記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓の左心室から伸び、全身に新鮮な酸素と栄養を含んだ血液を贈る動脈のおおもとの血管となる大動脈。この血管内で異常や疾患が起こると、命にかかわるリスクがあります。今回は、大動脈内で重大な異常が起こる「大動脈解離(だいどうみゃくかいり)」について、病気の特徴や症状、原因、治療法などを解説していきます。
外側から外膜・中膜・内膜の3層構造から成る大動脈のうち、最も内側にある内膜に何らかの原因で裂け目ができ、中膜・外膜まで大動脈が裂けることを大動脈解離といいます。内膜の裂け目から流れ込んだ血液は中膜に達し、本来あるべきでない場所に新たな血液の通り道を作ってしまい、やがて腸軸方向に動脈を裂いてしまうのです。
ちなみに、中膜から血液が入り込んだまま溜まっていき、外膜1枚をのこして動脈の壁が膨らんでいく状態のことを大動脈瘤と言います。
心臓のすぐ近くで血管が裂けてしまうため、大動脈解離が起こるとまず、胸または背中に杭を差し込まれたような激痛が走るといわれています。人によってはこの段階で意識を失ったり、ショック状態に陥ることもありますが、さらに症状が進むと激痛が胸から腹部、足の方まで下向きに移動していきます。
また、血管が裂けた場所や病状の進行具合によっては、大動脈解離とともに以下のような他の臓器の異常・合併症を引き起こすケースも少なくありません。
時間とともに大動脈の裂け目がどんどん広がり、他の臓器に血液を贈る動脈の分岐点にまで達すると、血流不全が多臓器にわたり死に至る可能性もあります。
大動脈瘤解離が起こる原因は人それぞれで、原因不明のまま発症するケースもありますが、一般的には以下のような要因から発症すると考えられています。
特に、大動脈瘤解離を発症する人のうち、約70%は高血圧であるといわれており、高血圧が大動脈瘤解離発症に及ぼす影響は大きいのではないかと推測されています。
大動脈瘤解離を発症したら、まずは投薬で痛みを和らげると同時に、収縮期の血圧が100~120mmHg以下に保てるよう調整していきます。その間に、大動脈のどの部分で解離を起こしているのかを特定し、裂け目が及んでいる場所と大きさによって、以下いずれかの治療方針を選択します。
大動脈解離の手術は、一時的に心臓を止めて人工心肺に切り替える必要があるため、患者の体にかかる負担が大きくなりがちです。このため、可能であれば投薬や経過観察で治療していくのが望ましいですが、心臓近くの解離や、解離の進行が見られるようなら手術が必要になります。
投薬と経過観察を続けたり、手術を受けたりしても、大動脈瘤解離はいったん治療した後にも悪化する可能性の高い病気だといわれています。このため、治療を終えて病状が落ち着いた後も、以下のポイントに留意した定期的な検査や生活習慣の見直しは、生涯にわたって必要です。
なお、通院の頻度や生活における制限のレベルは、患者の状態や医師の見解によっても変わります。詳しくは、主治医に相談して疑問を解消しましょう。
杭が刺さったような激しい痛みが胸や背中に起こる大動脈解離は、大動脈が何らかの原因で避けてしまう病気です。放っておくと体内での出血や裂け目が広がり、最悪の場合は命を落とす危険性もあります。投薬や手術で治療できますが、治療後も定期的な通院と生活習慣の見直しは一生必要になることを理解しておきましょう。
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