記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
女性に多い「便秘」。あなたの周囲にも、「もう3日間も出ていない」といったことを口癖のように言っている人はいませんか? では、なぜ便秘になるのでしょうか? 「体質だからしょうがない」のでしょうか? ここでは便秘になる原因を見てみます。
便通の回数が週に3度未満である、あるいは便が小さい、硬い、塊状である、排泄しにくい、といったことがある場合は、便秘だと言えます。
実は、原因は必ずしもはっきりとはしていません。そして通常は、原因が分からなくても自然に治ってしまいます。
ただし、治らない場合は医師の処置を受けて、腸を正常な状態に戻しましょう。
以下、便秘の原因と考えられているものを紹介します。
豚バラ肉やリブなどの脂肪分の多い肉類は便秘の原因となります。酪農製品、卵、デザート、糖分の多いスイーツも同様です。これらを食べる時は、食物繊維が豊富な野菜や全粒穀物(緑葉カンラン、コラード、ブロッコリー、マコモ、キノアなど)も食べて、定期的な便通を維持しましょう。
規則的な排便が行われるためには、食物繊維が必要です。どのくらい必要かと言えば、果物と野菜を一日あたり3~5カップ分くらいです。
肉類や酪農製品の摂取は控えめにして、野菜や果物を大量に食べましょう。
必要な栄養素をバランスよく食べているか確認しましょう。ビタミンB12が不足している場合は、腸が詰まりやすくなるといわれています。
ビタミンB12の欠如は、排便の問題以外にも疲労や衰弱、緊張などの原因になるともいわれ、菜食主義者や完全菜食主義者の場合はビタミンB12の不足が便秘の原因になることがあります。
便が腸管内をスムーズに移動するためには、水分をたくさん取る必要があります。十分な水分補給ができないと、腸詰まりが起きます。
身体を動かすことで排便がしやすくなるといわれています。反対に、座っている時間があまりにも長いと、便秘になる可能性が高くなります。
脳内にストレスが溜まると、身体全体に変化が生じます。胃腸系は特にストレスに敏感で、ストレスが原因で起こる反応のひとつとして便秘が挙げられます。
たとえば旅行は、目的が仕事であれ娯楽であれ、ストレスを伴う行動のひとつでしょう。普段の生活習慣、特に食習慣が乱されると、排便のリズムも崩される可能性があります。
排便の合図が出ている時に、忙しすぎてトイレに行けないことが増えていませんか? あるいは、公衆便所を利用したくないことが、排便する機会を奪っているかもしれません。排便の衝動を無視していると、次第に排便衝動を感じなくなることがあります。
年齢が高くなればなるほど、排便のトラブルが起こる可能性が高くなります。したがって、身体を動かす回数を増やすよう心がけ、水と食物繊維の摂取量を増やしましょう。
鎮痛剤、鉄分サプリメント、抗鬱剤、利尿薬は便秘を引き起こす可能性がある薬です。他にも、糖尿病治療薬やパーキンソン病治療薬、血圧治療薬、さらには市販の制酸剤も便秘の原因になることがあります。
稀ではありますが、深刻な病気が原因の可能性はあります。不安がある場合は病院を受診しましょう。便秘の原因となる病気には、以下のものが挙げられます。
・結腸を緊縮させる筋肉の問題。
・糖尿病や甲状腺機能不全・亢進等のホルモン病。
・多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中、脊髄損傷などの、結腸・直腸の周囲の神経に影響を与える病気。
・結腸の問題。腫瘍やその他結腸・直腸をブロックするものは、排泄を妨害する可能性があります。
便秘は、自分自身が普段から健康的な生活をおくり、健康的な思考を持ち、バランスのとれた食事を摂ることで多くが改善されるものです。逆に、原因の多くはそこに潜んでいるとも言えます。
「習慣を変える」ことは難しいですが、健康で長生きするためにも、一度自分自身を見つめなおしてみましょう。
なお、数日経っても問題が解決されない、または便に血液が含まれている、腹痛が激しいなどという場合は、医師の診察を受けましょう。