記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/8/16 記事改定日: 2018/6/19
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
「百日咳」という病気をご存知ですか?百日咳とは、乳幼児が感染した場合は特に重症化しやすい、呼吸器感染症の一種です。ここではその症状や治療法、予防法をお伝えしていきます。保護者の方は特に必見の記事です。
百日咳とは、百日咳菌によって発生する感染症の一種です。名前のとおり激しい咳を伴う病気で、主にワクチン未接種の乳幼児が感染します。1歳以下の乳幼児(特に生後6ヵ月以下の子供)の場合、呼吸困難に陥り、亡くなってしまうこともあります(一般に0.2%、月齢6ヵ月以内の場合は0.6%)。
主な感染経路は百日咳菌患者との接触や飛沫感染で、以前ワクチンを接種したことのある大人でも、ワクチンの効力の低下により再び感染することがあります。
百日咳の特徴や症状は、子供と大人で少し異なります。以下で詳しく解説していきます。
子供の場合、百日咳菌の潜伏期間は6~20日(通常7~10日)で、発症から回復までに6週間以上かかるのが一般的です。百日咳を発症すると、まず訪れるのが「カタル期」です。カタル期では鼻水やくしゃみ、軽い咳や発熱といった風邪のような症状が1〜2週間ほど続きます。カタル期はその後「痙咳期」に移行し、激しい咳やヒューヒューといった呼吸音を伴う咳が現れ始めます。咳をした後に嘔吐したり、数秒間呼吸が止まったりする場合もあります。この痙咳期が3〜6週間程度続いた後、「回復期」へと移行していきます。
百日咳はワクチン未接種の乳幼児が感染した場合、重症化しやすく、窒息したり肺炎や脳炎などの合併症を引き起こしたりする場合があるので注意が必要です。
大人の百日咳の症状は子供ほど激しくはなく、2週間以上の長引く咳と、発作的な咳に留まることがほとんどです。ヒューヒューといった独特の呼吸音がみられるケースは、成人患者のおよそ1~5割に留まるということも明らかになっています。そのため、風邪や気管支炎と誤診されるケースも少なくありません。また、脳炎や死亡といった重篤症例に発展することも極めてまれです(0.1%以下)。
百日咳の診断は、菌の培養や、遺伝子検査によって行われるのが一般的です。鼻や喉の粘膜を綿棒などでこすり、綿棒に付着した菌を検査機関で培養することで、百日咳菌の有無を診断します。ほかに、血液検査によって診断する場合もあります。
一般的にはマクロライド系抗生物質による治療が行われます。咳が激しくなる痙咳期では咳の改善効果はそこまで期待できないものの、抗生物質を投与することによって他者への二次感染を防止することができます。
百日咳にはワクチンがあり、小児では定期接種に指定されていますが、大人も抗体がないことが分かっている人は接種が推奨されています。それぞれ次のようなスケジュールで受けるようにしましょう。
2012年から、百日咳のワクチンはジフテリア、破傷風、ポリオとともに四種混合ワクチンとして定期接種に指定されています。
接種スケジュールは、生後三か月から4週間隔で計3回行い、その一年後に更に1回の追加接種を行います。また、ワクチンの効果は徐々に薄れていくため、最近では小学校入学前にMRワクチンの二期の時期に合わせて百日咳ワクチンが含まれた三種混合ワクチンを任意で接種することもすすめられています。
乳児期の予防接種は四種混合の他にも多くのものがありますので可能な限り同時接種を行い、打ち忘れがないようにしましょう。
乳児の頃に予防接種をしたとしても、効果は徐々になくなり、抗体が作られなくなることがあります。このような場合には大人であっても百日咳に感染する危険があり、学校や職場などで多くの人に感染を広げるおそれも考えられますので、抗体がないことが分かっており、学校職員や医療従事者、海外に長期渡航する人はワクチンを接種することが推奨されています。
しかし、現時点では国産の成人用ワクチンは存在せず、海外で販売されている三種混合ワクチンを用いたり、国産の小児用ワクチンを利用したりと施設によって接種方法が異なりますので、事前に問い合わせるとよいでしょう。
百日咳は乳幼児が感染した場合、脳炎や肺炎などの重い病気を引き起こしたり、命を落としたりすることもある危険性が高い病気です。
ただ、百日咳はワクチン接種によって罹患リスクを80~85%減らすことができるとされています。接種がまだのお子さんがいる場合は、百日咳にかかる前に早めにワクチンを接種してあげてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
【 厚生労働省ホームページを編集して作成】
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/whooping_cough/index.html
http://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000bx23-att/2r9852000000byfg.pdf