記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
セックスやハグには精神的な作用だけではなく、血圧を低下させたり緊張を緩和させたりと、体の健康を改善する効果があると言われています。具体的にどのような効果があるのかを、この記事で見ていきましょう。
セックスで性的に興奮すると心拍数は高くなり、オルガスムに達すると1分あたりの心拍数がピークに達します。心拍数を高める運動は、一般的には心臓を鍛える働きがあると言われています。
成人は健康のためにサイクリングやウォーキング、ダンスなどの中強度の有酸素運動を毎週2時間半行うと良いとされていますが、1週間におよそ2時間半ぐらいオルガスム状態になれば、これと同じ運動量をカバーすることができます。ちなみに、オルガスムのピーク時の平均心拍数は、階段の歩行時と同じくらいです。
心臓病を患っているなど、心臓への負担が気になる方もいるかもしれませんが、ほとんどの場合、日常生活で階段を2階分移動しても胸の痛みが現われることがなければセックスをしても問題ないことがわかっています。ただし、心臓の状態には個人差があるので、必ずかかりつけ医に確認するようにしてください。
ハグをすると気分が落ち着く・安心するという経験はないでしょうか。それは気のせいではなく、実際に「愛する人をハグすると血圧が下がる」という研究結果があります。たとえば、お互いの手を10分間握ったあとに20秒間ハグしたカップルは、しなかったカップルと比べて、その後大勢の前で話す場面になったときに心拍数や血圧が低く、心拍数が増加しにくいという反応がみられました。
また、性的な意味をもたないスキンシップにも同様の結果がみられることがわかっています。ただ、この場合に血圧が低下するのは女性だけのようです。
現代社会は「ストレス社会」と言われるほど、日常的にストレスがかかる場面が多く、ストレスが原因で身体的または精神的な病気を発症することも少なくありません。こうしたストレスをセックスで軽減できる、という研究結果があるのをご存知でしょうか。
ペニスの挿入を伴うセックスや伴わないセックス、またマスターベーションなどの性行為をする人に比べ、セックスや性行為を全く行わない人はストレステスト(大勢の前で話す、暗算を大声でするなど)で最も高いストレスレベルを記録したという記録があります。
このテストで血圧の上昇の幅が最も小さかったのは挿入を伴うセックスのみを行う場合ですが、キスやハグ、挿入を伴わないオルガスムでも、運動や瞑想をしたときと同じようなリラックスした気分になれます。
セックスの頻度と免疫システムの強さの関連性を示した研究では、週に1~2回セックスをする人はそうでない人に比べて、免疫力が高い傾向がある[免疫グロブリンA(IgA)が30%高いという結果が出ている]ことがわかっています。
ただし、週に3回以上セックスした場合は週に1~2回の場合よりも免疫力が低下するということがわかっており、単純にセックスの頻度が高ければ良いというわけではありません。セックスの頻度が免疫システムにどのように影響するのかという検証には今後もより多くの研究が必要です。