血栓症の検査の方法は? D-ダイマーって?

2019/2/14

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

血栓症は、血管の中で血液が固まってしまい、血管の中を流れてどこかで栓のように詰まってしまう疾患のことを指します。血栓症かもしれないという疑いがあったとき、どのように検査をすれば良いのでしょうか?
また、血栓症の検査にはD-ダイマーというものが用いられるとよく聞きますが、D-ダイマーとはどのような検査なのでしょうか?

血栓症の疑いがあるとき、どんな検査をするの?

血栓症とは、何らかの原因で血管中に血のかたまり(血栓)ができ、これが血管に詰まってしまう疾患です。血栓が詰まってしまった部位よりも先には血液が届かなくなってしまうため、組織や臓器が正常に働かなくなったり、壊死してしまうこともあります。そのほか、部位によってさまざまな症状が引き起こされます。

血栓症の中でも有名なものに、エコノミークラス症候群があります。これは、飛行機の座席で長時間同じ姿勢をしていることにより、「深部静脈血栓症」という四肢の深い部分にある静脈で血流が滞って血液が固まる血栓症が原因です。できた血栓が血液の流れに乗って静脈の中を移動し、心臓から肺動脈へと移動して、そこで詰まると肺塞栓症という疾患を引き起こします。肺塞栓症によって呼吸困難に陥るとショック状態になることもあり、最悪の場合は心停止に至ることもあります。

このほかにも、動脈に血栓ができると動脈血栓症となり、心筋梗塞や脳梗塞の原因になりえます。予防には正しい食生活や運動、水分補給などで血液がドロドロになるのを防ぐこと、また、できるだけ血流をよくしておくことが重要です。また、血栓症の兆候があった場合は迅速に検査を行うことも、実際に血栓が詰まってしまう前の早期発見と治療のために大切です。

CTやMRI、超音波検査などによって血栓症の疑いがあると考えられた場合、確定診断には血管造影検査を行います。また、同時に「D-ダイマー」という、血栓が作られたり溶解したりすると作られる成分を測定するなどの血液検査も行います。

また、超音波検査や造影CTによって、深部静脈血栓症を直接的に診断することもあります。これらの検査では、どの部位にどのくらいの血栓が存在しているのかを評価します。造影CTでは、肺塞栓症を発症している場合は肺動脈の閉塞も同時に評価することができます。

さらに、肺塞栓症を診断するためには、肺換気血流シンチグラフィ(肺の換気能を検査する)、心電図、心エコーなども行われます。下肢に血栓症が現れやすいリスクのある患者さんでは、肺塞栓症そのものの疑いはなくても、手術前にそもそも血栓ができていないかどうかの確認をすることがあります。

血栓症の検査、具体的な方法は?

それでは、それぞれの検査項目について具体的に見ていきましょう。

D-ダイマー

D-ダイマーとは、「凝固線溶マーカー」と呼ばれる検出物のひとつです。凝固線溶マーカーとは、血栓が作られたときに血栓を溶解しようとする働き(線溶)によって血液中に出現する物質のことで、血栓を溶解しようという働きが体の中で促進されているかどうかを見るための成分です。つまり、血栓があるとD-ダイマーがどんどん増えるため、D-ダイマーが高い値であると血栓ができている可能性が高いと考えられるのです。

深部静脈血栓症や肺塞栓症の診断に有効な検査で、D-ダイマーの値が正常値であれば、これらの疾患を発症していないと考えられます。また、D-ダイマーは血栓症を発症した、つまり血栓ができた数日後にピークとなり、約1週間で正常値に戻ります。つまり、D-ダイマーが高い値を示していることは、数日前に体内で血栓ができたということを示しているのです。

また、D-ダイマーの値がどんどん下がり、正常値に近づいていれば、溶かすべき血栓が小さくなっていることもわかります。このことから、血栓溶解療法の際に正しく溶解できているかどうかの指標としても用いられます。

ただし、D-ダイマーは炎症や腫瘍、消化管や臓器の出血、リンパうっ滞などでも高い値を示すため、D-ダイマーが高い値だったからといって必ずしも深部静脈血栓症や肺塞栓症であるとは言い切れません。確定診断のためには、他の検査と合わせて診断する必要があります。

超音波検査

血栓症が疑われる場合、最初に行うのが最も非侵襲である超音波検査です。超音波検査は名前の通り、超音波で体内の様子を描画して画像診断によって病態を評価します。いわゆるエコー検査と呼ばれるもので、心エコー・頸動脈エコー・腹部・腎動脈エコー・下肢静脈エコー・上肢血管エコーなどがあります。

下肢静脈や腸骨静脈など、体の深部にある静脈は超音波が届きづらいため、描出しにくいこともあります。また、血栓がどこにあるかわからない場合、上半身に血栓の存在が疑われる場合などはCTなどの画像診断が必要になることもあります。

造影CT検査

血管内に造影剤を注入し、血管の形態や走行の様子、閉塞の状態などを確認します。1回の検査で深部静脈血栓症と肺塞栓症を一度に確認できるなど、機器の性能向上もあって非常に有用な検査です。

造影CT検査などの画像診断は検査を行うだけでなく、検査結果全体を通して血栓の部位や性状、血流の把握とその後の対策など、トータルケアを行うことができます。また、血栓が見つからなくてもそのリスクが高いと判断された場合は、予防について医師の指導を受けることもできます。

おわりに:血栓症の診断には画像診断と血液検査が行われる

血栓症の診断には、画像診断による血栓の状態の検査と、血液検査による「D-ダイマー」の値の評価などが行われます。D-ダイマーは数日の間に体内で血栓が作られた指標になるため、血栓の早期発見に有効ですが、確定診断には画像診断を組み合わせる必要があります。

血栓症は心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともある怖い疾患です。日頃から予防を心がけるとともに、血栓症が疑われる場合は早めに検査を行いましょう。

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