記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2017/4/24 記事改定日: 2019/9/20
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠生活、とくに初めての妊娠では、体の変化で不安になることもあると思います。妊娠するとどんな変化が起きるとわかっていれば、不安を感じにくくなるのではないでしょうか。
この記事では、妊娠初期、中期、後期までがいつからいつまでで、どのような変化が起きるかをまとめました。
一般的に妊娠の時期は週数によって次のような3つの段階に分けられます。
なお、妊娠は最終月経開始日を「0週0日」とします。このため、月経開始から約2週間で排卵が生じ、受精、着床と順調に進んで妊娠が成立するのが「4週0日」、つまり妊娠が分かる5週目頃は既に妊娠2カ月に投入していることになります。
妊娠初期は身体的にも精神的にも様々な変化が起こり、体調を崩しやすくなります。
妊娠初期では、以下のような症状や心身の変化が現れます。
妊娠12週目あたりまで続く症状で、いわゆる「つわり」というものです。
つわりの症状は、特定のにおいに吐き気を感じたり、空腹時に吐き気を感じるなど個人差があります。
つわりの対策として、生姜の紅茶や飴などをこまめに口にすることや、つわりは空腹時に起きやすいといわれていますから、空腹の時間をなくすために頻繁に少量の食事をとるようにすると治まる人もいます。
吐き気がひどくて水分すら摂れないような状態では脱水症になる危険もありますから、かかりつけ医に相談しましょう。
出産後の授乳に備えて妊娠初期の頃から乳腺と乳管が発達します。このことが影響して、胸の張りやひりひりとした痛みを感じる人もいます。
胸は妊娠中に徐々に大きくなりますが、中には6週目くらいには数カップ大きくなる人もいるでしょう。
妊娠初期にはホルモンバランスの急激な変化が生じることで、気分の変動が激しく、自分の感情がコントロールできなくなることもあります。
気分の変動は妊娠中には誰でも経験するものですが、なかには深刻なうつ病を発症することもあります。
気分の落ち込みが激しく、夜眠れない、やる気が起きない、などの症状がある場合にはうつ病の可能性もありますので、かかりつけ医に相談しましょう。
他にも多くの症状が現れますが、胸焼け、便秘、味覚の変化、食事への嫌悪感、頭痛などがあげられます。
流産とは、妊娠しても赤ちゃんがお腹の中で順調に成長せず、妊娠が終了してしまうことをいいます。妊娠22週以前に妊娠が終了するものを流産と呼びますが、流産は全妊娠の2割程度で起こり、特に妊娠12週以前の流産が8割を占めています。
妊娠12週以前の流産は、多くは赤ちゃんの染色体異常などが原因となり、お母さん側に原因があることはほとんどありません。しかし、過度な運動やストレスは禁物です。無理をせずゆったりとした気持ちで過ごすことが大切です。
妊娠中期は初期、後期と比べて「楽な時期」だと感じることが多いようです。
この時期に突入すると、妊娠初期症状の多くが治まっていき、完全になくなる人もいます。
つわりに悩まされていた人もおいしい食事が楽しめるようになるため、体力も回復し、妊娠中の身体的・精神的な変化に体が慣れ、苦痛を感じなくなることもい多いです。
また、妊娠中期は徐々にお腹が大きくなり、腰痛などのマイナートラブルは生じやすいですが、赤ちゃんの成長を実感できる時期でもあります。
この時期は、胸焼けや便秘が初期から続く場合もあります。お腹が大きくなり始め、妊娠ホルモンも増加するのに伴い、以下のような症状が出るでしょう。
鼻の粘膜などの体中の粘膜が詰まるようになります。いびきをかくこともあるかもしれません。妊娠中に服用しても問題ない薬もいくつかありますから、症状がひどい場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
くるぶしや足の軽いむくみを経験する妊婦さんは多いです。このようなむくみは、22週ごろに始まり出産するまで続きます。
むくみを改善するには「なるべく体を動かす」ことが大切です。
座っているときも足を動かすようにしたり、長時間立ったままや座ったままでいないようにしましょう。また、ずっと同じ体勢で寝ないように心がけてください。
妊娠中期は歯茎が敏感になったり、血が出たりすることも珍しくありません。ただ、あまりに頻繁に出血する場合は歯肉炎の可能性がありますので、歯科医に診てもらいましょう。
歯肉炎は比較的軽い疾患ですが、治療せずに放っておくと深刻な症状を引き起こすことがありますので、早めに治療してください。
足のつりは妊娠中期からよく起きるようになり、妊娠後期まで続きます。
ホルモンバランスや体重の影響のほかにも、カルシウムやマグネシウム不足が原因になることがあります。
栄養バランスに気をつけて、健康的な生活を送りましょう。
赤ちゃんに血液を送り込んでいるため、低血圧が原因でめまいを起こすことがあります。必要以上に心配せず、一回の食事の量を減らしてこまめに食べるようにし、きちんと水分補給をしましょう。
子宮が大きくなることで、子宮を支える靭帯がのび、下腹部が痛むことがあります。
脚の静脈瘤や痔の症状が出ることがあります。妊娠前にそのような症状がなければ、通常は出産後に改善していきます。
このような変化は自然なことであり一時的なものです。
