記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
多くの場合、誰もが感じる不安にははっきりとした理由があって、その理由があるときだけ不安が続きます。でも、理由はわからないけれどいつも何かに不安を感じ、その不安によって日常生活に支障をきたすことがあった場合、不安神経症の可能性があります。この記事では、不安神経症の症状や特徴を解説します。
不安神経症は全般性不安障害とも呼ばれる症状で、日常生活のなかで根拠のない不安や恐怖、心配な気持ちが過剰に付きまとい、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。心の障害のうちでもっとも頻度の高いもので、10代後半から40代までに発症することが多く、不安神経症をかかえる人は人口の10%ともいわれています。
不安神経症は、もともと神経質で不安を感じやすい性格の人に多く見られ、女性の方が男性よりも倍以上いることがわかっています。また、性格が内向的、理知的、過敏症的な性格、執着性が強い、感受性が強い、欲望が強いといった人がなりやすいともいわれています。
発症の原因はいまだに解明されておらず、心理的な要因、環境的な要因、遺伝的な要因、脳の機能的な要因が複雑に関与していると考えられていますが、心理的原因によって生じる心身の機能障害の総称として呼ばれることがほとんどです。
不安神経症の主な症状は、精神症状、身体症状、行動的症状の3つに分けられます。
根拠のない不安を慢性的に感じることで、以上のような症状を引き起こします。たとえば、外出先で事故や災害に遭ってしまうかもしれないと思ったり、健康であるにも関わらず、もしかしたら自分は病気なのではないかと考えたりするなど、心配事をいつも探し回ってしまうのがこの病気の特徴です。
不安神経症は、下記の基準を満たすことで診断されます。
生物学的に診断できる臨床検査は存在しないので、丁寧な問診を行ないながら診断をすすめていく必要があります。特に、うつ病では同様の症状があらわれることが多く、一時的にうつ病を合併することも珍しくありません。
うつ病では様々な心理面での変化や身体症状があらわれますが、なかでも代表的なものが、抑うつ気分、興味・楽しみの喪失、の2つです。この2つを代表したうつ病に関連した症状が2週間以上継続することで診断されますが、不安神経症とうつ病の厳密な鑑別が難しい場合もあります。また、何かしらの病気にかかっている可能性を除外するため、血液検査や尿検査を行なうこともあります。
不安神経症にはさまざまなタイプや症状がありますが、一人で悩まず、専門家に相談してみましょう。ただ、もし誰にも会いたくないと思ったり、出かけるのが億劫だと感じたり、いきなり医療機関を受診するのは気が引けるという方は、まずは保健所の精神保健相談員や精神保健センターを利用するのがおすすめです。
具体的な治療方法として、薬物療法と精神療法があります。
不安神経症は脳の働きと関連があり、神経伝達物質のセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンが関与していることがわかっています。そのため、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などの薬剤を併用して不安症状の軽減を目指します。抗不安薬のなかには長期的に使用した場合、精神的依存や眠気などの副作用を引き起こすものがあります。
物事に対しての考え方や捉え方を修正することで、それに基づく行動様式を正常に正す方法です。これは認知行動療法とも呼ばれ、続けることで自分自身の力で不安をコントロールできるようになります。
はっきりとした原因がわからず、いつも不安や恐怖などの感情が付きまとう場合は、不安神経症である可能性が高いです。
放っておくと日常生活に支障をきたし、心も体も健康でなくなってしまいます。
まずは誰かに相談して、一人で抱え込まないようにしましょう。