では病気を診断することはできません。赤ちゃんが病気にかかる危険性を調べることができるだけです)。

検査を受ける決断は妊婦にゆだねられている

検査で陽性が出た場合、妊娠中の早い段階で特定の検査を受けるかどうかを医師に相談することが重要です。特定の検査は特定の時期に行われる必要があるためです。

これらには、まず遺伝子に関するカウンセラーと会うことや、絨毛検査(CVS)・羊水検査のような、遺伝子検査や病状を正確に診断する検査を選ぶかどうかなどの事柄が含まれています。

出生前診断によるメリットには大きいものがあります。妊娠中に検査を受けることで、医師は妊婦やその家族の病歴を掘り下げ、赤ちゃんに何らかの遺伝子異常のリスクがあるかどうか判断します。例えば、心臓疾患を持って生まれた母親は、先天性の心疾患を抱えた赤ちゃんが生まれてくるというリスクが標準より高くなっています。しかし赤ちゃんが生まれてくる前に治療できる場合もあります。

妊婦さんが検査の次のステップに進む決断をしたとき

必要な検査は通常、妊婦の病歴と年齢によって医師が決定することができます。例えば、両親が鎌状赤血形質の保因者である場合、鎌状赤血球症の赤ちゃんが生まれる可能性があります。

特定の出生前診断によって、赤ちゃんがその病気にかかっているか診断ができるため、赤ちゃんは生まれた瞬間から観察され、必要な治療を受けることができるようになります。

しかし、すべての出生前検査がすべての妊婦に必要だという訳ではありません。35歳以上である場合や家系に遺伝性疾患の病歴がある場合には、医者は数をしぼって検査を推奨する可能性があります。

これらの検査のどれかで陽性が出た場合、医師は、赤ちゃんの健康や発育に役に立つ可能性のある出産前後のサービスや医療処置などを理解する手助けをしてくれるでしょう。これによって、精神的にも金銭的にも事前の準備ができます。

遺伝子検査について

遺伝子の診断検査(CVSや羊水検査など)では胎盤や羊水から集めた細胞中の遺伝物質を分析します。このような検査はダウン症などの染色体異常を特定するという点においてはより正確です。羊水検査の場合には、「染色体異常」や「神経管奇形」の可能性を診断することができます。

35歳以上の場合や、以前に染色体疾患をもった子どもを生んだ場合、あるいは妊婦または配偶者が嚢胞性繊維症などの遺伝子疾患の保因者である場合などは、医師が特に検査を推奨する場合があります。最新の技術である、外科的処置を伴わない非侵襲的な出産前検査(NIPT)は、妊娠9週間程度で可能ですので、これを選択するか否かと、検査のリスクや利点について、医師と早期に話し合ってください。

おわりに:選択は自分で

家族にある病歴などが妊娠に影響することがあるとしたら、事前に検査で知っておきたいと考える選択も、検査をしないですべてを自然に任せるというという選択も正解といえるでしょう。

選択するのは自分なのです。検査が陽性になったとしても、引き受けるのもまた自分です。厳しいようですが、子どもをもつということはある意味大変なことです。

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