記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
てんかんは、いつ発作が起こるかわからない病気ですが、治療で発作をコントロールすることができます。この記事では、てんかんの治療法として一般的な薬物治療を中心に、手術や食事制限での治療法についても解説します。
てんかんを治療する場合、まず「抗てんかん薬」を服用します。薬は発作の種類や症状、患者の体質に応じて医師が選択します。1種類の薬だけでは発作を抑えることができない場合、何種類かの薬を組み合わせて服用することもあります。
また、薬の成分が脳にどのくらい届いているかを確認するために、血液検査をして血中の薬の濃度から、脳内に届いている薬の濃度を推定することがあります。血中濃度を測定することで、薬の量を決めたり、副作用が起こる可能性や、副作用が出たときの対応などを素早く把握することができます。
一般的な抗てんかん薬として、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、そしてバルプロ酸があります。より新しい薬としては、トピラメートがあります。
てんかん治療のために薬を服用する場合、長期にわたって服用する必要があるため、薬の副作用を防ぐことが特に重要です。服用中にアレルギー反応が出た場合や、服薬によって体内の臓器や血液などに影響が及んでいる場合、あるいは薬の量が多すぎる場合は、すみやかに主治医に相談してください。
また、持病などがあって抗てんかん薬以外にも服用している薬がある場合、それぞれの薬の相互作用によって薬の吸収や代謝に影響が出る可能性があります。これにより、薬の効果が弱くなったり、強くなりすぎたりする恐れがあるため、抗てんかん薬以外にも服用しているものがある(サプリメントも含む)場合も主治医に相談してください。
そのほか、妊娠を考えている女性の場合、抗てんかん薬が胎児に影響を及ぼす可能性があるため、事前に主治医に相談することが大切です。
以下の薬を服用すると、てんかんの発作が起こりやすくなると言われています。
そのほか、アルコールを飲むこともてんかん発作が起こりやすくなると言われています。
薬物療法では発作を抑えられない難治性てんかんの場合、外科手術で治療することが検討されます。ただし、手術は発作の始まる部分がはっきりしている場合、てんかん発作に関わるのが脳の一部で、部分的に切除しても障害が残らない場合に限られます。
てんかんの手術として、以下の2種類あります。
てんかんの発作を止めることを目的として行う手術です。扁桃体海馬切除術などが行われます。
てんかんの発作を和らげたり、発作の頻度を減らすことを目的として行う手術です。脳梁切断術や迷走神経刺激などが行われます。
そのほかの治療法として、食事療法やACTH療法が行われることがあります。
食事療法として、ケトン食療法が行われることがあります。ケトン食療法とは、エネルギーのもとになる炭水化物の摂取を極力控える代わりに、脂肪を増やした食事を摂る食事療法です。薬物療法ではないため、副作用の心配はありませんが、栄養が偏った食事になるため、医師や栄養士の指導が必要です。
ACTH療法では、副腎皮質刺激ホルモンの注射を一定の期間毎日投与する治療法です。
以下に、発作が起こった場合の対処法をご紹介します。
怪我をする可能性のある家具などは、周りから取り除くようにしましょう。横になっているときは、頭の下には枕などを置いてください。また、その人の動きを拘束しないようにしましょう。
唾液や嘔吐物が外に出やすい状態にしましょう。誤って飲み込んでしまうことを防ぐことができます。
たいていの場合、発作は自然に収まって特別な治療は必要としません。しかし、発作が続いたり、発作中に意識が回復しない場合は、てんかん重積状態と考えられるため、病院での緊急処置が必要となります。
てんかんの治療では、基本的に薬を使って発作をコントロールすることが行われ、薬では発作を抑えられない場合に手術が検討されます。薬を処方されたら、医師の指示どおりに服用することが大切です。
また、もし周囲でてんかん発作で倒れた人がいたら、安全を確保したり、横向きに寝かせたりなど、適切に対処しましょう。