記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
顔や腕、胸や背中などにぷくっと膨れた赤いデキモノがあるなら、皮膚膿瘍(のうよう)かもしれません。
この記事では、皮膚膿瘍の原因と予防法について解説していきます。身近な肌トラブルのひとつなので、予防のために役立ててください。
皮膚膿瘍(のうよう)とは、皮膚の下に膿が溜まって痛みが出ている状態のことです。細菌感染が原因のことが多く、体のどこにでも発症します。
細菌が体内に入ると免疫システムは感染したところに白血球を送りますが、白血球が細菌を攻撃すると近くの組織が死滅して孔(あな)ができます。膿には体の死んだ組織や白血球および細菌の混合物が含まれていて、この孔に膿が詰まって膿瘍となります。
皮膚膿瘍は皮膚にできた傷や毛穴などから細菌が侵入して炎症を引き起こし、膿の塊を形成する病気のことです。
そのため、皮膚膿瘍はケガをした後などにできやすく、また外陰部では糞便の拭き残しなどが多い人は細菌が繁殖して皮膚膿瘍を起こしやすくなります。
しかし、皮膚に傷のある人すべてが皮膚膿瘍を発症するわけではありません。通常は免疫力の働きで細菌がキズや毛穴などから侵入しても炎症を引き起こすことはありませんが、重度な糖尿病や抗がん剤治療中など免疫力が低下する病気や治療を行っていると発症しやすくなります。また、重度な動脈硬化などによって血行が悪くなると、炎症を起こしやすくなると考えられています。
皮膚膿瘍を発症すると、炎症が生じた部分やその周辺に痛みや熱感、発赤を生じるようになります。そして、皮膚のなかにできた膿の塊が大きくなるとしこりのように触れるようになります。
さらに進行するとしこりを覆う皮膚がダメージを受けて徐々に薄くなっていき、最終的には穴が開いて膿が排出されるようになることも少なくありません。また、炎症が皮膚の下の皮下組織やリンパ節などに波及すると蜂窩織炎やリンパ節炎を引き起こし、発熱・悪寒・倦怠感などの症状が見られることもあります。
小さな皮膚膿瘍は治療しなくても自然になくなることも多いですが、大きさや炎症の状態によっては、穿刺や切開などで膿を出す処置が行われ、痛みが強いものについては痛み止めの薬が使われることもあります。
細菌感染が原因のものは抗生物質、真菌が原因であれば抗真菌薬が処方され、原因疾患がある場合は原因疾患の治療も同時に行われます。
皮膚膿瘍の多くは、小さな傷や毛根、汗腺などに細菌が侵入することで起こるので、以下の方法で予防しましょう。
また、皮膚膿瘍があるときは、他の家族にうつさないようにするために、念のためタオルの共用は避けましょう。
皮膚膿瘍の原因の多くは細菌感染です。皮膚にニキビなどのデキモノや傷があるときはなるべく触らないようにして、治りが遅いときは早めに皮膚科に相談してください。
また、普段から免疫が下がらないように生活習慣を見直し、皮膚の清潔を保つように心がけましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。