冬季うつの対策、病院に頼らずに予防&改善する方法は?

2019/1/24

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

冬になると、なんだか憂鬱な気持ちになってしまうことは少なくありません。しかし、あまりにもやる気が出ない、体がだるいといった場合は、「冬季うつ」という症状かもしれません。

病院に頼らず、日常生活にちょっとした工夫を取り入れることで冬季うつを予防・改善することもできます。この記事では、自宅で冬季うつを予防・改善する方法について、ご紹介します。

冬季うつの対策:①朝、日光を浴びる

「冬季うつ」とは、まだ病名がついて20数年という、新しい概念の疾患です。一般的なうつ病との違いは、症状が現れる時期が冬季に限定されていて、だいたい11月~12月ごろに始まり、3~4月ごろになると落ち着いてくるということです。もちろん、うつ病の一種なので、気分の落ち込みや焦燥感・倦怠感・集中力の低下など、うつ病によくある症状も現れます。

また、冬季うつは一般的なうつ病(男女比=1:2)よりもさらに男女差が顕著な病気で、男女比は約1:4と言われています。症状が一度でおさまることは少なく、毎年冬になると起こるというように周期的にうつ状態がやってくるのが特徴です。

一般的なうつ病との最も大きな違いは、過食や過眠が起こることです。もともと冬は他の季節と比べて気温が低く、朝になってもなかなか体温が上がりにくいため目が覚めにくく、そのため睡眠時間が長くなりがちなため、少し長い程度であれば気にする必要はありません。しかし、他の季節と比べて何時間も眠り続けたり、日中に生活に差し障るほど眠くなってしまうようであれば注意が必要です。

冬季うつを発症する明確な原因はわかっていませんが、冬は太陽が出ている時間が短く、日に当たる時間が短くなることが原因の一つではないかと考えられています。この仮説を裏づける事実として、冬季の日照時間が非常に短くなる北欧やアラスカなどの緯度の高い地域では、他の地域と比べて冬季うつの発症率が高いことがわかっています。

日照不足によってうつ病が発症しやすくなるのは、日光に当たるとセロトニンというホルモンの分泌量が増え、さらにその働きが強まることによると考えられます。つまり、逆に日光に当たらないとセロトニンの分泌量は減り、作用も弱まってしまうのです。

セロトニンとは
「幸せホルモン」とも呼ばれ、脳内の神経伝達物質のひとつです。ストレスによる脳の疲れを防いで精神を安定させたり、集中力を増進させるなど、人間の精神活動になくてはならないホルモンとも言えます。セロトニンが不足すると気分が不安定になったり、落ち込みやすくなったり、集中力が続かなくなったりしてしまいます

また、日光を浴びると「メラトニン」というホルモンも生成されます。メラトニンは日光を浴びてすぐに分泌されるホルモンではありませんが、朝日を浴びた14~16時間後に分泌されます。すると、自然と夜に眠くなり、規則正しい睡眠リズムを作ることができます。しかし、日中に浴びる日光の量が少ないと、夜になってもメラトニンがあまり分泌されず、睡眠が浅くなったりリズムが狂ってしまうのです。

セロトニンやメラトニンをしっかり分泌させるためには、朝日を積極的に浴びることが大切です。午前中に起き、起きてすぐに太陽の光をたっぷり浴びましょう。起きてすぐに日光を浴びながら30分程度のウォーキングを行うと、後述する適度な運動とも組み合わせられて一石二鳥です。

冬季うつの対策:②食事内容の工夫

セロトニンの不足を補うためには、ホルモンを産生するための食事も重要です。セロトニンの生成に必要な必須アミノ酸に「トリプトファン」という栄養素があります。そこで、トリプトファンを多く含む肉や魚、大豆などのタンパク質をしっかり摂取するようにしましょう。

また、腸の中にはたくさんの細菌がフローラという状態を作っていて、これらが作り出す酵素がトリプトファンの吸収に大きく関わっていることがわかっています。せっかくトリプトファンを含む食事を摂っても、腸内環境が悪く下痢や便秘などのトラブルがあると、うまく吸収することができません。そこで、腸内環境を整える食物繊維や乳酸菌を多く含む食べ物を摂取することも大切です。

食物繊維は野菜類や果物、きのこ、海藻類などに多く含まれています。乳酸菌はチーズやヨーグルト、漬物や味噌などの発酵食品に多く含まれています。これらの食事をバランスよく組み合わせ、トリプトファンを効率的に吸収できるようにしましょう。

冬季うつの対策:③適度な運動

セロトニンは、適度な運動によって増やすこともできます。適度な運動とは、散歩やウォーキングなどの軽い有酸素運動のことです。激しい筋力トレーニングやマラソンなどの体に大きな負担がかかるスポーツは、余計にストレスがかかりやすいため避けましょう。具体的には、日光の項目でもご紹介したとおり、朝日を浴びながら30分程度のウォーキングや散歩をするのがおすすめです。

朝にそれほど長く散歩の時間がとれない場合は、通勤や通学で外出する際にできるだけ歩く時間を確保するようにするだけでも効果があります。また、日ごろの運動不足で長時間歩けない場合も無理をせず、まずは短い時間から始め、徐々に時間を長くしていってください。

運動をするとセロトニンだけでなく、ドーパミンというホルモンが分泌されます。ドーパミンは交感神経という日中活動するための神経を活発にしてくれるホルモンで、だるさや気分の落ち込みを改善してくれます。運動そのものによって爽快感も得られますので、ぜひ積極的に軽い運動を取り入れてみましょう。

冬季うつの対策:④室内を明るくする

最後に、日光ではない光に当たることも効果的であることをご紹介します。たとえば、冬季うつの治療には「高照度光療法」という治療法が使われる場合があります。太陽光やそれと同等の光(一般的には2500ルクス以上)を浴びることで、体内時計を調節し、生活リズムを整えます。冬季うつだけでなく一般的なうつ病の治療法としても成果を上げている治療法です。

そこで、職場や自宅の照明を明るくするのがおすすめです。段階を調節できる照明であればできるだけ明るいものにしたり、いつも光の弱い照明を使っている場合は思い切って取り換えるのもよいでしょう。

おわりに:冬季うつは日常生活の工夫で改善できる!日光を浴びてセロトニンを増やそう

冬季うつは、日常生活にちょっとした工夫を取り入れたり、食生活や運動習慣を見直すことで改善することができます。診断されていなくても、なんとなく冬になると調子が悪い、という人はぜひこれらの対策を試してみましょう。

また、冬季うつだけでなく、うつ状態の改善にはセロトニンを増やすことが大切です。セロトニンの原料であるトリプトファンを摂取し、日光を浴びながら運動してセロトニンの分泌を増やしましょう。

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