子供の見えにくい障害~不安障害と注意欠陥多動性障害(ADHD)について

2017/6/15 記事改定日: 2018/3/16
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

子供の障害は、生まれてすぐに気づかれることもあれば、誰にも気づかれずに成長し、社会に出てから様々な問題を生じることもあります。
ここでは、本人すら障害と気づかないことが多い「注意欠陥多動性障害(ADHD)」と「不安障害」について詳しくお伝えします。

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子供の注意欠陥多動性障害(ADHD)とは

子供は誰でも落ち着いて物事に集中するのが難しいものですが、障害のために静かに座っていることや一つのことに集中するのが病的に不可能なことがあります。特に小学校に入学して、授業中に座っていられず出歩いてしまう、などの問題行動が起こり気づかれることが多いです。しかし、このような行動はこれまで「個性」と捉えられることが多く、しつけや本人の性格の問題と思われがちでしたが、今ではADHDという発達障害の一種としての認識が広まりつつあります。

ADHDは子供がじっとしていられずに常に動いている多動と、集中力を欠いたりする行動障害が生じる病気です。ADHDの子供は物事を深く考える前にすぐに行動を起こすことが多く、与えられた作業や指示を頭では理解しているものの、気が散りやすく、指示に従うことが困難な状態となります。 ADHDは女子より男子の方が3倍近く生じやすいといわれています。

ADHDのほとんどは3~6歳に発症し、幼稚園や小学校が始まるまでADHDであると気づかれないといわれています。保護者が生まれた時から子供をみてきたとはいえ、家庭内で保護者といる分には大きな問題はありませんが、幼稚園や学校などの集団生活の中に身をおくことで、ADHDの症状が顕著になり、集団生活に大きな問題を抱えるのです。

こんな特徴があるときは注意しよう

子供があまりに活発過ぎて、クラスメイトから置いてきぼりになっていませんか?
子供の言動に問題があると幼稚園の先生に何度も注意されたことはありませんか?
決められた席に座るなどパターン化された行動を、ひどく嫌がることはありませんか?
こんな状況は、その子供がADHDであることを発見する手がかりになるでしょう。

もし、子供が学校生活に問題を抱えていて、家にいるときや友だちといるときには普通にふるまっているならば、その子供はADHDとはまた違った障害に苦しんでいる可能性があります。学習障害、自閉症、不安障害などの精神疾患は似たような症状(集中できないなど)がみられるので、医師からの正確な診断を受けることが重要になってきます。

子供の不安障害について

子供は、いつも常に新しいものに触れることが多いため、様々なことに不安を抱えるのはごく自然の反応です。会ったことがない親戚に会うとき、新しい先生に会うとき、新居に引っ越したときなど、不安になることは通常の反応といえます。しかし、ときには子供の不安感が病的なほど強く、体調不良を生じることもあり、治療の対象となることがあります。

一定の不安を抱くのは良いことでもあります。適度な緊張感は危険な行動の抑制になるでしょう。しかし、不安な思いを抱いてばかりいると、日常生活を妨げ、子供の情緒面の成長に悪影響を及ぼす可能性もあります。このような状態を不安障害といいます。

正常な緊張と不安障害との違い

不安は誰でも感じるものですが、常に不安感がいっぱいで日常生活に問題を起こしている状態は障害の一種と考えられます。不安障害とはみなさんが思っているよりも一般的なもので、幼稚園児の年齢の子供の10%程度、高校生では15%程度にまで増えているといわれています。

小さな子供は成長するにつれ周囲の環境を認識していき、想像力も膨らむため、不安が高まるものです。例えば、2歳から7歳の年齢では、一時的ですが、怪獣がベッドの下にいるのではないかと、突然の不安を感じることがよくあります。多くの子供は、初めて人に預けられた日や、学校に通う初日に分離不安を経験します。しかし、同年代の子供よりも強い不安を感じていたり、常に不安を感じていたりする場合は、不安障害の可能性があります。

子供に、不安障害の疑いがあれば、早めに医師に相談することが重要です。治療しないままでは、不安障害は、学習障害やうつ病、その他の精神的な問題につながる可能性もあります。不安障害は、精神疾患の中では最も治療がしやすい病気であると言われています。早めに治療することがより効果を生むでしょう。

ADHDや不安障害は遺伝する?

ADHDが生じる原因は正確には解明されていませんが、脳に障害があることと環境によるものとの考え方があります。特に脳の中の物事を考えたり、気持ちをコントロールする前頭葉と呼ばれる部位の働きが正常な人よりも悪いことが指摘されています。
この前頭葉の機能異常は遺伝する可能性もありますが、ADHDは脳の機能異常と環境要因が様々に重なり合って発症すると考えられており、親がADHDだからといって子供もADHDになるとは限りません。また、不安障害も遺伝すると考えられていますが、環境的な問題も大きく、必ずしも遺伝するとは言い切れないものです。

しかし、近い血族にADHDや不安障害の人がいる場合には子供の行動や情緒に注意して、障害が疑われる場合には早期に適切な医療機関を受診して治療を進めていくことが大切です。

ADHDと不安障害の治療法

子供のADHDの治療法

ADHDの治療には、薬を使う治療とカウンセリングなどのリハビリ治療があります。どちらか一つではなく、両方を並行して行うことでより高い治療効果が期待できます。

薬物治療では、前頭葉の機能を活性化するために神経伝達物質であるドーパミンを増やす作用のある薬が使用されます。ストラテラと呼ばれる薬が使われますが、直接脳の神経に作用するものではないので、依存性は低いと考えられています。

またリハビリ治療では、行動療法と心理療法が代表的です。行動療法では、横断歩道の渡り方や信号の見方など、社会生活の上で必要となる善悪の判断を行う訓練を行い、心理療法では自分に自信を持たせ、社会生活や他者との交流を円滑に行えるように導く効果が期待されます。

子供の不安障害の治療法

不安障害は薬で改善することが多いです。薬は主に抗うつ薬や抗不安薬が併用されますが、抗うつ薬は幸せホルモンとも呼ばれる脳内物質のセロトニンを補充します。即効性はありませんが、抗不安薬が依存性が高いのに比べ、抗うつ薬は依存性や耐性が低いですから長期の治療に適しています。

おわりに:子供が障害かもと不安に思ったら相談を

今まで見てきた障害は、記事の中でもお伝えしているように、思ったより多くの子供に当てはまります。この記事を読んで、不安に思ったなら、医師に相談するか、地域の相談センターなどに連絡することをおすすめします。

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