記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/4 記事改定日: 2020/7/22
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
膵臓は消化やインスリンの分泌に関わる大切な臓器ですが、慢性膵炎になると機能が失われてしまいます。この記事では、慢性膵炎の症状や原因、合併症リスク、治療法について解説していきます。慢性膵炎の症状チェックや食事療法など治療の参考にしてください。
膵炎とは膵臓に炎症が起きている状態を指し、急性膵炎と慢性膵炎、その他には自己免疫膵炎などがあります。
膵臓から分泌される消化酵素のアミラーゼ(炭水化物を消化する酵素)やリパーゼ(脂肪を消化する酵素)、トリプシン(たんぱく質を消化する酵素)などが血液や尿中に漏れ出ているかどうかを確認します。
慢性膵炎は文字通り膵臓に慢性的な炎症が起きている状態です。炎症が慢性的に起きていることで膵臓には線維化が起こり、それに従って外分泌能や内分泌能といった膵臓の大切な機能が失われていきます。
急性膵炎と慢性膵炎症状の違いは以下の通りです。
急性膵炎を発症すると、上腹部や背中の痛み、発熱、吐き気・嘔吐、お腹の張りなどの症状が現れます。アルコールや油分の多い食事を摂った数時間後に発症しやすいといわれています。
また、急性膵炎は重症化すると膵臓で分泌されるタンパク質を分解する酵素が漏れ出して膵臓やその周囲の組織に大きなダメージを引き起こすようになります。強い炎症が拡がるためショック状態に陥ったり、意識がなくなったりするケースも珍しくなく、死に至る危険も高い病気です。
慢性膵炎では急性膵炎の症状のほか、下記の症状が起こります。
慢性膵炎で痛みが起こりやすい部位は、みぞおちや背中です。発症初期には、食後や飲酒後に非常に強い痛みが発作のように襲います。それらの痛み発作を繰り返す中で、慢性膵炎は徐々に悪化していきます。
そして、7年ほどの期間をかけて膵臓に不可逆的な変性を生じますが、この頃には強い痛みが生じることはほとんどなく、みぞおちや背中に違和感を覚えるのみであるケースが多いとされています。
膵臓は不可逆的な変性を生じると、元の状態に戻ることはできず、がん化や糖尿病など様々な合併症を引き起こします。そのような状態を防ぐためにも、早期発見・早期治療が非常に大切です。
みぞおちや背中に定期的な痛みが生じる場合には、なるべく早めに病院を受診して検査を受けるようにしましょう。
慢性膵炎の原因としては、飲酒によるもの(アルコール性)が最も多く(約65%)、喫煙も慢性膵炎になるリスクが高いといわれています。また、脂質異常症・副甲状腺機能亢進症なども原因になります。
その他、原因のわからない特発性膵炎も約20%近くの患者がいるとされ、ごくわずかですが遺伝子の異常によるものもあります。
男性ではアルコール性が最も多く70%を越え、女性では特発性が40%と最も多く、男女別で原因に違いがあることが報告されています。
慢性膵炎の治療法は症状により異なります。
過剰な飲酒が原因の膵炎の場合は、適正な飲酒(1日に2ドリンク以下すなわち日本酒なら1合以下、ビールなら中ビン1本以下、焼酎なら200mLのコップ半分以下)や、バランスの良い食事を腹八分目に摂取することが大切です。
慢性膵炎では、アルコール性肝炎と同様アルコール依存症になっている場合が多いといわれています。アルコール性慢性膵炎の診断を受けたら断酒が必要です。特に糖尿病になっている場合には断酒ができないと治療ができません。どうしてもお酒が止められないという人は、アルコールの専門病院への受診を検討しましょう。
膵臓はとても大切な臓器ですが、悪くなってもあまり症状が現れないことが多いのが特徴です。アルコールや脂質の多い食事を見直し、アルコールを制限し、健康的な食生活を心がけましょう。慢性膵炎を発症している場合は早期治療で、合併症を予防してください。
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