記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/17 記事改定日: 2018/5/17
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
髄膜炎は子供に発症することの多い感染症ですが、大人がかかることもあります。症状はインフルエンザに似ているといわれていますが、そのほか気をつける症状はあるのでしょうか。今回は髄膜炎の症状について詳しく解説します。
髄膜炎とは髄膜(脳と脊髄を保護する膜)に炎症が起こる病気です。感染症、自己免疫疾患など様々な原因がありますが、感染症による髄膜炎の代表としてウイルス性髄膜炎と細菌性髄膜炎があります。
ウイルス性髄膜炎は比較的軽症で済むことが多く、深刻な状況に陥ることが少ないとされる髄膜炎です。 インフルエンザのような症状が現れますが、治療を必要としない場合もあります。
ウイルス性髄膜炎は、主に非ポリオエンテロウイルスと呼ばれるウイルス群によって引き起こされます。 これらのウイルスは、特に晩秋に発生しますが、 感染したすべての人が髄膜炎を発症するわけではありません。
細菌性髄膜炎は内科的な緊急疾患です。早期に治療しなければ脳障害や死を引き起こす可能性があります。 多くの場合は肺炎球菌やインフルエンザ菌など、肺炎および咽頭咽喉に見られるものと同じ細菌によって引き起こされます。 そのうちのいくつかはワクチン摂取によって発症率を下げることができます。
細菌性髄膜炎のを引き起こす菌には様々なものがありますが、大人の場合は肺炎球菌やインフルエンザ菌が主な原因菌になります。新生児の場合は、B群レンサ球菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌、リステリア菌などが原因菌となることが多いです。
ウイルス性髄膜炎では、発熱と頭痛、吐き気・嘔吐が主な症状として現れます。原因ウイルスや患者の全身状態によって異なりますが、発熱は38度以上の高熱なことが多く、頭蓋内の病変に関与する症状だけでなく、腹痛や下痢などを生じることも多々あります。
しかし、一般的に経過は良好で一週間程度で重大な後遺症を残さずに治ることがほとんどです。
細菌性髄膜炎では、ウイルス性髄膜炎と同様に発熱や頭痛、吐き気・嘔吐などの症状が生じますが、症状は非常に重度であり、けいれんや意識障害がみられ、命を脅かすような深刻な状況になることもまれではありません。
また、発症前に呼吸器感染症や中耳炎、副鼻腔炎など頭部に近い部位に炎症が生じることが多く、これらの細菌感染が髄液へ波及して髄膜炎を生じるケースが多いです。
髄膜炎は全ての年代の人がかかる可能性がありますが、一歳未満の乳児とそれ以上の人では症状の現れ方が異なります。
1歳未満の乳児の場合には、機嫌の悪さやむずがりがある一方、うとうとしている時間が長くなり、母乳やミルクの摂取量が減少します。また、40度以上の高熱と共に嘔吐も見られ、細菌性では2割でけいれん発作が見られます。身体的な特徴としては、脳圧の上昇によって大泉門の膨隆(大泉門:ひたいの上にある骨のつぎ目。赤ちゃんはまだやわらかくペコペコしている)が見られるのが特徴です。
一方、それ以上の年齢の幼児、子供、成人では、発熱、頭痛、嘔吐が主要な症状として現れ、首が硬く動きにくくなるのが特徴です。乳児の症状と比較すると発熱の程度は軽いことが多く、けいれん発作や意識障害などの神経症状は見られないことが多いです。
しかし、症状の現れ方は人によって異なるため、特に小児の場合には発熱などの症状が3日以上続いた場合には早めに病院を受診するようにしましょう。
軽度なウイルス性髄膜炎であれば、医師はたくさんの水分摂取と、自宅で安静にするよう指示される場合もあるでしょう。 より深刻な場合には、帰宅するのに十分な健康状態になるまで、あるいは細菌性髄膜炎の可能性を考慮して入院が必要になることもあります(即座にこれら二つの疾患を区別するのは難しい場合があります)。
細菌性髄膜炎の治療は早く対処することが重要です。 病院で原因菌を特定し、適した抗生物質の投与が行われ、必要に応じて点滴での水分補給も施されます。速やかに病状が進行する可能性があるため、原因菌の特定を待たずに経験的治療が開始されることもあります。
ウイルス性髄膜炎には、特にワクチンなどはありません。ウイルス感染を避けるために、子供に食べ物や飲み物を他の子供と分け合わないよう伝えましょう。ストローや食器も同じです。
また、赤ちゃんのおむつ、汚れたティッシュ、ほかの人のタオルなど、病気をうつす可能性があるものに触れないように伝えてください。
子供がくしゃみや咳をするときは、ティッシュやシャツの袖で子供の口や鼻を覆うようにすることをおすすめします。
定期的に石鹸で手を洗い清潔に保ち、子供が汚れた手で鼻や口に触れないように教えましょう。 ドアノブ、おもちゃ、ベビーカー、スマートフォン、コンピュータなどを消毒すると有効です。
子供の細菌性髄膜炎を予防するためには、予防接種を受けることが推奨されています。ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンを接種して、お子さんの細菌性髄膜炎の多くを予防することができるとされ、このワクチンは生後2ヶ月から受けることができます。
髄膜炎の中には重症化するものもあり、早期の治療が重要です。インフルエンザと症状が似ているため、気になる症状があれば病院で診察を受けることをおすすめします。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。