記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
不眠症は最もよく見られる睡眠障害です。眠れない、目が覚めるなど、症状はさまざまです。今回は不眠症にはどのような症状があり、それによりどのような問題が起こるのか解説します。
不眠症とは睡眠障害のひとつです。寝られない、あるいは十分な睡眠がとれない障害であり、寝付けなかったり、寝ている途中で目が覚めたり、睡眠時間がいつもより少なくなったり、夜通し眠れないなどの症状が表れます。不眠症は、本質的には病気というよりは症状という方が適切です。眠れない根本的な原因がはっきりしている場合もありますが、一次性不眠症のように精神的な問題や生活習慣から起こる不眠症の場合は、なかなか原因が見つからないことも多いです。不眠症患者は元気が出なかったり、記憶力や集中力に問題を抱えるようになり、具合が悪くなったり、眠気を感じたり、いらいらしやすくなる場合もあります。
不眠症には主に4種類あり、その種類は以下のとおりです。
一過性不眠症は1日から数週間にわたって続き、あまり頻繁ではなくときどき経験するタイプの不眠症です。ほとんどの人は、時差ぼけや短期的な不安など、生活の中のさまざまな要素によって一過性不眠症になります。一過性不眠症が毎晩ではないものの、より頻繁に起こり続けるようになった場合には、その不眠症は断続的なものとして分類されます。
急性不眠症は、3週間から6ヶ月の間、絶えず常に眠れない状態のことをいいます。ストレスや不安などの心理的問題が、急性の不眠症の主な原因といわれています。
慢性不眠症は長期的な不眠症で、1カ月以上ほぼ毎晩眠れない状態のことをいいます。
致死性家族性不眠症(Fatal Familial Insomnia: FFI)は、滅多に見られない脳の遺伝性疾患です。FFIの原因である優性遺伝子は、世界でたった28の家系でしか発見されていません。片方の親だけがその遺伝子を持っている場合、その子供がその遺伝子を受け継ぎます。この場合、この不眠症になる確率は50%です。この病気が完全な不眠に進行していくことは治療不可能であり、最終的に死に至ります。
不眠症によって引き起こされる日中の問題としては、不安、苛立ち、疲労感、集中力の欠如、記憶力の低下、協調運動障害、社会的相互関係の障害、睡眠不足で疲れている運転手による自動車事故などがあります。不眠症の症状を以下にまとめました。
・眠りにつくこと、眠ったままでいることができない
・あまりにも早く目が覚めてしまう
・目が覚めても疲労感があり、眠いと感じる
・不眠症患者は日中の眠気に悩まされることもあります
・忘れっぽくなり、集中することができない
・重度の不眠症の場合、疲労やうつ、不安や苛立ちを感じる
不眠の理由が何であれ、不眠症は人に精神的、身体的影響を及ぼします。その影響は時間が経つにつれて増大していく可能性があります。慢性的な不眠症を抱えている人は、他の人よりもうつや不安障害などの精神疾患にかかりやすいとされ、睡眠不足によって問題解決能力が低下します。また、長期的な睡眠不足は、睡眠時無呼吸などの症状が原因で起こっている可能性がありますが、このような症状は慢性的な病気(高血圧や糖尿病など)の重症度を高めてしまうおそれがあります。
睡眠不足は重大な、さらには死に至る事故にも繋がる可能性があります。 近年の研究では、科学者は毎晩いびきをかいている若者は、それほどいびきをかかない若者と比べると、語彙テストでかなり低い点を取るということを発見しました。
不眠症で睡眠不足になると、事故、作業生産性の低下に繋がりますし、医学的症状あるいは精神状態を悪化させてしまう可能性もあります。そのため、不眠症は厳重な注意を必要とする大きな健康問題として考えられています。まずは日常生活から不眠症対策を始めてみましょう。