記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
アジソン病は、腎臓のすぐ上にある副腎皮質の機能に支障が出る病気で、特に突発性の症状が多くみられます。今回の記事では、アジソン病について解説します。
副腎は、腎臓のすぐ上にある、体の恒常性を保つために重要なホルモンを分泌する内分泌系の器官です。副腎の皮質では、抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモンを産生しますが、アジソン病患者の副腎は副腎皮質ホルモンを十分に産生することができません。 アジソン病は、30〜50歳に多くみられ、男性の方が発症しやすいとされています。
アジソン病の症状は数ヶ月にわたって続くことが特徴ですが、症状が突然現れたり急に悪化することがあります。これは急性副腎不全(副腎クリーゼ)であり、治療せず放置した場合、死に至る危険もあるため、早急に緊急治療を受ける必要があります
下記の症状が現れたときは、すぐに医師に相談しましょう。
・倦怠感や疲労感
・筋力の低下がみられたり、動きが鈍くなる
・関節や筋肉の痛み
・発熱、高熱
・体重減少
・悪心や嘔吐、下痢
・頭痛
・発汗
・イライラしたり、不安になったり、うつ病のような症状がみられるなどの気分や性格の変化
・食欲不振
・皮膚が暗くなるなどの色素沈着
・立ちくらみのような頭痛や失神(ほとんどの場合低血圧によるもの)
・塩辛い食べ物を欲食べたくなる
・突然の腹部、背中、または脚の重度の痛み
・脱水につながるような重度の嘔吐や下痢
・気絶や意識の消失
・低血圧
・混乱状態、ろれつが回らなくなる
・けいれん発作
アジソン病は「副腎不全」とも呼ばれ、以下の2つのタイプがあります。
副腎障害が原因で、必要な量のホルモンを生産できなくなってしまうことで発症します。自己免疫疾患によって起こることが多いとされ、他の原因としては以下のものがあります。
・副腎の結核(または他の感染症)
・副腎の癌
・副腎内出血
十分なホルモンの生産ができない原因が副腎以外にあるときの副腎不全のことです。下垂体の問題や喘息、アレルギー、関節炎、癌などが原因になることがあります。また、副腎皮質ステロイドの服用の突然の中止が、アジソン病の発症原因になることがあります。
アジソン病の人は副腎皮質ホルモンを作ることができません。そのため、不足しているホルモンを補充することが治療の中心になります。
補充は、主に副腎皮質ステロイドの服用が用いられますが、必要な量のコルチゾール(副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドの一種:ヒドロコルチゾンのこと)が作られていない場合、ヒドロコルチゾンやプレドニゾン、酢酸コルチゾンが処方されることがあります。また、アルドステロン(副腎皮質ホルモンである鉱質コルチコイドの一種)が不足している場合は、フルドロコルチゾンの処方が検討されます。
ただし、上記でも説明したようなアジソン病の発作が起こったら緊急の処置が必要です。 治療として、ヒドロコルチゾン、生理食塩水(塩水)およびデキストロース(糖)の静脈内(IV)注射が行われ、血圧や血糖、カリウムレベルの正常化を目指します。
アジソン病は、発症すると一生付き合っていくことになる病気です。急性副腎不全の兆候ががみられた場合は緊急治療が必要になりますが、適切な治療を発作を防止することが可能であり、問題なく日常生活が送れるといわれています。医師と相談しながら、薬の服用を続け、QOL(quality of life:生活の質)の向上を目指しましょう。