身体的な症状以外にも、不安やイライラ、忘れっぽくなる、おなかが大きくなることにフラストレーションを感じるなどの精神的な変化が出ることがあります。
妊娠すると定期的な健診を受けるために産婦人科に通院することになりますが、健診ではエコーで赤ちゃんや胎盤の様子などを観察する検査を行います。エコー検査は早期に赤ちゃんの異常や前置胎盤などを発見するために非常に重要な検査です。
エコー検査には経腟エコーと経腹エコーの二種類があり、経腟エコーは腟に棒状の機械を挿入して腟の中から子宮内を観察する検査です。一方、経腹エコーはお腹の上から子宮内を観察します。
経腹エコーは胎児が小さいと全体を把握することができず、妊娠12週以前の胎児の観察には経腟エコーを用いるのが一般的です。
多くの医療機関では、妊娠のごく初期は経腟エコーを行い、12週以降は経腹エコーを行います。しかし、切迫流産などの兆候を確認するために子宮頸管長を計測する場合には経腟エコーを行いますから、中期や後期でも経腟エコーを併用する場合もあります。
妊娠中期の数か月間は、体重が増えやすい時期です。
赤ちゃんの成長を助けるために、食欲が増す傾向にあります。妊娠初期につわりの影響で吐き気や食欲不振に苦しんでいたなら、食欲が復活するという表現が適切かもしれません。
妊娠が発覚したときに標準的な体重だった場合、妊娠中期は、1週間あたり0.5キロを目安に増やしていき、増加量を妊娠中期全体で5キロ以内に抑えるようにしましょう。
妊娠中期に入ると、その後の3か月間は比較的にスムーズな妊娠生活を送ることができます。
しかし、腟からの多量の出血、ひどい腹痛、高熱が出た場合などは、直ちにかかりつけ医に連絡してください。
妊娠24~28週ごろに発症する妊娠糖尿病の症状にも注意が必要です。異常な喉の渇きや、頻尿、ひどい疲労感、いびきなどが、主な症状です。
急な体重増加、顔や手のひどい腫れ、視界の変化などが起きたら、子癇前症の可能性がありますので、かかりつけ医に相談してください。
赤ちゃんがおなかの中で動き回っているために、胎動をたくさん感じるようになるでしょう。おなかもどんどん大きくなってきます。
妊娠後期には以下のような症状や心身の変化が現れるようになります。
子宮が大きくなるにつれ、子宮の下の方を支える円靭帯が延びるタイミングで、差し込むような痛みを感じることがあります。この痛みについては、無理をせずに様子を見ることしかできません。
この時期は体にかかる負担が大きくなり、疲れやすくなります。食事の回数を増やすなどしてよく食べ、よく体を動かし、よく眠りましょう。
妊娠の終わり頃になると、子宮が胃を圧迫するため、胃の中にあるものが上に押されます。そのため、胸焼けが続くことがあります。
ひどい場合は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーなどの妊娠中にも服用できる薬の処方について、かかりつけ医に相談しましょう。
体が出産の準備をしているために起こる反応で、本物の陣痛が来る前に不規則に来る子宮収縮のことです。
血液が余計に体内を循環することで、下半身に瘤ができることがあります。痔も、静脈瘤の一種です。出産後には消えることが多いでしょう。
妊娠中に皮膚が限界まで伸びるために、小さな亀裂が生じることでできる線です。
妊娠線は保湿ケアをすることで目立たなくなることがあります。
妊娠ホルモンであるリラキシンの影響で関節が緩み、おなかが大きくなることで体の重心が前にきて、腰が痛くなることがあります。
この影響で「体を動かしたくなくなる」妊婦さんも多いようです。
また、背中から脚にかけて差し込むような痛みを感じることがありますが、この場合は坐骨神経痛の可能性も考えられます。
くしゃみをすると、尿漏れをしてしまうこともあります。
予定日が近づくにつれて、出産に備えて身体的変化が生じますが、それによって様々な症状が現れることがあります。具体的には以下のようなものです。
妊娠36週ごろになると、赤ちゃんが骨盤に降りてくるため、腰に負担がかかり腰痛が起きやすくなるばかりでなく、足元が見えずらくなりますから、歩き方もよたよたした足取りになります。
ピンク色あるいは茶色がかった粘り気のある粘液が見られます。これは出産が近いことを意味しています。
また、粘液栓(子宮頸部にある粘液の塊、産徴の前に排出される)が出てくることがありますが、気づく人もいますし、気づかない人もいます。
前駆陣痛と異なり、本陣痛は、定期的な子宮収縮による痛みが生じ、徐々に強くなります。
本来は陣痛が始まり子宮の出口が全開してから破水しますが、陣痛が始まる前に起こることもあります。
満期であれば破水が先に起こっても大きな問題とはなりませんが、胎児が感染に弱くなるため入院が必要です。
妊娠後期の時点でも、腟からの激しい出血や、高熱が出たとき、下腹部に激しい痛みを感じたとき、急に体重が増えたとき、早期陣痛がきたときなど、すぐにかかりつけ医に連絡してください。
妊娠後期は、出産が近づいている時期です。赤ちゃんのためにも体調の変化に注意して、不安な時は、すぐ医師に相談しましょう。
妊娠初期は、慣れない体の変化に戸惑うでしょう。妊娠中の経過は人それぞれですが、妊娠中期になると、不快な症状も落ち着き、マタニティライフを楽しめるようになります。
まずは体調の変化に注意し、体をいたわることが大切です。
ただし、不安があるときは無理をしないで医師に相談するようにしましょう。