大動脈解離に前兆になる症状はある?発症した場合の対処法は?

2019/2/11 記事改定日: 2020/7/28
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

大動脈解離は、人間の体でもっとも太い血管である大動脈が部分的に裂けてしまったことで発症する病気です。この病気を発症した場合、早急に適切な治療を受ける必要がありますが、病院へいく目安となる前兆の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。以下、解説したいと思います。

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大動脈解離とは

大動脈は人間の体内で最も太い血管で、内膜、中膜、外膜の三層構造をしており、酸素を多く含んだ動脈血を心臓から全身に送り出す役割をしています。

大動脈の疾患のひとつである大動脈解離は、大動脈壁が中膜のレベルで二層に剥離し,動脈走行に沿ってある長さを持ち二腔になった状態です。

大動脈解離を発症すると、大動脈から分かれる重要な動脈が圧迫されて閉塞し、重要臓器に血液が流れない状態が発生します。

大動脈の役割

大動脈は、分布する部位によってさまざまな役割があります。

冠動脈
心臓から出る上行大動脈の付け根から分岐していて、心臓の筋肉に血液を送る役割を担う
弓部大動脈
首に向かって延びる上行大動脈。頭部と両腕に血液を送る
下行大動脈
弓部大動脈から下肢に向かって伸びる動脈。胸部の臓器や背骨(胸椎)などに血液を送る役割がある
腹部大動脈
腹部に分布している大動脈。腹部の臓器や下肢に血液を供給する

大動脈解離になると出てくる症状は?

大動脈解離によってみられる代表的な症状は「突然の引き裂くような胸・背部痛」であり、多くの人がこの症状を経験するといわれています。

大動脈解離は、病状が進行するにつれて手足の血圧差、呼吸困難、ショック、一過性の麻痺、半身麻痺などといったように、発症からどんどん状態が変わっていきます。

しかし一方で、痛みがあらわれないこともあり、意識障害、下肢麻痺、微熱、全身倦怠感のみあらわれることもあります。

大動脈解離を発症する前に前兆はある?

大動脈解離は前兆ともいえる症状はほとんどありません毎日血圧測定をして細かく血圧を観察している人であっても大動脈解離を発症する1週間前まで血圧の値はいたって正常だったということもあります。

ただし、最初に亀裂が入った内膜の一部がはがれて移動し、ほかの動脈をふさぐことがあります。このような状態になった場合は、そこから先が虚血状態になるので、心臓発作や腎臓障害、手足の神経障害などさまざまな症状が起こることがあり、それが前兆としてとらえられる場合もあります。

大動脈解離になるとどんな治療が行われるの?

大動脈解離は、上行大動脈に解離があるスタンフォードA型と下行大動脈のみに解離があるスタンフォードB型に分類されます。

スタンフォードA型の場合、ほとんどが緊急手術の対象になります。一方、スタンフォードB型の場合は自然予後が良好であるため内科的治療が初期治療として選択されます。

手術は上行大動脈人工血管置換術を、体外循環(人工心肺)を用いて行います。緊急手術の成功率は、近年増加傾向となっています。

内科的治療は、内服薬で血圧をコントロールして血圧の上昇及び収縮期血圧と拡張期血圧に差が出ることを防ぐほか、運動制限など日常生活でなるべく安静で過ごすように指示されます。

しかし、破裂や臓器虚血などの続発症があり、持続する痛みがある場合は、スタンフォードB型であっても緊急手術の適応となります。

大動脈解離は予防できる?

大動脈解離の多くは動脈硬化によって引き起こされます。
動脈硬化は高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病によって生じる病気であるため、発症を防ぐには食事や運動、ストレス、睡眠などの生活習慣を整えることが大切です。
また、喫煙習慣は動脈硬化を加速させ、大動脈解離などの血管疾患の発症率を上昇させることがわかっています。今現在喫煙習慣がある人は、禁煙外来などを活用して禁煙を目指すようにしましょう。

そして、これらの生活習慣病や動脈硬化は、症状がないまま進行していくことも多いです。定期的に健康診断を受けて自身の身体の状態をチェックし、早期発見に努めましょう。

おわりに:大動脈解離の前兆はなし!発症したら救急要請を

大動脈解離は、まれに心臓発作や腎臓障害、手足の神経障害などの前兆がみられますが、基本的には前兆はない場合がほとんどです。

スタンフォードA型の場合は緊急手術をしなければ回復の見込みがないのに対し、スタンフォードB型の場合は内科的治療で改善が見込めるものの、状態によっては緊急手術の対象となります。そのため、上記の症状がみられたら、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

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