花粉症の治療で行われる、舌下免疫療法ってどんな薬を使うの?

2019/4/4

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

止まらない鼻水など、つらい花粉症の症状を抑えるために、さまざまな治療法が開発されてきました。しかし治療には「副作用が怖い」などの悩みも伴います。この記事では「舌下免疫療法」という治療法が持つメリットをデメリットを紹介します。

舌下免疫療法とは

舌下免疫療法(SLIT)はアレルゲン免疫療法のひとつで、口腔底(舌の裏または下)に治療抗原を投与して、アレルギー性の症状の改善を目指します。1980年代に海外で始まった治療法です。

従来は皮下免疫療法(SCIT)と呼ばれる治療法が一般的で、注射でアレルギー症状を抑えていました。ただ、皮下免疫療法にはアナフィラキシーショックなどの全身性副反応や通院の負担、注射の痛みというデメリットがありました。舌下免疫療法は皮下免疫療法のデメリットを解消する治療法で、全身性副反応の発生が比較的少なく、通院の頻度も皮下免疫療法より少なくて済む治療法です。

舌下免疫療法を行うケース

  • 抗原がスギ花粉またはダニである
  • 一般的な薬物療法では、症状の改善やQOLの向上が難しい
  • アレルギー性の症状の寛解を希望する

舌下免疫療法を受けられないケース

  • 重症の喘息がある
  • 妊娠している
  • 持病があり、薬の飲み合わせを考慮する必要がある
  • スギ花粉飛散時期である

舌下免疫療法の薬はどんなふうに働くの?

スギ花粉症は、スギの花粉がアレルギーを引き起こすアレルゲン(原因物質)となっています。花粉によるアレルギー反応が起こるのは、アレルゲンを体内から排除しようとして免疫が過剰に働いてしまうためです。

舌下免疫療法では、アレルゲンを少量ずつ体に投与して、体をアレルゲンに慣らしていきます。すると、実際にアレルゲンが体内に入ったとき、以下のような効果が期待できます。

  • 免疫がアレルゲンに過剰反応しない
  • 過剰な免疫反応を抑える細胞を増やす
  • アレルギー反応を抑える細胞を増やす

たとえばスギ花粉がアレルゲンの場合、スギ花粉エキスを含む製剤を少量ずつ投与し、徐々に投与量を増やしていきます。舌下免疫療法はスギ花粉の飛散時期がやってくる前に始めることが推奨されるため、花粉飛散の時期が近づいたら余裕を持って治療を受けることが大切です。

花粉症治療で使う舌下免疫療法の薬は?

花粉症治療で使用される舌下免疫療法の代表的な薬を紹介します。

シダトレンスギ花粉舌下液
液剤タイプで、1日1回投与します。指示された用量を舌の下に落としてから2分間保持し、飲みこみます。飲みこんでから5分間は、うがいや飲食を控えます。
飲み始めの2週間~維持期までは、下記の例のように用量が変則的であることに注意します。

  • 1週目:200JAU/mlボトル(増量期)
  • 2週目:2,000JAU/mlボトル(増量期)
  • 3週目以降:2,000JAU/mlパック(維持期)

初回は医師のもとで服用しますが、2回目以降は自宅での服用が可能で、保存方法は冷所保存です(2~8℃)。

シダキュアスギ花粉舌下錠
錠剤タイプで、1日1回投与します。指示された用量を舌の下に置いてから1分間保持し、飲みこみます。飲みこんでから5分間は、うがいや飲食を控えます。液剤タイプより効果が高いとされます。12歳未満の子供も服用可能です。
飲み始めの2週間~維持期までは、下記の例のように用量が変則的であることに注意します。

  • 1週目:2,000JAU
  • 2週目以降:5,000JAU(維持期)

初回は医師のもとで服用しますが、2回目以降は自宅での服用が可能で、保存方法は室温保存です。

舌下免疫療法の薬で気をつけたい副作用は?

薬の服薬で必ず注意したいのが副作用です。注射による皮下免疫療法と比べてアナフィラキシーショックは起こりにくいのですが、重篤な症状を引き起こす可能性は否定できません。ここで舌下免疫療法における副作用と、使用上の注意点を確認しておきましょう。

副作用

シダトレンスギ花粉舌下液
口の中の腫れ、舌下の腫れ、口内炎、喉のかゆみなど
シダキュアスギ花粉舌下錠
口の中の腫れやむくみ、口の中のかゆみ、喉周辺の刺激感や不快感など
気をつけたいアナフィラキシー反応
顔や喉の腫れ、全身に発生する赤み、蕁麻疹、血圧低下、顔面蒼白、呼吸困難、吐き気、動悸など

副作用は特に治療開始の1カ月間と、服薬直後の30分間にあらわれる可能性が高いといわれています。治療期間中に体に異常が発生したら、すぐに医師に相談してください。

おわりに:花粉の季節を乗り切るために、シーズン前から治療を始めるのもひとつの方法です

花粉症は完治することが難しい病気ですが、症状の寛解やQOL向上を目指すために、舌下免疫療法で本格的なシーズンに入る前から治療を始めることもできます。ご自身の体質やライフスタイルに合った薬を選ぶことをおすすめします。

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