副腎皮質ホルモンをアレルギー性鼻炎で使うのはどんなとき?

2019/5/10

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

花粉症など、アレルギーによる諸症状を抑える効果のある複数種の薬のうち、代表的なものの1つに「副腎皮質ホルモン」というものがあります。この記事では、アレルギー性鼻炎に副腎皮質ホルモンが処方されるケースについて、使用される薬のタイプや注意点について、解説していきます。

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副腎皮質ホルモンってどんな薬?

副腎皮質ホルモンとは、ステロイド剤と呼ばれることのある薬のことです。本来なら、人間の体内にある副腎皮質というところで作られるホルモンを人工的に作り出して薬にしたもので、以下の作用によりアレルギー症状を抑えます。

  • ヒスタミンという物質によって引き起こされた目や鼻、のどの粘膜の炎症を鎮める
  • 免疫機能を低下させ、過剰な免疫反応であるアレルギー反応そのものを抑える

副腎皮質ホルモンは、強力な抗炎症・抗アレルギー作用のある薬です。このため、アレルギー性鼻炎など炎症による症状を伴う疾患への治療の切り札となる薬として重宝されています。

アレルギー性鼻炎で処方される副腎皮質ホルモン薬の種類は?

アレルギー性鼻炎を治療するために処方される副腎皮質ホルモンには、経口で服用する内服薬と、鼻から噴霧して粘膜から吸収する点鼻薬の2種類があります。

内服薬タイプの副腎皮質ホルモン薬

錠剤など、水などで口から摂取するタイプの副腎皮質ホルモン薬です。アレルギー性鼻炎のなかでも鼻詰まりやのどのかゆみ、咳などの症状がひどい場合に処方されるのが特徴です。

ただし、長期間使用すると全身性の副作用を生じやすいため、処方・服用は原則として4~7日間の短期間のみに限定されます。

点鼻薬タイプの副腎皮質ホルモン

鼻に直接噴霧するタイプの副腎皮質ホルモンで、粉末剤と液剤の2種類あります。それぞれの特徴は以下の通りです。

粉末剤の特徴
  • 液だれしないので、液剤に比べて使いやすい
  • 防腐剤や保存剤を含んでいない
  • ニオイや噴霧感はほとんどしない
液剤の特徴
  • しっかりとした噴霧感がある
  • 液だれすることがあるため、使用時は注意が必要

いずれも鼻水や鼻づまり、くしゃみなど、アレルギー症状のなかでも特に鼻炎症状に効果があり、鼻粘膜内で炎症を起こす細胞に作用して症状を改善します。特に、鼻にアレルギー症状が強く現れているときに処方されることが多いです。

副作用が出る心配がほとんどなく、用法・用量を守って継続使用することで、より高い効果を得られるようになるのが点鼻薬タイプの大きな特徴と言えます。

内服薬の副腎皮質ホルモンを使うときの注意点は?

前述したように、副腎皮質ホルモンのうち内服薬を使う場合は、長期間使用することによる副作用に注意が必要です。副腎皮質ホルモンの内服薬の長期使用によって起こり得る副作用を以下にご紹介します。

感染症罹患リスクの上昇

副腎皮質ホルモンには免疫機能を抑える作用もあるため、長期間使用すると細菌やウイルス、真菌などによる感染症にかかりやすく、また、治りにくくなる可能性があります。

高血糖、高血圧、脂質異常症の発症

副腎皮質ホルモンにはインスリンの作用を抑え、血圧を少しずつ上昇させて脂肪を体に沈着させる作用があります。このため長期間使用すると高血糖や高血圧、脂質異常症が現れやすくなります。

骨粗鬆症、骨壊死症の発症

3カ月以上副腎皮質ホルモンを服用し続けると、骨の細胞が脆く壊れやすくなり、骨粗鬆症や骨壊死症を起こすリスクが高くなります。

食欲増進と、これによる肥満やムーンフェイス

副腎皮質ホルモンには、食欲を増進させる作用があります。このため、長期間服用すると意識的に食事や体重を管理していないと急激に太ったり、顔や首回り、肩、胴まわりに脂肪がついてしまいます。

胃や十二指腸の炎症、潰瘍などの消化器症状

副腎皮質ホルモンを長期間服用すると、胃・腸・十二指腸などの不調や炎症、潰瘍を発症・再発させる恐れが高くなります。

白内障や緑内障など、目の疾患の発症

副腎皮質ホルモンを長期間、大量に摂取し続けると、目の水晶体が曇る白内障や、眼圧で視神経が圧迫され視野が狭くなる緑内障になることがあります。

不眠や気分の落ち込みなど、精神症状の発症

副腎皮質ホルモンは、ホルモンの分泌量やバランスにも影響を及ぼします。このため、長期間服用すると寝つきが悪くなったり、一時的に気分が高揚、または落ち込むなどの精神症状が現れることがあります。

筋力の低下

副腎皮質ホルモンにはたんぱく異化作用があるため、長期間服用を続けると、筋肉の細胞成分が分解されて線維化し、著しく筋力が衰えることがあります。

その他の症状

副腎皮質ホルモンの長期服用によって起こり得るその他の副作用としては、にきびなどの肌荒れ、脱毛、体毛の増加、生理不順などが挙げられます。

ステロイド注射で花粉症がよくなるって聞いたけれど…。

一時期、1度の施術で花粉によるアレルギー性鼻炎の症状を抑えられるとして、ステロイド液剤を使った注射療法が流行しました。しかし、副腎皮質ホルモンの注射は、1度の施術で1カ月ちかく体内に薬剤が残るため、内服薬よりも副作用の発症・長期化のリスクの高い治療法です。

このため、現在では特別な事情がない限り積極的には行われていません。どうしても受けたい方は、リスクを含めて担当の医師に詳しく聞いてみましょう。

おわりに:アレルギー性鼻炎の症状がひどい場合は、副腎皮質ホルモンを使うことも

副腎皮質ホルモンは免疫機能に作用し、アレルギー反応を抑えるとともに、症状を引き起こしている粘膜の炎症も鎮めてくれる薬です。効き目が強いため、アレルギー性鼻炎など、炎症をによる疾患への切り札となる治療薬として知られています。大きく内服薬と点鼻薬の2種類があり、患者の症状にあわせて使い分けられています。ただし、内服薬の長期使用には重篤な副作用が現れるリスクがあるため注意が必要です。

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