記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
出産してからずっと同じ方向を向いて寝ていた赤ちゃんが、ある日突然寝返り、立ち上がり、歩きはじめる・・・これは、赤ちゃんの成長を感じずにはいられませんよね。ヨチヨチ歩きの赤ちゃんが2歳になると、次第に上手に歩くようになります。歩くコツをつかんだ赤ちゃんは、次に登る、跳ぶ、走る、蹴るといった発展的な動作を習得していきます。ここでは、赤ちゃん(1、2歳児)の成長に伴う運動能力についてお話したいと思います。
赤ちゃんが動くコツをつかむためにはたくさんの遊び(=練習)が必要です。辛抱強く、そしてたくさん励ましてあげましょう。走ったり、跳んだりすることは見た目ほど簡単ではありません。活動的な遊びは、単に運動能力を身につけるだけではなく、生涯にわたる身体活動のために準備を整えるためだということを覚えておいてください。
技術的にみれば「登る」ことは、立ち上がることができるのと同じくらい早くできるようになります。ほとんどの赤ちゃんは「はいはい」ができるようになると傾斜のついた遊具をはいはいで登るようになります。2歳になれば小さなジャングルジムや家具の上によじ登るようになるでしょう。
跳ぶことは、バランス、強さ、そして勇気を必要とします。赤ちゃんは、自分の身体で何ができるかを自分で試すことで「跳ぶ」ことを覚えます。赤ちゃんが1歳ころになると、しきりに自分の体重を一方の足からもう一方の足へと移そうとしていることに気づくでしょう。これは、両足を地面から離す感覚を味わうための練習です。そしておそらく2歳になる頃には、階段のいちばん下から跳び降りることができるようになるでしょう。そして、さらに上に跳んだり、前や後ろに跳んだりする複雑な技術を身につけていきます。
中には早くも1歳を過ぎたあたりで走り始める赤ちゃんもいますが、ほとんどの赤ちゃんは1歳6カ月あたりで走ることができるようになります。
「蹴る」という動作は、赤ちゃんがおなかの中にいるとき、寝ているときでもやっていることかもしれません。とはいっても、1歳6カ月~2歳までは立ち上がって「ボールを蹴る」といった動作はできないでしょう。
赤ちゃんが自分の足で走り回ることを楽しむために、運動能力を高めて自信をもたせるためにできるヒントを以下に示します。
運動能力を高める一番の方法は、安全な場所をたくさん用意してあげることです。居間の空間をきれいにしておけば、思う存分踊ったり、転がったり、回ったり、飛んだりすることができるでしょう。
庭や公園で、思う存分飛跳ねさせてあげましょう。散歩にいくときは、ベビーカーに乗せるのではなく自分の足で歩いていけるようにしてあげましょう。
同じくらいの月齢のお友だちがいるといいでしょう。近くの公園、児童館はお友だちをつくる最適な場所です。同じように、お母さんも「ママ友」をみつけるいいチャンスです。
押したり引いたりする乗り物のおもちゃ、いろいろな大きさのボール、すべり台やブランコなどは、走ったり跳んだりするきっかけになるでしょう。
あなた自身がお手本を示したり、かんたんなことばで教えてあげましょう。「ここをつかむといいよ」「こうして…はいっ!」という感じでいっしょに遊べば、赤ちゃんもあなたも楽しめます。
遊んでもよい場所がどこかを教えてあげましょう。テーブルやカウンターなどの家具で遊ぶべきではないことを、繰り返し教えてあげましょう。
赤ちゃんは2歳近くになると、しきりによじ登っては離れたり、後ろに下がったりするでしょう。それは「跳ぶ」ことを覚えるいい機会です。手を握って段差の低い階段のいちばん下から「1、2、3、ジャンプ!」といっしょに跳んでみましょう。
カエルのように身をかがめて跳び上がるとき、腕をつかんであげましょう。カエルとびができるようになると、ゆくゆくは立ったままジャンプできるようになるでしょう。
カエルだけでなく、いろいろな動物のジャンプをまねしてみましょう。手を耳にして「ウサギ」、手を羽にして「ヒヨコ」、おなかにぬいぐるみなどをもって「カンガルー」など、いっしょにやってみましょう。
赤ちゃんがはじめて跳ぶときは、両手をもってささえてあげてください。うまく跳べるようになったら、片手、腰に手を添えてあげましょう。こうすることで、赤ちゃんはバランス感覚を身につけていくでしょう。
赤ちゃんは自分のペースで成長します。ですから、公園での遊びの競争に負けていたとしても気にする必要はありません。お母さんができることは、運動することに興味を示し始めた赤ちゃんをいっぱい外に連れ出し、いっしょに遊び、お友だちと遊ぶ楽しさを教えてあげることです。座って遊ぶのが好きならそれでもかまいませんが、赤ちゃんが動きたくなるようなおもちゃや運動するところをたくさんみせてあげましょう。赤ちゃんはいつでも、お母さんといっしょにいるのが大好きなのですから。