記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2017/2/9 記事改定日: 2018/11/19
記事改定回数:4回
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
心筋症は、心臓の筋肉にトラブルが生じる病気です。心筋症にはいくつかタイプがありますが、いずれも原因が不明であるか、遺伝によるものと考えられています。また、心臓の病気と聞くと中高年をイメージしがちですが、心筋症は子供や若い人でも発症する可能性があるのが大きな特徴です。ここでは主な心筋症の症状と特徴、診断、治療方法などについてご紹介します。
心筋症は心筋の壁が伸張し、厚くなったり、堅くなったりする心筋の疾患です。これは、末梢に血液を送り出す心臓のポンプ機能に影響を与えます。心筋症の一部は遺伝し、子供および若者にも見られます。
では、心筋症にはどういった種類のものがあるのでしょうか。それぞれの特徴をまとめました。
拡張型心筋症は、心臓の筋肉の壁が伸びて薄くなっているため収縮できず、全身に血液を送ることができない症状です。発症する原因はよく分かっていませんが、ウイルス感染(コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなど)や免疫異常が関係していると考えられています。
拡張型心筋症を発症すると、心不全のリスクが高くなります。心不全は、心臓がきちんと全身に十分な血液を送り込めない状態になり、息切れや極度の疲労、あるいは足首のむくみを引き起こすことが多いです。また、弁膜症、不整脈および血栓のリスクもあります。病気を発見できるように、定期的に医師の診察を受ける必要があります。
心筋細胞が拡大して、心室の壁が厚くなる症状です。壁が厚くなることによって心室のサイズが小さくなってしまうため、心臓から供給される血液量が増えなくなります。壁は適切に拡張できず、硬くなります。
肥大型心筋症を患っても、初期の間は健康な人と変わりない生活を送ることができます。中には自覚症状がなく、治療を受ける必要がない人もいます。しかし、だからといって病状が深刻ではないわけではありません。肥大型心筋症は、小児期および若いアスリートの突然死を招く原因として有名だからです。
また、心不全の症状を悪化させて不整脈(心房細動)をもたらしたり、心臓からの血流が減少または制限されたりすることがあります(閉塞性肥大型心筋症)。あるいは、僧帽弁(そうぼうべん)が逸脱し、血液が逆流する可能性があります。これらの心臓の変化は、めまい、胸痛、息切れ、および一時的な意識の喪失を引き起こす可能性があります。また、心内膜炎(心臓の内膜への感染)が発症するリスクも高くなります。
重度の肥大型心筋症の場合は、定期的に医師に診てもらう必要があります。医師は、患者にとって適切な運動のレベルと量、そして適切な生活習慣の送り方についてアドバイスします。
拘束型心筋症はまれに起こるもので、主に高齢者に多くみられる症状です。心腔の壁が硬化して硬くなり、収縮した後、膨らむことができなくなります。これは、心臓が膨らんだときに十分な血液が心臓に行き渡らないことを意味します。その結果、心臓からの血流が減少し、息切れ、疲労および足首のむくみといった心不全の症状や不整脈が出てしまう可能性があります。多くの場合原因は不明ですが、遺伝で発症することもあります。
ARVCは、1つまたは複数の遺伝子の突然変異(変化)によって引き起こされる珍しい遺伝性の病気です。これは若者や若年成人に影響を与える可能性があり、若いアスリートの突然死の原因となっています。また、長期にわたる激しい運動がARVCの症状を悪化させることがわかっています。このため医師の診察が必要です。
死別や大手術といった重大な感情的または肉体的ストレスを受けている人は、一時的に心臓に問題を抱えることがあります。心筋が突然弱くなったり、左心室が形を変えたりします。これらはホルモン、特にアドレナリンの急増によって引き起こされる可能性があります。
主な症状は、心臓発作と同様の胸痛や息切れです。もし、この症状が発症したら、必ず救急車を呼んでください。タコツボ心筋症は一時的な症状で、再発することはほとんどありません。
心筋症が疑われた場合、症状や疑われる心筋症の種類によって、下記のような様々な検査が行われます。
また被害型心筋症、(特発性)拡張型心筋症、拘束型心筋症は、いずれも国が指定する難病に該当します。医療機関で上記のどれかに診断された場合は、難病の申請をしてもらい、認められると医療費の補助を受けることができます。
心筋症を完治させる方法はありませんが、症状をコントロールことや、合併症を予防することが大切です。心筋症の種類によりますが、特別な薬物治療を必要とせずに生活できる人もいます。中には、生活習慣を意識することで症状の悪化を防げることもあります。
治療の詳細は、心筋症の種類や進行度、症状によって異なってきますので、主治医に確認してください。
例えば下記のような治療が行われます。
また一般的には、以下のようなことに気をつければ症状を改善できる可能性があります。
ただし、血圧をコントロールしたり、動悸を修正したり、余分な体液を取り除いたり、血栓を予防したりするために、投薬が必要になることもあります。
肥大型心筋症も拡張型心筋症も、軽症のときは症状がないことが多いです。そのような場合は、基本的には特別な治療を必要としません。特に肥大型心筋症の場合は、ずっと症状が全く出ないままの一もいます。
一方で動悸や失神(不整脈が原因)、呼吸苦や息切れ、足のむくみ(心不全が原因)などの症状がある場合は、上記の治療を必要とします。通院している医師に相談してみてください。
心筋症は無症状のケースもあれば、日常生活が困難なほど心機能が低下するケースまで様々あります。特に、正常な日常生活を送ることができず、常に医療や看護の必要がある人には障害年金や障害者手帳が交付されることがあります。
障害年金や障害者手帳には重症度に合わせていくつかのランクがあり、より重症度が高い人の方が交付される金額や支援を受けられるサービスが多くなります。自身がどの区分に当たるかは主治医の判断となります。しかし、いずれの場合でも治療や生活の負担を軽減するために、基準に当たてはまる人は医師と相談して、お住いの自治体に交付申請をするようにしましょう。
心筋症は突然死のリスクや、進行すると心不全になってしまう可能性がある病気です。一方で種類によっては、ずっと症状が出ない人もいます。心筋症が疑われた人も、まずは医師の診察や検査を受けて、しっかりとした診断を受けるようにしてください。
また急に症状があらわれたり、悪化したりした場合はすぐに医療機関に相談して、今後の治療について相談してみてください。
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