記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/8/15
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
近年は猛暑になる日も多く、日常的に脱水予防、熱中症予防の声掛けが行われています。脱水や熱中症の予防には経口補水液が良いといわれていますが、経口補水液とはどのような効果が期待でき、どのようなときに飲めばいいのでしょうか。
今回は、経口補水液の効果や使用目的、飲むタイミングやスポーツドリンクとの違いについて解説していきます。脱水予防、熱中症予防に役立ててください。
経口補水液は、元々はコレラによる脱水の治療である「経口補水療法」で使われていたものであり、消費者庁から病者用食品として指定されている飲料です。
医療設備が整っていないような、点滴治療が難しい発展途上国での治療に役立つとして注目を集め、近年では先進国の医療現場でも活用されています。
経口補水液には、脱水のときに多量に失われてしまう「水と電解質(カリウム、ナトリウムなどのミネラル成分)」と、浸透圧を調整してこれらの吸収を速くするために少量のブドウ糖が含まれています。
脱水は、夏の暑いときはもちろん、感染症で下痢や嘔吐が起こったとき、激しい運動で汗をたくさんかいたときに起こりやすいです。
また、水分は皮膚や粘膜から蒸発したり、吐く息とともに日常的に失われるので(不感蒸泄)、それほど汗をかいてないように見えても脱水が進んでいることがあります。
脱水は熱中症のリスクを著しく高め、重症化すると危険な状態に陥ることもあるので注意が必要です。脱水は適切なタイミングで水分と電解質を補給することで、ある程度防ぐことができるといわれています。
失われる水分が体重の2%までが軽度の脱水、3%〜9%が中等度の脱水であり、10%以上が重度の脱水になり大変危険な状態です。
脱水は、軽度うちに水分と電解質を補給することで早期回復が期待でき、重症化の予防につながります。
以下の症状や変化に気づいたときは、なるべく早く経口補水液を飲みましょう。
また、正式な医学的な診断名ではありませんが、はっきりとした症状や体の変化が見られない「かくれ脱水」という状態もあるので注意が必要です。かくれ脱水のサインに気づいたときも、早めに経口補水液を飲みましょう。
中等度の脱水症も経口補水液で回復できるとされていますが、中等度まで進むと自分で経口補水液を飲めない場合があります。自分で水分を補給できないときは、すぐに救急車を呼びましょう。また、意識の異常や性格の変化、呼吸の異常、高熱、痙攣、自分で起き上がれない、自分で歩けないなどの症状があるときも、緊急の処置が必要になりますので、救急車を呼びましょう。
経口補水液は、健康な状態であれば、脱水になっていないときに飲んでも健康に支障がないとされています。ただし、経口補水液を飲んでも健康状態が良くなるわけではありません。むしろ、健康で普通に食事を摂っている状態でたくさん飲みすぎてしまうと、食塩の摂り過ぎになってしまう可能性があります。
また、高血圧や腎臓病、糖尿病などの人は、経口補水液を飲むと病状が悪化する場合があります。持病のある人は、医師の指導・管理のもとで飲むようにしてください。
経口補水液とスポーツドリンクは大きな違いは「塩分と糖分の量」であり、それぞれ以下のような特徴があります。
スポーツドリンクは、あくまでも脱水の予防のために飲むものであり、ある程度進行してしまった脱水はスポーツドリンクでは改善できません。かくれ脱水のような軽度の脱水であれば回復できる場合もありますが、がぶ飲みしてしまうと糖分の摂りすぎで血糖値が上がってしまうので注意しましょう。
また、どちらも塩分やカリウム、糖分を含みますので、高血圧や腎臓病、糖尿病の人や、それらの病気のリスクが高いと指摘された人は、飲み方について事前に医師に確認をとりましょう。
ミルクを飲めるようなら、乳幼児に経口補水液を飲ませても問題ないとされています。
年齢・学年別の1日当たりの摂取量目安は、以下の通りです。
小学生以上は、成人でも高齢者でも1日当たりの摂取目安量は同じ500~1000mlです。
子供は、突然発熱したり、下痢や嘔吐をしたりしますので脱水を起こしやすいです。また、高齢者・シニアも暑さや乾燥を自覚しにくく、トイレの回数を減らそうと水分補給を怠る人も多いので油断はできません。
体調を崩す時期や時間帯によっては、すぐに病院に連れていけない可能性もありますから、子供や高齢者のいる家庭では経口補水液を常備しておくことをおすすめします。
なお経口補水液は、一気に飲むと胃腸を刺激し下痢や嘔吐を誘発することがあります。回数を分けて少しずつ、ひと口ずつ噛むようにしてゆっくり飲ませてあげてください。
経口補水液は、家庭にある材料で手作りすることもできます。
作り方を紹介しますが、手作りの経口補水液はカリウムをほとんど含んでいないので、市販の経口補水液とまったく同じ効果は期待できないでしょう。
また、手作りのものは腐敗しやすく、分量を間違えてしまうと望んだ効果が得られない場合もあります。手作りの経口補水液は、あくまでも「予防」のための使用に留め、作った当日に飲み切るようにしましょう。
※分量は必ず正確に計ってください。
経口補水液は、体内の細胞と同じ浸透圧に調整されているので、脱水で失われた水分や電解質をすばやく補給できます。スポーツドリンクは経口補水液よりも胃に負担はかかりませんが、経口補水液よりも吸収が遅く、ある程度進行した脱水の回復はできません。
経口補水液は脱水の予防と回復、スポーツドリンクは予防が目的という違いがありますので、生活スタイルにあわせて買い揃える量を調整しましょう。