記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2017/1/31 記事改定日: 2020/1/30
記事改定回数:5回
デリケートゾーン(腟)の「ニオイが気になる」という女性の悩みを解決するために、腟洗浄器や腟のふき取りシートなどが販売されていますが、効果はあるのでしょうか。この記事では、腟洗浄のリスクと正しいデリケートゾーンのお手入れ方法について解説しています。
腟カンジダ(カンジダ腟炎)とは、腟の内部や周辺部にかゆみが起こる病気です。カンジダ真菌というカビの一種が異常に繁殖することで発症します。かゆみのほかにも、白くカッテージチーズ臭のするおりものが出たり、ヒリヒリ感やただれ、排尿痛などが起こることもあります。
カンジダ真菌は、腟内や皮膚などの体中に常に存在している日和見菌であり、健康な状態であれば通常は発症しません。しかし、過剰に腟洗浄することで、体に有益な細菌を減らしてしまうと、カンジダ真菌の数が増えてしまい発症する場合があるのです。
腟内には、腟を守るためにたくさんの細菌がいて、以下の働きを持っています。
有名な「乳酸菌」は腟のpHバランスを通常の低レベル(pH 4.5未満)に保ち、ほかの生物の増殖を防ぐ効果があります。この細菌のバランスが乱されると、感染症や炎症が起こるリスクが上がります。
また、腟のpHが上昇すると酸性度の低下に伴い、乳酸菌の質や量も低下し、細菌が過剰に増殖しやすくなり、細菌性腟炎や腟カンジタのような感染症のリスクが高まります。
腟から出る分泌物、いわゆるおりものには自浄作用があるので、「腟を清潔に保つ」という意味でいえば、実は腟洗浄器や腟ふき取りシートは必要ありません。
自然な月経周期の一環として、月経期間以外は、腟から澄んだ白いおりものが出ることがありますが、このようなおりものは必ずしも病気の兆候というわけではありません。おりものの性質や量の変化は月経周期や妊娠、閉経といったホルモン量の変化によるもので、必ずしも異常が原因なわけではありません。
おりものの性質と量は、月経周期を通して変化します。排卵期のおりものは、一般的に生の卵白のようにより厚くてねばねばしています。
なお、健康的なおりものには強い臭いや色はありません。濡れ方に不快感を感じることはあるかもしれませんが、腟の周りにはかゆみや痛みはないはずです。もし色の変化や匂い、かゆみが生じた場合は、感染症の可能性があるので、医師の診察を受けてください。
病院によっては、カンジダ腟炎の治療で腟洗浄を行うところもありますが、カンジダ腟炎の治療は抗真菌薬の治療が基本です。
腟洗浄を行う場合でも、一般的には抗真菌薬もあわせて使われます。
また、病院の腟洗浄とセルフケアで行う腟洗浄は、設備や衛生環境が全く違います。「腟カンジダかも・・・」と思ったときには、自分で腟洗浄する前に必ず病院を受診してください。
病院で行われる腟洗浄は、クスコと呼ばれる腟を開く器具を挿入して、人肌に温めた生理食塩水などで腟内を十分に洗い流します。場合によっては洗浄だけでなく、消毒を行う場合もあります。
しかし、腟洗浄は腟の自浄作用を持つ常在菌を洗い流してしまうこともあるため、過度に行うのはよくないとの意見もあります。
とくに腟カンジダなどの腟炎がある場合でも、腟錠を挿入すれば必ずしも腟洗浄が必要でないことも多いといわれています。診察した医師とよく相談して洗浄を続けるかを決めましょう。
デリケートゾーンは排泄物がたまりやすく、蒸れやすいので雑菌が繁殖して不快なにおいを発しやすくなります。また、清潔に保てない状態が続くと腟カンジダや細菌性腟炎などを発症してしまうこともあります。
このような理由から、デリケートゾーンは適切にお手入れをする必要があるのです。
デリケートゾーンは
ように洗っていくのがポイントです。上記のことがきちんとできていれば、腟内を洗う必要はありません。
外陰部には多くのひだがで複雑な構造をしていますが、汚れが溜まりやすいひだとひだの間をyさしく洗うようにしましょう。
膣カンジダは誰にでも発症する可能性があり、一度完治しても再発を繰り返しやすい病気です。発症や再発を防ぐためには日常生活の中で次のような対策を行っていきましょう。
腟洗浄は良い細菌を一緒に流してしまったり、性感染症を悪化させてしまったりする可能性があります。腟をきれいにするためにやっていたはずなのに、かえって腟の健康を損なってしまう可能性があります。
腟には自浄作用があるので、会陰をきれいに洗うだけでも問題ありません。もし腟から気になる匂いやおりものがある場合は、早めに病院を受診しましょう。