記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
双極性障害は、極端な気分の変化を引き起こす精神疾患で、かつて躁うつ病とも呼ばれていました。双極性障害は、性別を問わずどんな人でも発症する可能性があります。今回ご紹介する双極性障害のチェックリストで症状のチェックをしてみましょう。
双極性障害を持つ人は、極端な相反する感情を持ち合わせています。片方の感情は非常に幸せで、エネルギーに満ちあふれ、自分は何でもできると思いがちになります。 このような感情のときは、休息をとることさえしたくない精神状態になることもあり、この感情を「躁」と呼びます。 もう一方の感情は、反対に非常に悲しく落ち込んでいる状態で、何もしたくないと思いがちになります。 この状態を「うつ」といいます。
双極性障害を抱えている人は、すぐに躁状態からうつ状態に、その後また躁状態に戻ってしまうなど、著しく感情が変化することがあります。 双極性障害の兆候は以下のとおりです。チェックしてみましょう。
<躁状態>
・寝なくても疲れずにバリバリ活動できる
・次から次へアイデアが浮かんでくる
・「自分は何でもできる」という全能感に溢れている
・落ち着かずソワソワする。集中できない
・ギャンブルや買い物などで多額のお金を浪費する
・知らない人とセックスに及んだ
・多弁になる
・イライラや怒りっぽいなど、興奮状態が続く
<うつ状態>
・以前楽しんでいたことに興味や喜びがなくなる
・理由もなく気分が落ち込む
・不安や焦りが強い
・感情が鈍くなる
・倦怠感
・自分に価値がないと感じたり、罪深さを感じる
・幻覚や妄想
・物事を思い出したり、集中したり、意思決定ができない
・食欲減退あるいは過食
・睡眠障害
・死や自殺を考える
双極性障害は、うつ病などの別の精神疾患との判別が難しく、発見や治療が遅れることも珍しくありません。また、患者さん本人も無自覚だったり、軽度の場合は周囲の人も気づかなかったりする場合もあるのですが、治療が遅れると症状が重くなり、自ら命を絶ってしまう恐れもあります。早期発見のために、診断基準となる症状を知っておきましょう。
双極性障害I型の場合は「躁病エピソード」と「抑うつエピソード」、II型の場合は「軽躁エピソード」と「抑うつエピソード」の各症状に該当することが診断基準となります。
1.気分や活力が異常に高揚し、開放的になり、怒りっぽくなった状態が、1週間以上ほぼ毎日続いている
2.以下の3つ以上に該当する
・注意散漫
・過大な自尊心(全能感)
・目標志向性の活動・精神運動焦燥:妄想的な考えに支配され、「何かをしなくては」と活動的になり焦っている様子
・非常に多弁になる
・たくさんのアイデアが浮かんでくる
・眠らなくても平気。眠りたいと思わない
・まずい結果に繋がる活動に夢中になる
3.社会生活に多大な支障をきたしている
4.何らかの物質によるものではない
1.気分や活力が異常に高揚し、開放的になり、怒りっぽくなった状態が、4日以上ほぼ毎日続いている
2.以下の3つ以上に該当する
・注意散漫
・過大な自尊心(全能感)
・目標志向性の活動・精神運動焦燥:妄想的な考えに支配され、「何かをしなくては」と活動的になり焦っている様子
・非常に多弁になる
・たくさんのアイデアが浮かんでくる
・眠らなくても平気。眠りたいと思わない
・まずい結果に繋がる活動に夢中になる
3.社会生活に支障をきたすほどではなく、入院が必要なほどではない
4.何らかの物質によるものではない
5.症状がないときとあるときで明らかな変化がある
6.変化が他者から観察できる
1.2週間以上にわたって、下記の5つ以上(最低1つは*に該当する)の症状が見られる
・抑うつ(*)
・興味や喜びの喪失(*)
・食欲の異常や体重の増減
・睡眠障害
・精神運動焦燥・停止
・疲労感や気力の低下
・罪責感、自分には価値がないと感じる
・思考力や集中力の低下
・希死念慮
2.明らかに苦痛を感じている、あるいは社会生活に支障が出ている
3.物質や病気によるものではない
双極性障害は、およそ100人に1人が発症すると言われる、珍しくない疾患です。20~30代の若い人に発症することが多く、40歳を超えてから発現・進行することがほとんど無いとされていますが、双極性障害と年齢は関係がないとされ、性別や生い立ち、過去の人生とは関係なく、双極性障害を患う可能性があると考えられています。 気分の移り変わりの周期は人によってまったく違います。たとえば、人生で数度しか経験せず、その期間外は落ち着いているという人もいれば、何度も気分の移り変わりが訪れる人もいます。
双極性障害は、脳の化学的不均衡によって引き起こされるケースがあり、それは時折親族内での遺伝がみられます。 双極性障害を持つ親がいる場合は、子供もそれを発症する可能性がより高くなります。
双極性障害は治療することができます。一般的には精神科で治療が行われますが、気分の変化をコントロールし、良い状態のままでいるために、総合的な治療が必要になる場合もあります。
双極性障害は気分の変化を抑える薬で治療を行います。気分安定薬は気分の高低を均等にするために使用され、 抗うつ薬は、うつの症状を軽減するのに役立ちます。また、必要に応じて医師の判断で他の薬を追加することがあります。 これらの医薬品はすぐには効きませんが、数週間後に気分の違いに気付き始めるでしょう。薬の服用は、必ず 医師の指示に従ってください。
カウンセリングを受けることで、ストレス、家族の心配、および人間関係の悩みから、抜け出すことができる場合もあります。
双極性障害の場合は、とくにカウンセリングが重要です。双極性障害を持つ人々の中には、治療を希望しない人もいるので、自分の障害が自分や周囲の人々の生活にどのくらいの影響を与えているかを認識していないことも多いです。また、躁状態の自分は非常に生産的で強力であると感じていることが多く、いつもそのような状態でいたいと思いがちになる傾向があります。
双極性障害は、早期発見をし適切な治療を行うことが重要とされています。ご紹介したチェック項目で該当するところが多ければ、精神科などの専門外来を受診しましょう。なお、双極性障害は本人の自覚がないことも多々あるので、周囲の人が気づいてあげることも大切です。