記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
コレステロールの数値を下げるために飲む薬がどんなものか、気になる方は多いと思います。この記事では、コレステロール値を下げる目的で処方される薬の種類を紹介します。また、コレステロールを下げる市販薬の有無についてもあわせて触れたいと思います。
血液中のコレステロール、中性脂肪が高い状態は高脂血症と呼ばれていましたが、現在は脂質異常症といいます。脂質異常症は、糖尿病や高血圧などと並んで動脈硬化を進行させ、心臓や脳の病気を引き起こすリスクがあります。
脂質異常症の治療方法のひとつに、薬を用いた治療があります。用いられる薬には、「HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)」「陰イオン交換樹脂製剤」「プロブコール」「小腸コレステロール輸送体阻害剤」の4種類があります。それぞれの薬の特徴については次のようになります。
コレステロールは、HMG-CoA還元酵素が働いて肝臓で合成されています。酵素は、化学反応を起こす際に仲立ちになる物質です。体の中の多くの化学反応は、さまざまな酵素が働いて行われています。HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)は、酵素の働きを阻害してコレステロールが合成できないようにする薬です。肝臓は、コレステロールが不足すると血液中から補充しようとするため、血液中のコレステロール値が下がります。
胆汁酸は肝臓でコレステロールを原料にしてつくられる黄色く透明な液体で、胆汁の主成分になっています。分泌された胆汁酸は小腸で再吸収され、再びコレステロールとして利用されています。陰イオン交換樹脂製剤は、胆汁酸と結びつくことで再吸収させずに体外への排出を促します。
血液中のコレステロールを肝臓に取り込むように作用します。また、LDLコレステロールは酸化すると血管壁に沈着します。プロブコールはLDLコレステロールの酸化を抑えるため、血管への沈着を抑制することにつながります。
小腸にたどり着いたコレステロールは、血液中に再吸収されます。小腸コレステロール輸送体阻害剤は再吸収を阻害して、血液中のコレステロールが増加しないようにします。
日本国内では、市販薬として抗コレステロール薬は販売されていません。ただし、コレステロールの値に良い影響があるとされる大豆油不けん化物や、ビタミンが配合された薬は市販されています。
大豆油不けん化物は大豆に由来する成分で、コレステロールの吸収を抑えて血液中のコレステロール量を低下させます。
また、ビタミンのうち、B2は糖質、脂質、タンパク質の代謝に、パンテチン(ビタミンの一種)は脂肪酸代謝に関わる補酵素を作ることに関わる成分で、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らすだけでなく、血管壁にコレステロールが付着することも防ぎます。
大豆油不けん化物やビタミンが配合された市販の薬として、次のようなものがあります。
第3類医薬品にあたり、ドラッグストアや薬局で購入することができます。主成分は大豆由来の大豆油不けん化物です。小腸でのコレステロールの吸収を妨げ、コレステロールの排泄をうながします。また、パンテチンとビタミンEも配合されています。血液中の高コレステロールを改善することが期待されます。
第3類医薬品にあたり、ドラッグストアや薬局で購入することができます。主成分は大豆から抽出した高活性レシチンで、血液中の高コレステロールを改善することが期待されます。
コレステロール値を下げる薬を服用し始めたら、ずっと服用しなければいけないか…と不安になるかもしれません。でも、コレステロールの値を下げるために、ただ薬を飲めばよいというわけではありません。大前提として、食生活や運動、睡眠などの生活習慣の見直しが必要です。もし、生活習慣を改善し、心臓や脳血管障害、糖尿病の既往がなく、血液検査の結果が良い状態が続くなど、医師がいくつかの条件を満たすと判断できれば、薬を飲まなくても良い可能性があります。
脂質異常症は、動脈硬化を進めて心臓や脳血管の病気など命にかかわる病気のリスクとなります。治療は、医師から処方される薬だけではなく、コレステロールに影響を与える成分を含んだ市販薬もあります。
しかし、治療は薬が中心ではなく、食事や運動といった生活習慣の見直しが基本です。体の状態が良くなれば、使用する薬が変わったり、薬が不要となる可能性もあります。医師と相談をしながら、自分の体と向き合っていきましょう。
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