記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/2/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脱水症は汗をかきやすい夏に起こりやすいですが、冬や春先に起こることもあります。冬から春先の脱水症は自覚がないまま進行する場合もあり、命に危険が及ぶこともあるため予防対策が大切です。
この記事では、脱水症の症状と原因、予防対策について解説します。
脱水症とは、何らかの原因で体液が減り、水分と電解質が不足した状態になることです。体液には、酸素と栄養を運搬する、老廃物(尿や汗など)を体外へ排出する、発汗して体温を調整するなどの役割を持っています。脱水症になると、体液が減少することで役割を果たせなくなり、必要な栄養素が運搬されず、老廃物もどんどん蓄積していき、体温調整がうまくいかなくなり、以下のような症状を引き起こします。
脱水症になりやすいのは、暑さが厳しくなり発汗量が増える夏です。しかし、汗をあまりかかない冬から春先も、脱水症になることがあります。冬から春先は夏に比べてのどの渇きなどの症状を自覚しにくく、対応が遅れやすいので注意が必要です。
夏の脱水症は暑さによる大量発汗がおもな原因であり熱中症を引き起こす原因にもなりますが、冬から春先の脱水症は原因が少し違います。冬から春先の脱水症の原因は、大きく「空気の乾燥と水分補給不足」によるものと「ウイルス感染」によるものに分類できます。
冬から春先はもともと空気が乾燥しています。室内では暖房を使用することが多いため、空気はさらに乾燥します。空気が乾燥した状態では、皮膚や粘膜、呼気から水分が蒸発していく「不感蒸泄」が起こりやすいです。
体格や室温など条件によって違ってきますが、不感蒸泄で失われる水分量は、健康な大人の安静時で1日700ミリリットル〜1リットル程度といわれています。排尿や排便で1日1リットル〜1.5リットル程度の水分が失われるため、1日に2リットル程度の水分が失われることになります。冬から春先は、のどが渇きにくく汗をあまりかかないため、水分摂取量や摂取回数が少なくなりやすいです。のどが渇いていなくても水分は失われていきますので、こまめに水分補給しなければ脱水症を引き起こしやすくなります。
冬から春先は、ノロウイルスやインフルエンザウイルスによる感染症が流行しやすく、どちらも下痢や嘔吐の症状を引き起こすことがあります。下痢や嘔吐をすると、体液を大量に失うことになります。ノロウイルスによる感染性胃腸炎では、激しい下痢や嘔吐が起こりやすいためとくに注意が必要です。
下痢や嘔吐の際は、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も大量に失います。下痢や嘔吐をした後は水分を補給する必要がありますが、水分だけを大量に補給すると低張性脱水という電解質が不足することで起こる脱水を助長させてしまう結果になるので注意しましょう。下痢や嘔吐の際には、水分とあわせて電解質も補給する必要があります。
冬から春先の脱水症を予防するには、空気の乾燥に注意し、十分な量の水分をこまめに補給することが大切です。また、日差しが強い日は寒くても不感蒸泄が起こりやすいので、日よけ対策をしましょう。
脱水症の症状に気づいたときは、一度にたくさんの水分を補給するのではなく、時間をかけて少しずつ補給することが大切です。電解質が失われている可能性もありますので、経口補水液を補給しましょう。経口補水液がないときは、水1リットルに砂糖40グラムと塩30グラムを溶かしたもので代用できます。ただし、手作りの経口補水液は作りおきができないので、もしものときのために市販品の経口補水液を備えておくことをおすすめします。経口補水液も時間をかけて少しずつ飲むようにしてください。
脱水症のリスクが高くなるのは夏ですが、不感蒸泄が増えやすく水分摂取量が少なくなりやすい「冬から春先」にも注意が必要です。この時期は意識して水分を補給することが大切ですので、のどが渇いていなくても2時間おきにこまめに水分補給をしましょう。唇や皮膚の乾燥、だるさ、集中力の低下は脱水症のサインの可能性がありますので、すぐに水分と電解質を補給してください。また、インフルエンザ、ノロウイルスなどの感染症対策も大切です。手洗い、消毒、こまめな換気を行い、もしものときのために経口補水液を備えておきましょう。