記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
喫煙が及ぼす健康被害に関して、人々の意識や関心が高まっています。
とくに受動喫煙の被害は、タバコを吸う人の周囲の人が受けるもの。喫煙者からすると、自分の家族や恋人、職場の同僚など、大切な人の健康を奪う可能性があるのです。
ここでは受動喫煙が体に及ぼす害について、具体的に解説していきます。
タバコ(あるいは手巻きタバコ、パイプ、葉巻)を吸うと、喫煙者が吐き出す煙だけでなく、タバコを吸い終わるまでに発生する副次的な煙も発生します。
これらは副流煙と呼ばれますが、そのほとんどを吸い込んでしまうのが、喫煙者の“近くにいる人”です。
友人や家族が副流煙を吸うときは(受動喫煙と呼んでいます)、不快なだけでなく、彼らの健康にも悪影響を及ぼしています。
定期的に副流煙を吸う人は、肺がんや心臓病といった、喫煙者と同じような病気を発症する可能性が高くなるのです。
副流煙は、4,000以上の刺激物、毒素、および発がん性物質を含む毒性の強い物質です。
ほとんどの副流煙は目に見えないので、どんなに注意していても周辺にいる人は有毒物質を吸いこんでしまいます。
副流煙は、タバコを吸い終えた後に窓を開けていても、吸ってから2~3時間空気中に残っています。たとえタバコを吸う部屋を1個所に絞っても、ほかの部屋に広がる可能性が残っているということです。つまり、窓やドアを開けたり、自宅の別室でタバコを吸っても周囲の人を守ることはできないことになります。
また、受動喫煙はとくに子供にとって危険性が高いとされています。愛する人を副流煙から守る最善の方法は、禁煙することです。少なくとも、自宅や車内を煙のない環境にするようにしましょう。
そして、受動喫煙にさらされた妊婦は早産の傾向があり、赤ちゃんは低出生体重児や乳幼児突然死のリスクが高くなるといわれています。
さらに、煙がたちこめる家に住む子供は、呼吸障害や喘息、アレルギー症状を発症する確率が高くなることも示唆されています。
受動喫煙から友人や家族を守る唯一の確実な方法は、タバコの煙がない環境を保つことです。そのためには完全に禁煙するのが一番の方法ではないでしょうか。禁煙する準備ができていない場合は、周囲の人からタバコの煙を遠ざけるよう努力し、屋内や車内で喫煙しないようにしてください。
これは自分が必ず守ることはもちろん、来訪者にも守ってもらうように頼みましょう。
受動喫煙がとりわけ子供にとって有害な理由は、子どもは気道や肺、免疫システムが十分に発達していないからです。
子供は受動喫煙で、以下のような症状にかかりやすくなるといわれています。
・喘息
・肺炎や気管支炎のような呼吸器感染症
・耳の感染症
・咳や風邪
自家用車の中は、窓を開けていたとしても副流煙が危険なレベルの濃度になりやすく、子供の健康に大きな影響を与えやすいです。車内で喫煙すると、ごく普通の煙たいパブの中にいるときより11倍も高い濃度の毒素を作り出すと推定されています。子供の受動喫煙には細心の注意を払いましょう。
受動喫煙の被害をなくす、もっとも確実な方法は、やはり禁煙です。
喫煙者にとってはもっともハードルの高い解決策になりますが、幸い、今は禁煙のためのツールや情報も豊富に出回っています。なにより周囲も応援してくれるでしょうから、喫煙者は一度、禁煙を考えてみてはいかがでしょうか?