記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
冬になると気分が落ち込んだり、睡眠時間や食欲が異様に増えてしまったりする「冬季うつ」。この冬季うつを発症する原因とは、一体何なのでしょうか。そしてどうやって治療をしていくのでしょうか。
冬季うつの特徴は、10~11月頃から抑うつや過眠、食欲の増加といった症状が現れ、3月頃から徐々に回復していくという点です。この時期的な特徴から「ウインターブルー」とも呼ばれますが、なぜ冬になるとこうした症状が現れるようになるのでしょうか。
秋冬は日照時間の短い時期ですが、実はこのことが冬季うつの発症に大きく関連していると考えられています。
日光を浴びて目から入った光刺激が脳の神経核(神経細胞が集まる場所)に到達すると、神経核では「セロトニン」という神経伝達物質を合成します。このセロトニンは、気分のコントロールや精神の安定に関わるとされる物質です。神経核はセロトニンの合成だけでなく、脳の全域に行き渡らせる役割も担っているのですが、光はこの活動を活性化させる作用があるといわれています。
つまり、日照時間が短いとその分日光を浴びる時間が減り、セロトニンの分泌量自体が減少するため、気分の落ち込みや不安感といったうつ症状が現れるのではないかと考えられます。
私たちが普段夜になると自然と眠くなるのは、「メラトニン」という睡眠ホルモンが脳から分泌されるからです。このメラトニンは日中には分泌されませんが、起床して朝日を浴びてから14~16時間ほど経った頃、つまり夕方以降に脳の松果体から分泌されるようになります。そして、日光を浴びれば浴びるほど、夜間のメラトニンの分泌量が増えることがわかっています。
つまり、日照時間の短くなる冬場は、日中に浴びる太陽光の量も必然的に少なくなるので、夜間のメラトニンの分泌量も減少します。そのために睡眠の質が低下し、寝ても寝足りないように感じてしまったり、日中も眠気がとれずスッキリしなかったり…という状態になると考えられています。
発症に日照時間が大きく関わる冬季うつでは、「光療法」という治療法が有効とされます。専用の高照度光照射装置を使い、2~3時間ほど2500~1万ルクスの照度で光を浴びるという治療法で、これによって6~7割の患者さんに症状の改善がみられます。
冬季うつの原因は諸説ありますが、日照時間の短さによってセロトニンやメラトニンの分泌量が減ったことで、落ち込みや過眠などの症状が現れる、という説が現在のところ有力です。「光療法」という光を浴びる治療法によって症状が改善する患者さんも少なくないので、お悩みの方は専門の外来を受診しましょう。
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