記事監修医師
工藤内科 副院長 工藤孝文先生のスマホ診療できるダイエット外来
工藤 孝文 先生
高齢になると、食欲や噛む力が低下して低栄養状態になったり、骨折や病気をきっかけに寝たきりになってしまう人は少なくありません。健康寿命を延ばすためには、毎日の食事で栄養をしっかり摂ることが重要です。寝たきりや低栄養を防ぐ、高齢者の食事のコツをご紹介します。
健康な人が老いていき、要介護状態や寝たきりになるまでの間には「フレイル」という段階があります。フレイルとは「健康と要介護の間の虚弱状態」のことで、心身の衰えや生活機能の低下、外出や人との交流の減少など、総合的な自立度の低下が特徴です。
高齢者がフレイルになる主な理由として、加齢に伴う身体機能の低下や外出頻度の減少による運動不足、そして食事の偏り(低栄養)が挙げられます。事実、厚生労働省が毎年行っている国民健康・栄養調査によると、70歳以上の高齢者のうち3〜4人に1人は低栄養のおそれがあることが明らかになっています。
栄養状態はあらゆる身体機能に影響します。低栄養が招くおもなリスクは、以下の通りです。
国内の70歳以上の高齢者約1000名を対象にした「栄養状態と認知機能の関連性」の調査によると、「鉄分、脂質、タンパク質の摂取量が低い高齢者は、摂取量の多い高齢者と比べて認知機能低下リスクが約2〜3倍になる」ことが判明しています(鉄分、脂質、タンパク質の摂取状況は、赤血球、HDL(善玉)コレステロール、アルブミンの血液検査数値から推計したものです)。
栄養補給の観点で、毎日10項目の食品(後述)を摂取することが重要とされていますが、「摂取項目の少ない高齢者は、毎日バランスのとれた食事をしている高齢者と比べ、およそ60%以上生活機能が低下している」ことが明らかになっています。
骨の材料となるカルシウムや、その吸収をサポートするビタミンDやビタミンKの摂取量が少ないと、骨密度が低下し、転倒した際に骨折するリスクが高まるとされています。骨折は、高齢者の寝たきりや要介護リスクを高める危険因子のひとつです。
国内の70歳以上の高齢者約1000名を対象に「BMIと寿命の関連性」を調査したところ、「BMIが低い高齢者はその他の高齢者(BMIが少し低い〜高い)と比べ、明らかに生存率が低下する」ことが判明しました。
高齢者の低栄養状態が続くと、認知機能や生活機能が低下し、命に関わる恐れもあります。そこで、毎日の食事でぜひ取り入れたいのが、以下にご紹介する「10食品」です。
高齢者が低栄養や寝たきりのリスクを防ぐには、筋肉や赤血球などの材料になる「タンパク質」の摂取が重要です。
日本の高齢者は和食中心の食生活であることが多いこともあり、肉や卵、油脂など洋食でよく使われる食品の摂取量が不足しがちです。特に、肉は体内のタンパク質を効率的に増やすのに優れた食品なので、積極的に取り入れるようにしましょう(過剰摂取はかえって病気のリスクを高める恐れがあります。かかりつけ医と相談し、適量の摂取に留めてください)。
高齢に伴う骨粗鬆症のリスクや、骨密度の低下を防ぐためには、骨の材料になる下記の食材を取り入れることも大切です。
高齢者の日々の食事では、タンパク質や骨を丈夫にする食材を取り入れることが重要です。オススメのレシピを2つご紹介します。
豚肉の脂っこさを、茄子やしそがうまく緩和してくれます。甘辛い味付けが特徴です。
豆腐を入れたたらこマヨネーズで、タンパク質、ビタミンB12、油脂を一気に摂取することができるお手軽料理です。
日本の70歳以上の高齢者・シニアは、3〜4人に1人が低栄養状態にあるといわれています。低栄養状態を放置していると心身の機能が衰え、骨折や病気などで寝たきりになるリスクが高まります。ご紹介した「10食品」を中心に、タンパク質を積極的に摂る食生活に変えていきましょう。